海事産業における現状
海事産業は、長年にわたって男性中心の職場であり続けてきた。だが近年、グローバルに多様性と包摂性(ダイバーシティ&インクルージョン)の重要性が認識されるようになり、海事業界でも女性の参画が大きな課題となっている。
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2019年には、女性活躍推進法の一部を改正する法律が成立し、各分野で女性の社会進出が注目を集めた。海事産業も例外ではなく、従来「男性の職場」とされてきた構造に変化が求められている。
例えば、女性船員の数は徐々に増加しているものの、海運業界全体に占める女性の割合は依然として低い。内航分野における女性船員の比率は
「約2%」
にとどまり、国際海事機関(IMO)が2021年に実施した調査でも、世界全体の女性比率は2%未満にすぎない。特に、航海士や機関士などの現場職では、その割合はさらに低下する。
一方で、事務職や管理職、あるいは港湾運営や経営部門など、陸上業務においては女性の進出が少しずつ進んでいる。日本国内では、国土交通省が女性活躍を支援するプロジェクトを立ち上げ、海事関連企業における女性採用や職場環境の改善が進められている。こうした動きにより、女性社員が実際に活躍する事例も着実に増えてきた。
いまだ男社会から抜け出せない理由
それでもなお、海事産業における女性の進出は遅れている。背景には、いくつかの構造的な課題がある。
第一に、船員の仕事には長時間労働や肉体労働がともない、体力面での負担が大きい。家庭生活との両立も難しい。特に外航船では、数カ月間海上で勤務するケースが一般的で、育児や介護といったライフイベントとの両立が困難になる。
第二に、職場環境の問題も深刻だ。女性社員が極端に少ない職場では、入社自体にハードルを感じる人も多い。設備が整っておらず、プライバシーの確保が難しい場合も少なくない。加えて、男性優位の職場文化に飛び込むことで、セクシュアルハラスメントを受けるリスクへの不安も拭えない。
第三に、固定観念の問題も根深い。男性中心の組織文化や無意識のバイアスが、女性のキャリア形成を阻む要因となっている。
こうした課題に対応するため、国際社会でも女性の活躍推進が進んでいる。国際海事機関(IMO)は、女性のエンパワーメントを支援する取り組みを進めている。その一環として、女性海事協会(WIMA)の設立を後援。ジェンダーの課題だけでなく、技術的なテーマについても議論するプラットフォームを提供している。
また、女性国際海運貿易協会(WISTA)は、海運業界で働く女性プロフェッショナルのネットワークづくりを支援している。2021年には、IMOが5月18日を「国際海事女性デー」に制定。女性活躍への意識啓発を目的とし、各国政府や企業がこの日に合わせてセミナーやイベントを開催している。
日本における取り組みと成果
日本でも、女性の海事分野進出を後押しする施策が相次いでいる。国土交通省は「輝け!フネージョ★」プロジェクトを立ち上げ、海事産業における女性の活躍推進に取り組んでいる。
同省は、海運・造船・舶用工業などの事業者における女性社員の声をまとめた「海事産業における女性活躍推進の取組事例集」を作成。この事例集では、女性が少ない職場に対する不安の払拭や、企業の具体的な施策を紹介している。業界に関心を持つ女性の背中を押すことが狙いだ。
船上の設備面でも変化が進む。女性船員に配慮したラバトリー(トイレ)の各船室への設置や、女性専用のロッカーや洗濯機などの整備を行う船舶が増えている。
企業側の対応も進んでいる。「えるぼし認定」の取得により、女性活躍推進に積極的な企業としての姿勢を示す動きがある。商船三井や名村造船所などがその認定を受けている。
業界全体にも、ダイバーシティ推進が企業価値向上につながるという認識が広がっている。女性だけでなく、多様な人材が活躍できる職場環境の整備が進む。
女性社員の活躍を紹介する企業も増えており、「女性初の○○」といった記事が登場する機会も年々多くなっている。
ESG時代の女性役員登用加速
今後、海事産業における女性進出はどのように発展していくのか。そのカギを握るのが技術革新である。
・AI
・自動運航
・リモートモニタリング
といった技術の普及により、これまで力仕事が中心だった船舶運航の現場が変わりつつある。物理的な負担が軽くなれば、性別に関係なく多様な人材が職に就きやすくなる。
また、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営が重視されるなかで、ダイバーシティは企業価値を左右する重要な評価軸となっている。海事企業にも、
・女性役員の登用
・女性向けキャリアパスの構築
が一層求められるようになっている。
一方で、単なる人数の増加だけでは十分とはいえない。求められるのは、質の高いキャリア支援である。女性社員や女性管理職が孤立せずに働けるネットワークづくり。職場環境の継続的な改善。そして、柔軟な働き方制度の導入。こうした取り組みが、実質的な女性活躍を支える土台となる。
海事産業の構造的課題
船の運航や造船を中心とする海事産業は、男性中心の職場で身体的負担が大きいというイメージが根強い。そのため、他産業に比べて女性の活躍はまだ少ない。
だが近年、福利厚生の充実や就労環境の改善、施設の整備など、事業者の積極的な取り組みにより女性社員は徐々に増えている。
とはいえ、女性比率は依然として低く、構造的課題は残る。今後はテクノロジーの進展と社会的価値観の変化を追い風に、多様な人材が活躍できる新たな海事産業像の構築が求められている。
女性たちが広大な海のフィールドで可能性を最大限に発揮する時代は確実に近づいている。(岩城寿也(海事ライター))
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みんなのコメント
何でもかんでも女性の割合が◯%で少なくダメだ。みたいな風潮もどうなのかなと思います。
女性用化粧品に男性販売員が少ないのと同じ。