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なぜ新車ディーラーがレースに出るのか? スーパーGTとS耐に参戦する「埼玉トヨペット」に聞いてみた

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なぜ新車ディーラーがレースに出るのか? スーパーGTとS耐に参戦する「埼玉トヨペット」に聞いてみた

 この記事をまとめると

■GT300で活躍するディーラーチームから埼玉トヨペット「Green Brave」の監督に取材

注目するとレースが10倍オモシロくなる! スーパーGTの自動車関連以外の「謎スポンサー」の正体

■参戦目的は社員教育・メカニック育成・リクルート強化で地域イベントにも参加している

■参戦コストなど苦労も多いが人材育成・ファン作り・採用面で大きな効果を挙げている

 ツーリングカーレースの最高峰にディーラーが参加するナゾ

 日本発の国際シリーズ、スーパーGTは唯一無二のカテゴリーだ。GT500クラスはそのスピードから「世界最速のGTカー」と謳われ、FIA規定に沿って開発されたGT3とGTA規定に沿って開発されたGT300およびGT300 MCが参戦するGT300クラスは車種ラインアップが多彩で「世界一の激戦区」と呼ばれている。

 そのため、スーパーGTに参戦するチームの顔ぶれは、自動車メーカーの直系チームやサテライトチームがGT500クラスに参戦するほか、GT300クラスもプロのレーシングガレージが主力となってきたが、ここ数年はディーラー系チームもGT300クラスに参戦している。

 具体的には埼玉トヨペットを母体とする埼玉Green Braveが52号車「Green Brave GR Supra GT」を投入するほか、大阪トヨペットを母体とするLM corsaが60号車「Syntium LMcorsa LC500 GT」で参戦。さらに、岡山トヨペットを母体とするK-tune Racingが96号車「K-tunes RC F GT3」を武器にエントリーするなど、3つのディーラーチームが国内最高峰のハコレースに参戦している。

 しかも、この3つのディーラーチームはそれぞれ優勝経験をもつほか、埼玉Green Braveは2023年のスーパーGTで、吉田広樹選手/川合孝汰選手がドライバー部門でチャンピオンを獲得。同時にチーム部門も制し、GT300クラスで二冠を達成。ディーラーチームといえども実力は十分で、名門チームとして定着しているのだが、なぜ、ディーラーチームが世界一の激戦区にチャレンジしているのか?

 さらに近年は、ワンメイクレースのみならずラリー競技など、ディーラーがモータースポーツ活動を行っているが、ほかのカテゴリーと比べてスーパーGTはどのくらい大変なのだろうか?

 というわけで、8月23~24日に開催されたスーパーGT第5戦「SUZUKA GT 300KM RACE」で、ディーラーチームをクローズアップ。スーパーGTに加えてスーパー耐久にも参戦している埼玉Green Braveの監督であり、埼玉トヨペットのモータースポーツ室長でもある青柳浩氏を直撃してみた。

 社員教育と同時にメカニックの輝ける場所を求めS耐からスタート

──埼玉Green Braveは確か、スーパーGTに参戦する前にスーパー耐久に参戦されていましたよね?

 青柳室長:そうです。チームを結成してスーパー耐久への参戦を開始したのが2013年です。同時に86/BRZレースなどにもスポット参戦していました。スーパーGTへの参戦を開始したのは2017年ですね。

──もともとレース活動は社員教育の一環としてはじめられたんですよね?

 青柳室長:はい。それと同時にどうしても自動車の販売会社は営業職が主役で、クルマを売ったセールスが表彰されやすい。当時は処遇・待遇もメカニックより営業職のほうがよかったですからね。レース活動を行うことで、整備士にスポットのあたる場所を作りたかった……という部分もありました。

──なるほど。確かにセールスが販売したクルマをしっかり整備しているのはメカニックですもんね。

 青柳室長:メカニックたちの仕事に魅力をつけたい。メカニックという仕事に誇りをもってもらえるように彼らに光のあたるステージを作ってあげたい、という思いがありました。

──それが、社員教育の一環としてはじめたスーパー耐久だったんですね?

 青柳室長:スーパー耐久をはじめたもうひとつの理由がリクルートです。最近はクルマに関心をもつ子どもたちが減ってきて、整備士になりたいという子どもも少なくなりました。整備士の学校が定員割れを起こすことも多いなか、学校を卒業して販売店に入ってくれる人を増やすため、なにか特徴をつけたい、という部分もありました。クルマの魅力を伝えるうえでもモータースポーツは効果的ですし、当時はまだモータースポーツ活動をやっているディーラーも少なかったので、スーパー耐久をはじめました。

──確かにいまはどこのディーラーも整備士の確保に苦労していますよね。その社員教育およびリクルートの一環としてスーパー耐久をはじめましたが、2017年からスーパーGTをはじめた理由はなんだったのでしょうか?

 青柳室長:ディーラーの特徴として、スーパー耐久でモータースポーツ活動をはじめましたが、より広く、効果的に伝えられるカテゴリーとしては、やはり国内最高峰のスーパーGTがいいのではないか。同時にモータースポーツ活動を始めたときから国際カテゴリーにいつか挑戦したいという思いもありました。スーパー耐久でチャンピオンをとれるようになってきた(2015年にST-4クラスで初のタイトルを獲得)し、整備力もあがってレース運営の土台もできてきた。クルマの魅力を効果的に伝えて、リクルートに繋げていくと同時にメカニックのステータスを上げるためにトップカテゴリーのスーパーGTに参戦することになりました。

──スーパーGTへ参戦する際になにが大変でしたか?

 青柳室長:スーパー耐久よりスーパーGTは参戦コストがかかりますからね。そういった予算調整が大変でした。それに、スーパーGTとスーパー耐久はクルマが違いますよね。GT300クラスはFIA-GT3にGTA-GT300、GT300MCといろいろな規格があるなか、どのクルマがいちばん私たちの活動に適しているのか、大義名分に合わせながら絞り込んでいくのが大変でしたね。

 レース参戦で思わぬ効果も

──なるほど。たしかデビューイヤーの2017年はマザーシャーシのマークXで参戦したんですよね?

 青柳室長:スーパー耐久のときからそうだんたんですけど、ディーラーチームとして活動している以上、自分たちの販売店で扱っているクルマをレースカーとしても選んでいきたい、というところがありました。スーパー耐久もトヨタ86ではじまって、そのあとにマークXやクラウンRSでレースに参戦。まわりからは「珍しいクルマだね」といわれたんですけど、トヨペット店の基幹車種というか顔になるクルマをレースで使いたいという思いがありました。スーパーGTに参戦する際も、FIA-GT3を買ってきて走らせるのであればかなり楽だったんですけど、自分たちの取り扱い車両で戦いたいということもあって、マークXにしました。

──前例がないだけに苦労しましたよね?

 青柳室長:自分たちで作ったクルマでレースをしたいということもスーパー耐久のときからの大義名分なので、マザーシャーシを用意して、マークXのエクステリアに仕上げていきました。まわりからは「なにを考えているんだ」といわれましたし、正直、苦労しました。結果としても速くはなかったんですけど、でも話題性もあったし、「埼玉トヨペットはほかとは違うよね」という見られかたをするようになったので、よくも悪くも個性という部分では注目を集められたと思います。

──広報的にはマークXで参戦したことは正解でしたよね。でも、スーパー耐久のときから、マークXやクラウンRSなど、ちょっと変わったクルマで戦ってきたので、そういった経験はスーパーGTでも活きていますよね?

 青柳室長:相当に活かされていますね。スーパー耐久では86にしてもマークXやクラウンRSにしてもホワイトボディから作ってきていますし、レギュレーションのなかで、どこをどうすれば軽量化できるのか、といったことを考えながら作ってきましたからね。苦労したぶん、メカニックたちの技量のレベルは上がってきています。

──人材育成の成果が現れていますね。

 青柳室長:そうですね。とはいえ、販売店の現場レベルで、その技術が必要かというと難しい部分ではあると思いますけど、メカニックたちの技術はかなり高いと思います。やはりレース活動がメカニックたちにとっていい教材になっているんだと思います。

──ちなみに、スーパーGTと同時にスーパー耐久にも参戦していますが、チームのメンバーは同じなんでしょうか?

 青柳室長:監督とエンジニアは共通ですが、メカニックはわかれていて、それぞれのクルマの整備を行っています。

──スーパーGTは国内最大級の人気を誇るカテゴリーですが、GT300クラスに参戦することによって、埼玉Green Braveのファンも増えてきたんでしょうか?

 青柳室長:人数を数えているわけではないので正確にはわかりませんが、スーパーGTに参戦したことでかなり増えたと思います。ディーラーチームはファンとの距離感がかなり近い存在で、ずっと応援してくれている方はチームスタッフとも仲よくなっています。それに、私たちは埼玉県のチームで、地元から愛されているチームを目指していることもあって、町内会主催の夏祭りとか、埼玉県とコラボして県民の日に行うお祭りにはクルマをもって行っているんですけど、そういったイベントに積極的に出ることで地元の子どもたちからも応援してもらえるようになってきました。「スーパーGTを見に行きます」と声をかけたりしてくれるようになってきたので、埼玉県でもレースをやっているディーラーということが認知されてきたと思いますね。

──サーキット以外のイベントでも活動しているんですね?

 青柳室長:そういったイベントに参加して認知してもらうことで、整備を勉強している学生たちに埼玉トヨペットに興味をもってもらいたい。リクルートにも繋げたいので、埼玉県内にある整備士の専門学校のオープンキャンパスにクルマをもって行ったりしていますし、工場見学をしたいという要望があれば対応しています。レーシングチームとして考えたら、そんな必要はないのかもしれませんが、埼玉トヨペットというディーラーとして考えたときは、地域と密着した活動は必要なので、社会貢献、地域貢献を行いながら、ファン作りをしていきたいと思います。

──レース活動はメカニックの育成に効果を現しているようですが、ファン作りでも効果を発揮していますね。

 青柳室長:そうですね。ファン作りという部分でも効果は徐々に出てきていますし、リクルートという部分でも、やはりスーパーGTに出ているチームということで、かなり見られかたも変わってきました。クルマの好きな専門学校生にとっては、スーパーGTに参戦している埼玉トヨペットとうことで、スーパー耐久だけに参戦していたときよりも、かなり関心をもってもらえるようになりましたので、リクルートでも高い成果が出ています。

──スーパー耐久に続いてスーパーGTでも2023年にGT300クラスで2冠を達成されましたが、ディーラーチームとしてこれからの目標はなんですか?

 青柳室長:GT500クラスにしても、スーパーフォーミュラにしても、正直、この先にステップアップしていくことは考えていません。いずれにしてもGT300のなかでどう結果を残していくのか? 同時にレース結果も大事ですが、社員メカニックを使って、いかに育てていくのかもディーラーチームとしては意義のある部分なので、このスタンスは続けていくと思います。

 このように、ディーラーチームにとってスーパーGTへの参戦はかなりハードなチャレンジで、かなりの苦労を強いられているようだが、その一方で、人材育成やファン作り、リクルートの部分で効果を発揮。前述のとおり、3つのディーラーチームはパフォーマンスが高く上位争いを左右しているだけに、我々クルマ好きにとってももっとも身近なチームのひとつとして注目したい。

文:WEB CARTOP 廣本 泉

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みんなのコメント

34件
  • the********
    就職先探す将来メカニックさんの志望動機になりそうだね。
  • vxk********
    ホンダカーズ東海もレースに参戦してますよ。
    しかもドライバーの一人が社長らしいですからね。
    サーキット走行会も開催されて参加車両はメーカー問わずで気軽に参加できますから。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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