ジョセフ・コシンスキー監督は、ブラッド・ピットとトム・クルーズの共演作を作るとすれば、『F1/エフワン』と『デイズ・オブ・サンダー』のクロスオーバーになるだろうと言う。
※以下に映画『F1/エフワン』の軽微なネタバレが含まれます。
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『トップガン マーヴェリック』で、ジョセフ・コシンスキー監督はトム・クルーズ、グレン・パウエル、マイルズ・テラーを戦闘機に乗せ、世界興行成績のトップの座を獲得した。そこから学んだことは何か? それと同じことをやればいいということだ。ただし今度は、ブラッド・ピットをF1マシンに乗せて。
『F1/エフワン』と『トップガン マーヴェリック』の類似点は、マシンのコックピットの中から撮影された、超没入的で超クールなその猛烈なレースシーン以外にも及ぶ。『F1/エフワン』は、90年代の全盛期にクラッシュを喫して挫折した初老のレーサー、ソニー・ヘイズ(ピット)の物語。30年後、ソニーはかつてのチームメイト(ハビエル・バルデム)から弱小F1チーム「APXGP」への移籍を打診され、名誉挽回の最後のチャンスを与えられる。チームには未熟だが芯のある新人ドライバー、ジョシュア・ピアス(ダムソン・イドリス)がいるが、すぐにふたりのあいだに軋轢が生じていく。彼らは最終目標であるチーム勝利のため、互いに不和を乗り越えなければならなくなる──。
古典的なハリウッド・ストーリーだが、その出来映えは驚くほど秀逸だ。スタジオ主導の大作としては珍しくハートとソウルに溢れ、さらにはオヤジ世代好みのキラーチューンが泣きの一手を繰り出す。『F1/エフワン』や『トップガン マーヴェリック』を観れば、コシンスキーがこの定型的な物語を見事に捌いてみせる、確かな手腕の持ち主であることがわかるだろう。『F1/エフワン』の評価は高く、この夏最大のヒット作のひとつになると期待されている。
公開を数日後に控えたある日、英版『GQ』はロンドンのホテルでコシンスキーと会った。IRLサーキットでの撮影や、ブラッド・ピットとトム・クルーズの共演作のアイデア、そしてもちろん待望の『トップガン』3作目の進捗状況についても話を聞いた。
フォーミュラワン・グループによる全面協力
──ブラッドとダムソンが実際のF1サーキットで、実際の観客を前に、実際のマシンを運転することがなぜ重要だったのでしょうか。観客は映画を観ているとき、それが現実に撮影されたものかどうかを直感的に判断できると信じているからです。F1レースのスケールとスペクタクルは、いくらお金をかけたからといって演出で作り出せるものではありません。本物のドライバーと本物のマシンを背景に据えることは、再現できるものではないのです。私は、実際のスポーツイベントの最中に大作映画を撮影するというアイデアとチャレンジが気に入りました。9つのイベント、デイトナを含めれば10のイベントでね。観客が実際にそこにいると感じられるのは、我々がそこにいたからなんです。
──複数の批評で目にして可笑しかったのは、『F1/エフワン』は男性にとっての『バービー』みたいな映画だという見立てです。おそらくその意味するところは、退屈なマーケティングの一環にもなり得たかもしれない企画から、クールで独創的な作品が生まれたということだと思います。芸術的ビジョンを損なうことなく、ブランドの要求をどのように乗り切ったのでしょうか。ブランドによる束縛はまったく感じませんでした。フォーミュラワン・グループが唯一求めていたのは、グリッド上の他チームを悪者にしないことだけで、そのことは私も初期段階から約束していました。レッドブルもフェラーリも、最初は自分たちが悪役になると思い込んでいましたよ。おそらく、私たちが当初からメルセデスと緊密に連携していたせいもあるのでしょう。しかも、レッドブルとメルセデスが最終戦まで真っ向勝負を繰り広げていた2021年シーズンの真っ最中のことでしたから。また、フェラーリはと言えば、映画では歴史的に悪役として描かれることが多かったように思いますし。たとえば、(1971年の)『栄光のル・マン』なんかでね。
そこで、私たちはまず言いました。「いえ、私たちのストーリーは同じチームに所属する2人のドライバーの対立についてです。もしこの映画に悪役が登場するとしたら、それはAPXGPチーム内の誰かになります」とね。そのことが理解され、私たちが作りたいのがオーセンティックな映画なんだという認識が共有されてからは、ブランドとしてのF1からの制約はすっかりなくなりました。実際、グループの寛容さには驚いたし、不可能だろうと思っていた「F1」というタイトルを映画につけることも許可してくれました。
──しかもロゴまで……。ええ、『The Quick and the Brave(速き者と勇ましき者)』とか、そういうタイトルを考えなきゃならないかと思って気が重かったんですよ。その手のジェネリックなタイトルは前にもあったような気がしてね。『グランプリ』があり、『栄光のル・マン』(注:原題はシンプルに『Le Mans』)があったんだから、この映画のタイトルは『F1』にしたかったんです。
──実在のドライバーのなかで、特にカメラに映りたがっていた人はいましたか。カメラの前に飛び込んでやれという感じではなかったですが、喜んで協力してくれたのは、ジョージ・ラッセル、カルロス(・サインツ)、シャルル(・ルクレール)、ランド(・ノリス)。彼らは皆、忙しいスケジュールの合間を縫って映画にカメオ出演してくれました。彼らは忙しい人たちなのに、レース前のスケジュールに余分な仕事をひとつ追加してくれたんです。
──ダムソンとブラッドのチームは最初から架空に設定するつもりだったのでしょうか。グリッドに11番目のチームを加えるのは少し突飛な感じがして心配でした。でも映画の制作中、F1が2026年にキャデラックが参戦することを発表したのをご存知でしょう。結果として本当のことになったわけです。それとF1を仕切っているステファノ・ドメニカリと話し合ったんですが、APXGPを後方に加えるのが最もフェアな方法だということで意見が一致したんです。どこかのチームをどけたり、2人のドライバーを俳優と入れ替えたりするのではなくね。
──あなたは明らかに、このスポーツのミクロなディテールに多くの注意を払っています。なぜそれだけの精度が重要だったのでしょうか。私はF1ファンがどういう人々かを知っていますから。ドライバーたちが毎週毎週、厳しい視線にさらされているのを目の当たりにして、この映画のことも同じように観るだろうと思ったんです。ドキュメンタリーを作っているわけではありませんが。私の目的は素晴らしいストーリーを伝えることですからね。でも、可能な限り本物に近づけたいと考えました。ドライバーに見せたときや、チーム代表に見せたときに、「こいつらは努力した。少なくとも頑張りはしたらしい」と思ってもらえるように。ほとんどの映画はそうではないですから。
──瓜二つというわけではありませんが、『トップガン マーヴェリック』との類似点がいくつかありますよね。今回も栄光への最後のチャンスを狙うベテランと、自分の道を切り拓こうとする新進気鋭の若者が出てきます。この青写真がうまくいくのはなぜでしょう?この規模とスケールで映画を作る場合、主役候補のリストには3、4人しかいません。少なくとも『トップガン(マーヴェリック)』は続編でしたが、今回は続編ではなく、新しいキャラクターによるオリジナルの物語です。だから、その中心にはアイコンが必要となってきます。つまり、ブラッド、トム、そしてレオのような役者がね。ブラッドとはずっと一緒に仕事をしたいと思っていましたし、10年前に彼と一緒にレース映画を企画していたことがあったから、彼のレース愛も知っていました。
それからは、ブラッド・ピットをどうやってF1の物語に登場させようかという話になってきます。それならチーム代表の役に据えるのがいいだろうとなりますが、ブラッドは自分で運転がしたくて、そもそも映画に出たいのもそのためでした。というわけで、若い頃に挫折したベテランが2度目のチャンスを得るというアイデアによって、50代の人物が主演である理由を説明することになったわけです。それに、とても普遍的で共感しやすいテーマでもありますからね。セカンドチャンスを望まない人はいないでしょう?
それから、(ポール・)ニューマンとクルーズが共演した『ハスラー2』のことも考えていました。若きドライバーは、たとえ(ソニーが)それを認めたくなくても、本質的にその年頃の自分自身なわけです。若いバージョンの自分を見て、自分が犯したのと同じ過ちを犯さないよう必死になる、という物語は興味深いと思ってね。そして、(若いドライバーのキャラクターを)黒人のイギリス人にすることで、外見はまったく違う人間に見えるが、本質的には同じであることに互いに気づくという展開は、私にとって物語の原動力として素晴らしいと感じられたんです。
私としては、『トップガン(マーヴェリック)』は、父と息子の物語という面が強いと思っています。『F1/エフワン』は、ライバルが友人になる話です。外から見れば似たところがあるというのは理解できますが、作っている側からすると、テーマ的にも感情的にも何一つやり直した感じはしませんでしたしね。本当に、まったく違う挑戦のように感じられましたし、私もだからこそ作ったわけです。同じことを繰り返すことに興味はありません。そんなのは面白くないのでね。
『トップガン3』の企画も進行中
──『トップガン3』について訊いておかなければなりません。あなたはこの企画を「ビッグアイデア」と表現し、「新たな挑戦」を感じさせたいとおっしゃっています。俳優を戦闘機に乗せることよりも一歩先に進んだ挑戦とはどのようなものなのでしょうか。その方法を見つけることができたと思います。私たちが考えているスケールの大きさだけでなく、ストーリーそのもののアイデアにおいてね。マーヴェリックがこの映画で抱えているのは実存の危機であり、それは彼自身よりもはるかに大きなものなんです。つまりですね……うっかり内容をバラさずに説明しようとしているんですが(笑)。マーヴェリックが向き合わなければならない実存的な問題があり、それは映画の中で、彼をずっと小さい存在に感じさせるものなわけです。
──興味深いですね。『トップガン マーヴェリック』はトムが次の世代にバトンを渡す、選手交代を描いた映画のように感じていましたから。でも、あなたの話を聞いていると、3作目はそれでもなお彼が中心的な役割を担っているように思えます。ええ、彼についてはまだ語るべき物語があります。最後の挑戦ですよ。というわけで、今はそれに取り組んでいるところです。『F1/エフワン』も書いたエーレン・クルーガーが脚本を執筆しています。何事もそうですが、企画には時間がかかるもので、納得のいく物語ができなければ始まりません。
──ブラッドは、飛行機からぶら下がる必要がない限り、トムとまた仕事がしたいと言っていました。あなたがふたりの共演作を作ることに興味があるかはわかりませんが、もしやるとしたら、どんな企画になるでしょうか。そうですね、あるとすればコール・トリクルの物語になるでしょう。『デイズ・オブ・サンダー』の(クルーズの)キャラクターですが、ソニー・ヘイズと過去に因縁があることがわかるとか。ある時点ではライバル同士で、どこかで接点があったりね。ブラッドとトムが『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の撮影中にゴーカートで猛烈な競争を繰り広げたという逸話がありますが、あのふたりがサーキットで対決するのを見たくない人はいないでしょう?
──あなたが企画していたバージョンの『フォードvsフェラーリ』が完成していたら、彼らに夢中になっていたと思います。ええ、もう少しのところだったんですが……。でもまあ、すべて望ましいところに収まりました。『F1/エフワン』が作れたわけですからね。でも、いろいろな可能性がありました。
──アマゾンが新しい『007』の監督を探していますが、名乗りを挙げることはありますか。子どもの頃からジェームズ・ボンドの大ファンですが、たいていはイギリス人を監督に雇いますよね。今は3つの作品を企画中で、それに夢中なんです。でも、あのシリーズは大好きだから、ファンとしては必ず行きますよ。
編注:本記事の原文が英版『GQ』により6月23日に公開後、『007』次回作の監督にドゥニ・ヴィルヌーヴが内定したことがアマゾンによって正式に発表された。
From British GQ
By Jack King
Translated and Adapted by Yuzuru Todayama
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