フォーミュラ・ドリフト・ジャパン(FDJ)のトップカテゴリーへデビューを飾った大湯都史樹。4月末のデビュー戦富士スピードウェイでは初戦ながら決勝トーナメントへと進出する快走を見せ、今後への期待を大きく膨らませるリザルトとなった。
普段、スーパーフォーミュラ/スーパーGTを主戦場としている大湯がFDJで駆るのは、いったいどんな車両なのか。その秘密に迫ってみたい。
「僕は隙だらけ(笑)」緊張のFDJデビュー戦で1200馬力を手懐けた大湯都史樹の“伸び代”
■「ドリフト時は横から風を入れて抜くほうが効率的に冷える」
大湯が2025年シーズンのFDJで駆るのは、TEAM KAZAMA(風間オートサービス)が仕立てたGR86だ。フルカーボンのボディに1200馬力を発生させるエンジンを搭載。この車両は2024年東京オートサロンのカスタムカーコンテストでグランプリを受賞したTOYOTA GR86 CARBON SPEC/DRIFTである。
もともとFDJに参戦することを前提に製作しており、ロールケージや消火器などFDJのレギュレーションに準じている。そして、ワークス体制でFDJに参戦するTEAM KAZAMAにとって「勝つこと」を意識した作りになっている。
心臓部はチューニングエンジンとして“トヨタ最強”の呼び声が高い2JZ-GTEに換装し、東名パワードの3.6Lキットを使って排気量アップとともに高強度化。エンジンの仕様としては1000馬力となるが、1200馬力対応のギャレットG40タービンを組み合わせ、亜酸化窒素をエンジン内に噴射するNOS(ナイトラス・オキサイド・システム)によってその最大出力を引き出す。
加えて、NOSは低中回転域でのターボラグを補う役割も担っており、大湯は初めて乗ったときの印象を「たとえば、練習機のクレスタだと2速にギヤを落とさないといけないコーナーを、このGR86は3速のままでもちゃんと滑らせることができる。扱いやすいとは思わなかったけど(笑)、扱い難いということもなくて、欲しいところでパワーがグワッとくる感じです」と話す。
駆動系はオグラクラッチのトリプルプレートを介してサムソナスの5速シーケンシャルミッションにつながり、デファレンシャルには降ろすことなくファイナルギヤを変更できるシッキーのクイックチェンジを導入。また、足まわりはDG-5の車高調を軸に、ワイズファブのアップライト&調整式アームでステアリングの切れ角をアップ。1200馬力をしっかりと伝達し、ドリフトに欠かせない強化が成されている。
この仕様を聞くだけでもすさまじい車両と思ってしまうが、「FDJの上位選手なら、これはスタンダード」とTEAM KAZAMAの風間俊治代表。
ちなみに、FDJ開幕戦の富士大会で優勝したTEAM KAZAMAケン・グシのレクサスIS500も先述したメニューとほぼ同じ仕様で、これは現場でスペアパーツを共有する意味もあるそうだ。そして「ドライバーの力量が競っているなかで、勝ちにいくためにはスタンダード+αが必要」だという。
そのプラスαとして、GR86が“特別”なのがフルカーボンボディだ。その製法には一般的なウエット成形、ドライ成形ではなく、インフュージョン(VaRTM/バキュームレジントランスファー)成形を採用した。
製法の詳細は割愛するが、簡単に説明すると、いずれも炭素繊維(CFRP)を使用しつつ、何層にも重ねながら手作業で樹脂を塗り込んでいくのがウエット、オートクレーブで高い圧力をかけながら密度を増して焼き上げるドライに対し、インフュージョンは真空引きして密度を上げ、常温硬化後の加熱によって樹脂に物性を与える製法。最強なのはドライ成形だが、インフュージョン成形はウエットカーボンよりも軽く、高強度に作れるのが特徴だ。バンパーやボンネット、ドアだけでなく、ルーフやリヤゲートまですべてをインフュージョンカーボンとし、2JZエンジンやクイックチェンジなどの重量物を搭載したうえで車重は1270kgに抑えられている。
さらに、ラジエターをコクピット後方に移設することで前後の重量バランスを最適化してトラクション性能の向上を図った。風間代表によると「ドリフト時は横から風を入れて抜くほうが効率的に冷える」のも理由のひとつだと言う。
また、リヤのブレーキキャリパーはウィルウッドの2ポットを基本に、別系統とした油圧式のサイドブレーキ専用キャリパーも装着。同系統だとフットブレーキの踏み方や車両の挙動によって油圧がフロントに寄ってしまうことがあるため、リヤブレーキだけを確実にロックさせるためのドリフト車両ならではの手法だ。
2025年シーズンのFDJ開幕時、GR86はオートサロンでグランプリを受賞した仕様から大きな変更はない。もちろん、これから大湯の走りに合わせて仕様変更していくと言うが、すでにチャンピオンを狙えるクルマだ。「大湯選手が覚醒したときにも対応できますよ」とは風間代表。大湯の進化により、GR86の本領が引き出される日が待ち遠しい。
[オートスポーツweb 2025年05月23日]
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みんなのコメント
ドリフトにそんなパワー要るのか?
と言われたものだが