現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 技術進化の最前線!? それとも分かりづらく退化!? シフトレバー七変化

ここから本文です

技術進化の最前線!? それとも分かりづらく退化!? シフトレバー七変化

掲載 更新
技術進化の最前線!? それとも分かりづらく退化!? シフトレバー七変化

 ATやCVTのシフトレバーが設置されている場所は、一般的なセンターコンソールにあるものから、インパネ下やステアリング横のコラムシフト、最近ではルームミラーに配置されるなど多種多様になってきた。

 シフト操作もゲート式やダイヤル式、ボタン式も多くなってきて、変速ポジションは一般的なP-R-N-D-Lから、LがBに変更になったり、2LやMモードが加えられたりと、日々進化している。

快適性か!? 趣味性か!? 国産車 vs 海外高級車 下剋上決戦!!!

 そこで、普段あまりスポットがあたることの少ない、ATやCVTのシフトレバーについて、モータージャーナリストの岩尾信哉氏が深掘りして解説する。

文/岩尾信哉


写真/ベストカーWeb編集部

■シフトのポジション、Bモードって何?

 ATのシフトレバー、正確には「シフトセレクター」あるいは「セレクトレバー」と呼ぶべきなのかもしれないが、いまや電子制御で変速可能な“シフト・バイ・ワイア”技術によって、“セレクター”は大きな制約なくレイアウト可能となり、センターコンソールはもとよりインストルメントパネル、はてはルームミラーに近い場所のルーフ前端部にも設置できるようになった。

 ただし、どこにあってもよいというものではない。いま、ATのシフトレバーはどのように扱われているのか、眺めていくことにしよう。

 まずはシフトレバー/セレクターが、基本的にどのように仕立てられているのか見ていくと、レバーを移動させるシフトゲート(溝)の形状から見てみよう。

 一般的なのは直線状のストレート型だが、ゲートがジグザグ状に仕立てられたスタッガード型、アルファベットの文字のようにゲートが刻まれたJ/L/U字型などといったパターンがあるが、ゲート型の形状の利点はシフトレバーの移動だけで変速ポジションが変えられることだ。

 ATの変速ポジションは、P(パーキング)-R(リバース)-N(ニュートラル)-D(ドライブ)-L(ロー)が基本だが、低速モードとしてジムニーの4段ATのようにD/L間に「2」(2速モード)や「2L」が設定される場合もある。

 Dポジションのそばに、M(マニュアル)もしくはS(スポーツモード)が加わることも見られる。後述するスポーツカーなどでは、Dポジションを操作系として独立させることもある。

 ちなみにCVT(無段変速機構)で設定されたMポジションでは、多数の段数を電子制御で疑似的に設定して変速比を適宜変化させて、マニュアルシフトを実現している。

 最近では低速域の変速モードの「L」の代わりに「B」(ブレーキ:Brake)モードが設定されている場合がある。

 ダイハツのCVTは「B」モードとして設定しているのは、CVTが基本的に変速ギアをもたないゆえに、低速“ギア”の意味とも捉えられる「L」の表示を嫌ったのだろう、軽自動車/小型車すべてで「B」ポジションを設定している。

■EVは回生ブレーキの強さを調整する機能を持つレバーとしてBモード設置

 EV(電気自動車)やエンジン/モーターを使うハイブリッドでも、モーターの制御機構を利用して低速域での変速を担う「B」モードが設定されるケースが多い。

 モーターを利用したエネルギー回生による充電とブレーキ機能を強める効果をもつため、電動化車両ではいわゆる“エンジンブレーキ”と類似した減速効果をもたらすことになる。

 EVでは回生ブレーキの強さを調整する機能をもつレバーとして「B」モードを用意。ハイブリッドでも「B」モードが設定され、エンジンでは駆動せずモーターのみでの減速/回生するシリーズ式ハイブリッド方式を採用する日産のノート/セレナの「e-POWER」や、プリウスや三菱アウトランダーPHEVのように、エンジンとモーターの機能を適宜駆動に利用するシリーズ/パラレル式でも「B」が設定されている。

 ちなみに、トヨタのハイブリッド車では「B」モードはストレート型に用意され、「D」レンジにマニュアルモードの「S」レンジが備われば「B」モードは用意されない設定となる。



■シフト・バイ・ワイアの功罪

 ATのセレクトレバーを運転席周りの限られたスペースにどう配置するかは、機能として運転操作に関わるゆえに設計に携わるエンジニアの頭を悩ませてきた。

 フロアシフトに代わってシフト機構をステアリングコラムに装備した「コラム式」の歴史は古く、1930年代から米国市場のモデルで採用が始まり、その後も“ビッグスリー”のSUVやミニバンなどで多く見られ、日本市場でも過去にはワンボックスやタクシー仕様などで継続的に採用されてきた。ベンチシートにコラムシフトが多かったので「ベンコラ」と呼ばれ、前席が広く使え、ウオークスルーができるため人気があったのだ。

 はたして“コラム式”と呼んでよいのかどうかは別として、メルセデスベンツは自社モデルに共通する“伝統的”操作機能を、最新技術を用いてコラムレバーにスイッチ機能を与えて実現している。

 ATのコラム式レバーがより身近に感じるようになったのは、日本では1990年代に軽自動車のスズキワゴンRあたりからだろう。

 本格的に始まった“トールワゴン”ボディが登場するとともに、前席でのベンチシートの採用と前席間を移動できる“ウォークスルー”機能が広まった影響で、コラム式シフトレバーの採用がワンボックスなどにも急速に広まっていった。

 ところが、現在ではボディのサイズ/形状にかかわらず、インパネ式シフトレバーが多くの車種ですっかり定着しているのは周知のとおり。

 なにより、インパネシフトの採用拡大を後押ししたのは、1990年代から始まった「ミニバンブーム」。休日の高速道路はミニバンで埋め尽くされていたことは今でも強く印象に残っている。

 特にコスト管理が厳しい軽自動車ではプラットフォームが共通であれば装備の仕様を統一したほうが有利なため、一気にセダンタイプでも一気にインパネシフトの採用が拡大。いまや軽自動車の商用バンでも“インパネシフト”が一般的になっている。

■インパネ式からダイヤル、ボタンまで

 インパネ式の変速機構の設計面でのメリットは、リンクなどを介することなくアクチュエーターなどの電子制御によって、シフト位置の選択・操作などを把握して変速する“シフト・バイ・ワイア”機能が実現したことで、レイアウトの自由度が格段に増したことにある。

 この結果、インストルメントパネルや室内中央部のパネル/コンソールの限られた“土地”の中で、シフト機構の位置決めに関してデザイナーを含む作り手の意思が反映されやすくなり、室内の機能部品のデザインの可能性も広がった。

 いっぽうで機能性の向上とともに、自由度が高いがゆえに、プレミアムブランドのインテリアデザイナーはシフトレバーのデザインや位置決めによって、デザイン上での高級感をどう演出するかに頭を悩ましているに違いない。

 たとえば、変速ポジションを選択する機能をダイヤル式セレクターも現われ始めた。一連のジャガー(ランドローバー)がセンターコンソールからポップアップするダイヤル式を採用している。

 いっぽうで、旧くは1950年代のキャデラックなどのアメリカ車に採用されていたボタン式も復活してきた。走行中は操作しないP/R/Nのポジションをボタンスイッチとしてシフトレバー周りから分離独立させて、レバー操作はDレンジでの変速のみとした例も出てきた。

 たとえば、ホンダはアコードやクラリティのFCV/PHEV、今冬に日本に導入予定の新型インサイトに至るまで、P/R/N/Dのポジション選択にボタン式を採用するなど、操作性と見た目をシンプルに仕立てたデザインを生み出した。



 スポーツカーメーカーでもシフトレバーの機能を整理する意味が大きい。フェラーリのDCT機構では「R」のスイッチを分離して、「N」のポジションの選択方法を含め、基本的なステアリング上のパネルスイッチで行う。

 812スーパーファストやV8ミッドシップの488ピスタではセンターパネル下部にシフトボタンを用意。パドルシフトのみの操作系となっている。

 ちなみに、レクサスLFAではギアチェンジをステアリングコラムに備わる“パドルシフト”機構のみで変速を実施していた。

 量産EVの変速機構のデザインでは、メーカーごとに主張が明確になっていて面白い。BMW  i3はステアリングコラムのレバーにスイッチを装備。

 ジャガーI-PACEは他モデルのダイヤル式から一歩進んで、変速ポジションの選択をボタン式とするなど、各自動車メーカーのデザインコンセプトの個性が表れている。

 最近になって正式発表されたアウディe-tronではボタン式を採用するいっぽう、EVメーカーのテスラモーターズの各モデルはコラムスイッチ式(メルセデスモデルとの共用品と想像される)を装備する。

 最近では、マクラーレンが発表した新たなスーパースポーツ、スピードテールに採用された天井にあえるシフトボタンが話題になった。ドライビングに必要なシフト操作自体はパドルで行うからそのほかのスイッチは運転に邪魔にならないようなところに配置したのだろう。



 また、シフトレバー自体も変化している。ボルボXC90T8に設定されたシフトレバーはスウェーデンのガラスメーカー、オレフェス社製だ。

 さらにBMW8シリーズにもオーストリアのスワロフスキー社製クリスタルガラスのシフトレバーを採用するなどシフトレバー自体の形状や素材も進化している。ガラス製のシフトレバーといえば、50代以上の人は水中花を思い出すが……。



■操作しやすさと認知しやすさの兼ね合いが大事

 なによりシフト機能として肝腎なのは、セレクターの扱いやすさとモニター/インジケーターの表示に関してデザインに工夫を凝らして、操作の容易さと認知/視認性をしっかりと確保して、シフトポジションの確認を簡単にすることではないだろうか。

 その点ではプリウスがいかにも小さなシフトノブを採用しているのは、先進性の演出を意識“しすぎた”デザインに思えてしまう。とっさの減速時にシフトレバーで「B」ポジションを操作できることは、安全面で大切な要素だと思う。

 たとえば、ドライバーによっては、メルセデスの伝統的なコラムスイッチでも、彼らの“流儀”を知らなければ操作に戸惑うドライバーもいるはず。使いこなすのに慣れが不要なような、デザイン上での工夫をもうひと推し進めてもらえればありがたい。現状よりもさらにシンプルかつわかりやいシフトシステムを生み出してほしい。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

快適ボックスシートから広々フルフラットへの変更も簡単! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
快適ボックスシートから広々フルフラットへの変更も簡単! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
もう[トヨタ]が開発してるだと!!!!!!!!!!! 次期型[GR86/BRZ]は1.6Lターボ+ハイブリッドでほぼ確定か!?  
もう[トヨタ]が開発してるだと!!!!!!!!!!! 次期型[GR86/BRZ]は1.6Lターボ+ハイブリッドでほぼ確定か!?  
ベストカーWeb
トヨタWRC、大荒れのデイ2を好位置で乗り切る。ラトバラ代表は「明日もトリッキーになる」と警戒/ラリージャパン
トヨタWRC、大荒れのデイ2を好位置で乗り切る。ラトバラ代表は「明日もトリッキーになる」と警戒/ラリージャパン
AUTOSPORT web
ARTグランプリ、ホンダのフランス法人とパートナーシップを締結。CR-VとZR-Vが提供される
ARTグランプリ、ホンダのフランス法人とパートナーシップを締結。CR-VとZR-Vが提供される
AUTOSPORT web
優れた燃費が自慢[アコード]!! [レクサスES]と比較した明確な違い
優れた燃費が自慢[アコード]!! [レクサスES]と比較した明確な違い
ベストカーWeb
レッドブル&HRC密着:フロントタイヤへの熱入れを苦手にするRB20。弱点が露呈し初日は2台とも下位に沈む
レッドブル&HRC密着:フロントタイヤへの熱入れを苦手にするRB20。弱点が露呈し初日は2台とも下位に沈む
AUTOSPORT web
タイトルに王手のフェルスタッペンが苦戦、ミディアムで17番手「タイヤが機能せず氷の上を走っているよう」/F1第22戦
タイトルに王手のフェルスタッペンが苦戦、ミディアムで17番手「タイヤが機能せず氷の上を走っているよう」/F1第22戦
AUTOSPORT web
見かけ倒しでもいいじゃん! ルックスと性能が釣り合わないスポーツモデル5選
見かけ倒しでもいいじゃん! ルックスと性能が釣り合わないスポーツモデル5選
ベストカーWeb
2025年WEC暫定エントリーリストが発表。ハイパーカーは2社が撤退もLMGT3と同数の18台が参戦
2025年WEC暫定エントリーリストが発表。ハイパーカーは2社が撤退もLMGT3と同数の18台が参戦
AUTOSPORT web
【角田裕毅F1第22戦展望】昨年の反省をもとにセットアップを2種類用意。FP2で「だいたいの方向性は見つかった」
【角田裕毅F1第22戦展望】昨年の反省をもとにセットアップを2種類用意。FP2で「だいたいの方向性は見つかった」
AUTOSPORT web
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
ベストカーWeb
勝田貴元、パンクで後退も挽回「まだ諦められない。ファンの声援が力になる」/ラリージャパン デイ2
勝田貴元、パンクで後退も挽回「まだ諦められない。ファンの声援が力になる」/ラリージャパン デイ2
AUTOSPORT web
いよいよ正式発表!? デザイン一新の[新型フォレスター]登場か! トヨタHV搭載でスバル弱点の燃費は向上なるか
いよいよ正式発表!? デザイン一新の[新型フォレスター]登場か! トヨタHV搭載でスバル弱点の燃費は向上なるか
ベストカーWeb
荒野にポツンと1軒のカフェ!?…25ドルでキャンプサイトを確保。オーストラリアはトレイルも何もかもナメてかかってはいけません!【豪州釣りキャンの旅_10】
荒野にポツンと1軒のカフェ!?…25ドルでキャンプサイトを確保。オーストラリアはトレイルも何もかもナメてかかってはいけません!【豪州釣りキャンの旅_10】
Auto Messe Web
ローソン初日15番手「路面コンディションに苦労。今日の学習を役立て、トップ10に食い込みたい」/F1第22戦
ローソン初日15番手「路面コンディションに苦労。今日の学習を役立て、トップ10に食い込みたい」/F1第22戦
AUTOSPORT web
ボッタス、PUエレメント交換で5グリッド降格が決定。RB勢はエキゾーストを交換/F1第22戦
ボッタス、PUエレメント交換で5グリッド降格が決定。RB勢はエキゾーストを交換/F1第22戦
AUTOSPORT web
タナクが王座目指して猛加速。僚機2台はクラッシュ&失速、トヨタに選手権逆転の光明【ラリージャパン デイ2】
タナクが王座目指して猛加速。僚機2台はクラッシュ&失速、トヨタに選手権逆転の光明【ラリージャパン デイ2】
AUTOSPORT web
燃費と運転体験の両立 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTEへ試乗 電気で最長130km走れるHV!
燃費と運転体験の両立 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTEへ試乗 電気で最長130km走れるHV!
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0789.0万円

中古車を検索
プリウスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0789.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村