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【ヒットの法則151】ジェッタ2.0TはGTI譲りのダイナミックなセダンだった

掲載 更新 2
【ヒットの法則151】ジェッタ2.0TはGTI譲りのダイナミックなセダンだった

2006年1月23日、5代目ゴルフをベーストとしたスポーツセダン、ジェッタが日本上陸を果たしている。最先端のメカニズムを採用しながら、あえてかつての名前を復活させた意図はどこにあったのか。ジェッタのファーストインプレッションを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年3月号より)

フォルクスワーゲンの原点に戻ったクルマ作り
フォルクスワーゲングループジャパンの2006年の大きなテーマは「セダンマーケットへの本格挑戦」だという。そういえば、日本でのフォルクスワーゲンのラインアップを見てみるとセダンが少ない。ポロ、ゴルフ、ゴルフプラス、ゴルフトゥーラン、ニュービートル、ニュービートルカブリオレ、ボーラ、パサート、パサートワゴン、トゥアレグと数多くラインナップをそろえる中で、3ボックスセダンはボーラとパサートの2車種だけだ。

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メルセデスベンツといえばSクラス、BMWといえば3シリーズと同様に、フォルクスワーゲンといえばゴルフを連想する人は多い。それゆえゴルフの派生車種であるゴルフプラス、ゴルフトゥーランは自然に受け入れられる。またゴルフの小型版ともいえるポロもフォルクスワーゲンのイメージに合うし、トゥアレグは「上質なのにリーズナブルな価格」でSUV後発とは思えない存在感を示す。ニュービートルは存在そのものがフォルクスワーゲンだ。それぞれが見事にフォルクスワーゲンなのだ。

しかし、3ボックスセダンのボーラとパサートは、乗ってみればいいクルマなのに残念ながらどうも人気がない。フォルクスワーゲンのイメージから距離がある存在なのかもしれない。

そんな中で新型ジェッタが登場した。そもそもジェッタはゴルフの派生車種として作られた3ボックスセダンだ。日本には1981年から輸入された初代と2代目はジェッタという名前だったが、3代目はヴェント、4代目はボーラと日本での名前を変えていった。そして、ゴルフが5代目になったのを機に再びジェッタの名前に戻った。

なぜ、昔の名前を復活させたのだろうか。拡大高級化戦略は間違いではなかったと思うが、全世界のマーケットに浸透したわけではなかった。それも踏まえて、全世界でジェッタの名前を復活させることで、フォルクスワーゲンは原点に戻りたいのかもしれない。

ではフォルクスワーゲンの原点とはなにか。それはドイツ車が本来持っている質実剛健なハードウエアのイメージだろう。基本に忠実で、何年乗っても飽きない奥の深さ、丈夫なボディやサスペンション、大量生産ではあるけれど、頑固にいいものを創るというマイスターの技術が宿ったクルマ作りの基本スタンスは、クルマのキャラクターを明確にする。

ゴルフの兄弟車と言いつつ見た目はゴルフとは異なる 
さて新型ジェッタはそんなクルマになっているのか、実際に乗って確かめてみることにしよう。

試乗したのはジェッタ2.0Tというグレード。エンジンはゴルフGTIと同じ横置き4気筒2Lをターボチャージャーで過給するFSI(ガソリン直噴システム)。最高出力200ps/5100-6000rpm、最大トルク280Nm/1800-5000rpmを誇る。6速のDSG(ダイレクト・シフト・ギアボックス)が組み合わされるのもゴルフGTIと同じである。

もうひとつのグレードであるジェッタ2.0は、同じFSIだがターボチャージャーなしの2Lエンジンに通常のトルクコンバータを使った6速ATが組み合わされる。

ジェッタ2.0Tは車高を20mm下げ、ダンパーを硬めたスポーツサスペンションと17インチタイヤを組み合わせている。こうしたスペックから想像させるより、新型ジェッタはおとなしいスタイルだ。ジェッタはあくまでもセダンだから、いくらスポー

ツ度が高くても高性能をむき出しにしない。いかにもフォルクスワーゲンらしいところだ。

ジェッタはゴルフの兄弟車とは言いつつも、見た目はゴルフとはまったく異なる。ゴルフのように上方向ではなく、前後に長く伸びたスタイルだ。かつてのジェッタのように取って付けたようなトランクではなく、全体の流れの中にきれいにトランクが存在する。サイドのキャラクターラインもジェッタ独特のものだ。ラジエータグリル、フェンダー、ドア、ルーフ、バンパー、トランクリッド、ウインドウ、ライト類に至るまで、アウタースキンはまったく別物である。見た目でも後席にお客さまを堂々と乗せることができそうだ。

今回はまずリアシートからチェックしてみよう。3人分の3点式シートベルト、3人分のヘッドレストを装備している。実際に座ってみても、クッション部のフィット感はいいし、バックレストも肩まで逃げずにサポートしてくれるから、長距離ドライブでも疲れが少なさそうだ。ヘッドクリアランスは胴の長いボクにも十分だ。センタートンネルはあるがフットスペースも広い。ちゃんと4ドアセダンのリアシートとしての機能を持っている。バックレスト上端が逃げ気味のメルセデス・べンツやレクサスにも負けていない。

運転席には電動シートが備わる。ヘッドレストは手動だ。広範囲に調整可能なシートとチルトとテレスコピックが利くハンドルにより、快適なドライビングポジションがとれるのはゴルフと同じだ。座高が高くてもヘッドクリアランスには余裕がある。

走り出すと、DSGがさらに熟成されて扱いやすくなったのに気づく。ブレーキペダルを戻していくと、通常のATのような自然なクリープがある。上り坂の場合には後退しないように自動的にブレーキのリリースが遅れるシステムも組み込まれている。クリープ状態からアクセルペダルを踏み込むとスムーズに加速していく。そして、アクセルペダルを深く踏み込めば、期待通りの鋭い加速ができるのだ。

アクセルペダルを踏んだ時のレスポンスはよく、ターボチャージャーによるタイムラグはまず感じない。加速途中でアクセルペダルを一度戻してから再度踏み込んだ場合でも、レスポンスが遅れるターボチャージャーの癖は出ず、スムーズな再加速ができる。一見ゴルフGTIほど元気がないように感じるが、セダンらしい躾で褒められるところだ。パドルシフトも備わる。

ツインクラッチのDSGらしい途切れのない鋭い加速が続く。6500rpmからレッドゾーンが始まる。全開加速では6500rpm(1速は約60km/h、2速は約90km/h)でシフトアップしていく。

ハンドリングは素直だ。ちょっと軽めのステアリングフィールだが、ダイレクト感がある。ニュートラル付近から正確な動きがあるし、手応えと動きがマッチしていて軽快だ。コーナーにターンインする時も、フロントが逃げる感じは出にくく、素直にノーズが内側に向いてくるからスポーティだ。

車高が20mm低くなったスポーツサスペンションのせいか、乗り心地はやや硬い。時に鋭い揺れを感じることもあるが、サイドシルが骨太な感じで振動の残りは感じない。試乗したのはまったくの新車だったのでフリクションが取れていないのもあるのだろう。5000kmくらい乗り込むともう少しまろやかになるはずだ。

どちらかというと先代ボーラは乗用車っぽい軟弱なイメージがあったが、ジェッタ2.0Tは俄然ダイレクト感を持つようになった。スタイリングは日本車の中に溶け込みそうな面もあるが、ドライビングフィールは日本車とも大きく違った味付けでジェッタなりのダイナミックな個性が出ている。

新型ジェッタは、スポーティさと同時に快適性も味わえる、長距離ドライブに駆り出したいクルマである。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2006年3月号より)



フォルクスワーゲン ジェッタ2.0T (2006年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4565×1785×1450mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1490kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1800-5000pm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:FF
●車両価格:359万円(2006年当時)

[ アルバム : フォルクスワーゲン ジェッタ2.0T(2006年当時) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • ゴルフ5には当初
    スポーツラインとGTSというのがあって
    GTIと同じエンジンを使っていたね
  • >Motor Magazine 2006年3月号より

    ディーゼル不正発覚前。
    当時の日本メディアによるワーゲンのベタ誉めぶり、いま読むと異常ぶりが際立ってますね、、、
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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