日本に上陸した新型プジョー「5008 GT ハイブリッド アルカンターラパッケージ」は、完成度の高い3列シートSUVだった。 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
新型プジョー5008 GT ハイブリッド アルカンターラパッケージの特徴
日常の移動をもっと楽しく!──新型プジョー5008 GT ハイブリッド アルカンターラパッケージ試乗記
1.進化した猫足2.日本製3列シートSUVとの違い3.600万円の予算で手に入るライフスタイル・ツール1.進化した猫足
新型5008の心臓部には、1.2リッターのガソリン直噴ターボエンジンに、e-DCS6(6速デュアルクラッチオートマチック)と電動モーターを組み合わせた、ステランティスグループ最新の48Vマイルドハイブリッドシステムが搭載されている。
「全長4.8m、車重1.7t超のSUVに1.2リッターエンジンで力不足ではないのか?」
そうした疑問は、実際にアクセルを踏み込むと次第に薄れていく。
発進時や極低速域では、積極的にモーター(最高出力16kW)が介入し、まるでフルハイブリッドやBEV(電気自動車)のような滑らかなトルクが追加され車体を押し出す。日常の市街地走行において、電気だけで走行している時間が想像以上に長いことに驚かされる。
急な登り坂や高速道路への合流など、加速が求められる状況でも、100kW(136ps)/230Nmを発揮するターボエンジンとモーターの協調は自然で扱いやすい。都市部での使用において、動力性能に大きな不足を感じることはなかった。
巨体でありながら、WLTCモードで18.4km/Lという優れた燃費性能を実現している点も、電動化技術の恩恵と言えるだろう。
静粛性についても特筆に値する。エンジン音はキャビンから遠く離れた場所で心地よく響く程度に抑え込まれており、ロードノイズの遮断も優秀である。雨天時の走行では雨音の方が際立って聞こえるほど、車内は静寂に包まれていた。
しかし、新型5008の真骨頂は、ワインディングロードに持ち込んだ時にこそ発揮される。
アップダウンの激しい連続カーブにおいて、5008は水を得た魚のように躍動した。小径ステアリングによる操舵の遅れは一切なく、切った分だけノーズが正確にインを向く。過敏なクイックさではなく、ドライバーの意図に忠実で予測しやすい、シャープかつリニアなハンドリングである。
足回りは、プジョー伝統の“猫足”と呼ぶにふさわしいしなやかさを見せる。荒れた路面の凹凸を優しくいなしながらも、コーナーでは粘り強いグリップを発揮し、車体のロールを自然なペースで抑え込む。
路面追従性が驚異的に高く、後席にパッセンジャーを乗せていることを忘れてしまうほど、ドライバーに操る歓びを提供してくれる。
この巨体をこれほどまでにスポーティかつ快適に走らせるシャシー・セッティングの妙は、欧州の石畳からアルプスの峠道までを走り込むフランス車ならではの圧倒的なアドバンテージである。
2.日本製3列シートSUVとの違い
現在、日本の3列シートSUV市場は、マツダ「CX-80」や三菱「アウトランダーPHEV」、日産「エクストレイル」など、各社がしのぎを削る激戦区だ。
これら優秀な国産SUV群と新型5008を比較したとき、根底にあるクルマ造りの思想の違いが浮き彫りになる。
国産SUVの多くは、2列目にベンチシート(3人掛け)を採用するか、あるいは居住性を高めるためにキャプテンシート(2人掛け・計6人乗り)を採用するケースが主流である。対して新型5008は、2列目を独立シートとしている点が違う。
40:60分割式のスライド&3座独立のリクライニング機能によって、フル乗車時でも誰かが我慢する空間を作らない。全席を平等に扱うパッケージングは、個人のパーソナルスペースを重んじるフランスならではのエスプリと言える。
さらに国産モデルのインテリアは、人間工学に基づいた機能的かつ保守的なレイアウトが多く、誰が乗っても迷わず操作できる安心感に重きを置いている。
しかし新型5008の運転席に座ると、視界に飛び込む21インチのパノラミックカーブドディスプレイや小径ステアリングが、ドライバーに“これから特別な機械を操る”といった高揚感を与える。移動を単なる作業にしない、アバンギャルドな空間演出は、実用一辺倒になりがちなファミリーSUVにおいて強烈な個性だ。
走りの面ではいかに? 国産のストロングハイブリッドやPHEV、あるいは大排気量ディーゼルを積むSUVは、強大なトルクと車重を活かした重厚でフラットなクルージングを得意とする。対して新型5008は、1.2リッターの小排気量エンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせることで、フロントノーズの軽さを強烈に実感させるのが印象的だった。
国産SUVがどっしりと直進する感覚だとすれば、新型5008は小径ステアリングの恩恵もありヒラヒラとコーナーを舞う感覚に近い。
フランス車特有のしなやかな足回り(猫足)が路面を捉え続けるため、巨体でありながらドライバーに「クルマが小さい」と錯覚させるほどの軽快なハンドリングを実現しているのだ。
3.予算600万円で手に入るライフスタイル・ツール
先進運転支援システム(ADAS)はフル装備である。ストップ&ゴー機能付きのアダプティブクルーズコントロール、ブラインドスポットモニター、レーンポジショニングアシスト、そして360°ビジョン(俯瞰カメラ)などが標準で備わり、長距離クルージングから狭い駐車場の取り回しまで、ドライバーの負担を軽減してくれる。
これだけの優雅なデザイン、贅沢なアルカンターラ内装、革新的なi-Cockpit、実用的な3列シート、そして洗練されたハイブリッド・パワートレインとシャシーを備えながら、車両本体価格は¥5,990,000に抑えられている。昨今の車両価格高騰を鑑みれば、このコストパフォーマンスは驚異的と言わざるを得ない。
新型プジョー 5008 GT ハイブリッド アルカンターラパッケージは、週末の家族旅行から、フォーマルな場への送迎、そしてドライバー自身が純粋に運転を楽しむためのパーソナル・エスケープまで、あらゆるシーンを高い美意識とともに満たしてくれる存在になるだろう。
ミニバンへの妥協を拒み、SUVにも妥協なき運動性能とデザインを求めるすべての人たちにとって、フランスからの“黒船”は、ユーザーのライフスタイルを間違いなく一段高い次元へと引き上げてくれるはずだ。
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