メルセデス・ベンツの水素ベーストラックで次の開発ステージとなる「NextGenH2」が公開された。現行の水素燃料電池トラックのプロトタイプ「GenH2」の次世代に当たる。
限定的な少数量産を行なうことにしており、2026年の終わりごろから100台を顧客企業のもとに配備するという。
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燃料電池システムはダイムラーとボルボが合弁で設立したセルセントリック製の実績のあるコンポーネントを継続採用しており、燃料に液体水素を使用する点なども「GenH2」を踏襲する。いっぽう、量産車との部品共通化や既存のトレーラとの互換性を高めるなど車両としての成熟度を高め、実用的なトラックとして使い勝手を向上した。
ダイムラーは2030年代初頭にも燃料電池トラックの大量生産を開始することを目指している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG
ダイムラー、水素燃料電池トラックの次世代モデルを公開
燃料電池トラックの第1世代に当たるメルセデス・ベンツ「GenH2」(ジェンエイチツー)プロトタイプでの開発・試験の成功に続いて、ダイムラー・トラックは次世代の「NextGenH2」(ネクストジェンエイチツー)を2026年1月26日に発表した。
持続可能な輸送を実現する道の一つとして水素を重視している同社にとって、燃料電池トラック開発の新たなマイルストーンとなる。合計100ユニットと少数ではあるが、「メルセデス・ベンツ」ブランドの大型トラックを製造するヴェルト工場の生産ラインを使った量産を行なう。車両はセミトレーラ連結用の大型トラクタとなるようだ。
少数量産の100台は2026年末ごろから顧客企業に届けられ、日常業務を通じたトライアルを行なう予定で、メルセデス・ベンツ・トラックスのCEOを務めるアヒム・プッヒャート氏は次のように話している。
「この業界の持続可能な変革においては、バッテリー電気式のソリューションに加えて水素ベースの駆動システムが不可欠です。航続距離が長く、量産に向けた準備がほぼ整っているNextGenH2トラックは、技術的にも燃料電池トラックの新たな一歩となります。2026年末から、弊社のお客様と協力して少数量産モデルを導入し、日常の輸送業務に使用します」。
同社のエンジニアリングチームは第1世代に当たるGenH2が実証した強みを新モデルにも継承することを選択した。その一つが液体水素の継続採用だ。
液体水素を燃料とすることで、充填1回あたりの航続距離はフルロード(連結総重量40トンの満載状態)で1000kmを大きく超える。燃料電池システムも実績のあるセルセントリック製のBZA150型となる。セルセントリックはダイムラー・トラックとボルボ・グループが合弁で設立した燃料電池メーカーだ。
いっぽう、多くのコンポーネントは量産型バッテリーEV(BEV)長距離トラックとなる同社の「eアクトロス600」と共通化した(最新型のeアクスルや空力を最適化したプロキャビン、ドライバー補助システムなど)。実績のあるコンポーネントへのアップグレードにより、量産に向けた準備を整えるとともに、要求の多い長距離輸送に柔軟に応える。
液体水素が1000km以上の航続距離をもたらす
水素ベースの車両を開発する上で、ダイムラーは液体水素の使用を優先している。
摂氏マイナス253度という極低温が必要だが、液化することで気体水素と比較したエネルギー密度は大幅に高くなり、限られた容量のタンクに、より多くの水素を充填することができる。
これにより航続距離が大幅に伸び、従来のディーゼル車に匹敵する性能を発揮する。
その液体水素タンクは第1世代からアップグレードされた点で、タンク2基の合計で水素85kgを充填できるようになった(GenH2は80kg)。両サイドに搭載するタンクはお互いに接続されており、左右どちらからでも充填することが可能だ。
燃料の補給規格はダイムラーとリンデ社が共同開発しているsLH2(過冷却水素によりボイルオフガスを再液化し、気化による燃料損失を最小化する技術)を採用し、充填は10~15分で完了する。これはディーゼル車と同じくらい迅速で、安全かつ簡単だという。
また、液体水素には流通上も扱いやすいというメリットがある。一般的に気体を大量に運ぶには大型の高圧タンクなどが必要となり、場所やコストがかさむ。これは水素にも当てはまり、エネルギー密度、重量、輸送コストなど様々な面で輸送するには液体のほうが扱いやすい。
とりわけ、今後、大型トラックの燃料として水素が普及するという前提に立つと、液体燃料である軽油(ディーゼル燃料)と同様の供給態勢を構築できる液体水素は、インフラ整備の上でも有利とされる。
ダイムラーは2023年に定積(総重量40トン)のGenH2による「#HydrogenRecordRun」で1047kmを実走し、液体水素の有用性を証明している。
信頼性と効率性を両立
燃料電池は水素と酸素を反応させ、電気を作り出す装置であり、電気を蓄えておくため車両にはバッテリーも搭載している。電気で駆動するeアクスルが推進力を生みだし、全体のプロセスで排出されるのは水蒸気だけとなる。
NextGenH2でも水素駆動の中心にあるのはセルセントリック製の燃料電池スタックであるBZA150型だ。搭載するのはこのユニットを2基組み合わせたツインシステムで、合計出力は300kWとなる(1基当たり150kW)。同機はキャブ下のエンジンコンパートメントにコンパクトに収められている。
GenH2による数年間の徹底的な試験を経て、この水素駆動コンセプトは実走行環境での信頼性と効率性において高い評価を受けている。顧客トライアルによる平均燃費(100km当たりの水素消費量)は「5.6kg/100km」から「8.0kg/100km」の間だった。
(この燃費を単純計算でNextGenH2の満充填(水素85kg)の航続距離に直すと、それぞれ1517kmから1062kmとなる。ここに新型キャブやeアクスルによる燃費の向上分が加わるので、ディーゼル車並みの航続距離は確実に実現しそうだ)
顧客による燃費の差は、主にそれぞれの使用環境での連結総重量(GCW)の差を反映しており、顧客の平均GCWは16トンから34トンだった。
量産コンポーネントを活用し成熟度を高める
メルセデス・ベンツのNextGenH2トラックは、新型車でありながら高い成熟度を誇っている。これは同社の量産型トラックに搭載される最先端のコンポーネントを採用しているためだ。
例えばキャブはBEVの「eアクトロス600」やディーゼル車のフラッグシップとなる「アクトロスL」に搭載される「プロキャビン」を採用している。従来型キャブより空気抵抗係数を9%改善したもので、燃料電池トラックには初搭載だ。
eアクトロス600ではeアクスルも自社開発しており、電動モーターに2段の後退ギアを含む4段トランスミッションを組み合わせている。このeアクスルもNextGenH2と共通化されたため、高度なドライブエクスペリエンスはeアクトロス600譲りとなる。
高トルクでダイナミックな駆動系、スムーズなハンドリング、車内外の静粛性などは、水素をエネルギー源とする電気自動車である燃料電池トラックでも最大限に享受できる。出力は、エコノミーモードでは最大340kW(約460hp)、パワーモードでは最大370kW(約500hp)で、急勾配や高積載といった過酷な運転環境でも力を発揮する。
走行用の高電圧バッテリーパックもダイムラー・トラックが(BEVトラック用に)開発している101kWh容量のリン酸鉄リチウム(LFP)電池だ。バッテリーは燃料電池が発電した電力のバッファーとして機能するとともに、回生したエネルギーを貯蔵するのにも使われる。
エネルギー回生は下り坂や制動時に余分な慣性エネルギーを電気に変換しバッテリーに戻す仕組みで、効率的な回生により全体の航続距離が延び、水素の消費を抑えることができる。
高電圧コンポーネントとE/E(電子・電気)アーキテクチャもeアクトロス600を踏襲する。そのため、アクティブ・ブレーキ・アシスト6などの最新型の安全システムを備えるほか、現行のサイバーセキュリティ基準にも準拠するなど、成熟した実用的な成り立ちである。
顧客からのフィードバックで使い勝手を向上
第1世代のGenH2による顧客トライアルは、ダイムラーの開発チームにも貴重なフィードバックをもたらしている。これはNextGenH2トラックでの改善に直接的な影響を与えたといい、ユーザー目線での使い勝手を向上した。
キャブの後ろに配置する「テックタワー」の省スペース化はその代表例だという。テックタワーは液体水素を扱う場合に必須となる冷却系の装置などを収めたものだが、このエリアが大幅にコンパクトになった。
その結果、ホイールベースは従来型より150mm短縮され4000mmとなった。これくらいのホイールベースだと、様々なトレーラと組み合わせた時に連結全長をEUの規制内に収めることができるので、多くのトレーラとの互換性が確保され、運送会社にとって柔軟な運行が可能になる。
(余談だが、トレーラの互換性はBEVトラックで問題になっており、一部のメーカーでは大容量バッテリーを搭載するスペースを確保するためBEVのホイールベースがかなり長くなっている)
テックタワーはボイルオフ(気化ガス)管理システムなど水素を扱う場合の規制要件にも適合しており、これには閉鎖空間への駐車時の要件なども含まれている。統合された冷却システムは、外気温が非常に高い時や過酷な地形でも常に安定して作動することを保証するものだ。
極めてまれなことではあるが、水素の漏れを検知する新しいセンサーシステムが搭載され、ドライバーはキャブ内のベッドでオーバーナイトすることが可能になった。これで車中泊をしながら複数日に渡る運行を行なう長距離ドライバーも、燃料電池トラックを運行できるようになる。
さらに、新設計の装備として追加されたのがクラッシュエレメントを一体化したサイドパネルだ。側面衝突などの事故発生時に液体水素タンクを守るためのものだが、パネルには空力特性を向上したトレッドプレートが取り付けられており、安全性を向上しながらタンクへのアクセス性を確保し、同時に空気抵抗も低減するという実用的なアイテムとなっている。
ドイツ政府も資金提供
なお、ダイムラー・トラックは2025年にスイスアルプスでNextGenH2のプロトタイプを試験しており、その様子は一部公開されている。
アルプスの極限環境下で行なった冬季・夏季の試験は、厳しい運用シナリオでの信頼性を確保するためで、得られた知見は今後の開発に反映する。
2026年末以降を予定しているNextGenH2の実践配備は、開発・製造とともにドイツ連邦運輸省と同国のラインラント=プファルツ州、バーデン=ヴュルテンベルク州が支援しており、総額2億2600万ユーロ(約415億円)の資金が提供されている。
ダイムラーは2030年代初頭にも燃料電池トラックの大量生産を始めることを目標としている。
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