2021年11月、小型SUVのロッキー/ライズに「e-SMART」搭載のハイブリッド車が追加設定されました。この「e-SMART」は、日産の「e-POWER」と同じシリーズハイブリッド方式ですが、両者にはどんな違いがあるのでしょうか。日産e-POWERは、車種や世代によってスペックが違うので、今回はロッキーと車格の近い「ノート」との違いを考えていきます。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:ダイハツ、日産 イラスト:著者作成
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エンジンで発電した電力でモーター走行するシリーズ方式
ハイブリッドシステムは、エンジンとモーターの合成方法によって、シリーズハイブリッド、パラレルハイブリッド、シリーズ・パラレルの3方式に分類されます。
・シリーズ方式
エンジンは発電専用で、充電したバッテリーの電力でモーター走行する方式。エンジンを効率のいい条件で定点運転できるが、バッテリーEVと同様、高速域で効率が低下する(日産「e-POWER」、ダイハツ「e-SMART」など)
・パラレル方式
エンジンとモーターを駆動力として使い分けるが、エンジンが主役でモーターは補助的な役割。シンプルな構成で比較的低コストなので、主としてマイルドハイブリッドとして採用される(ホンダ「IMA」、スズキ「S-エネチャージ」など)
・シリーズ・パラレル(シリパラ)方式
シリーズ方式とパラレル方式の「いいとこ取り」のシステム。エンジンの出力を発電用と駆動用に使い分け、エンジンとモーターの駆動力を合成して走行。効率は高いが、システムが複雑で高コスト(トヨタ「THS-II」、ホンダ「e:HEV」など)
シリーズ方式は、3つのハイブリッドシステムの中で、最もモーターを活用する、バッテリーEVに近いシステムです。バッテリーEVのような走行フィールが楽しめますが、比較的大きなモーターとバッテリーが必要となります。
ハイブリッドには、シリーズ、パラレル、シリーズ・パラレルの3方式ある。それぞれにメリット/デメリットがあり、クルマの車格や用途などで使い分けられる(イラスト:著者作成)
決定的な違いは、バッテリー容量の大きさ
ダイハツ「e-SMART」と日産「e-POWER」のの構成は、ほぼ同じ。発電用エンジン、発電用・駆動用の2つのモーター、リチウムイオンバッテリー、トランスアクスル、PCU(パワーコントロールユニット)から成ります。スペックの違いは、次の通りです。
・発電用エンジン
両システムとも、1.2L直列3気筒エンジン
・モーター
最高出力/最大トルクは、ノートe-POWERの85kW/280Nm に対して、ロッキーe-SMARTは78kW/170Nmと、トルクの小さい比較的小型のモーターを搭載
・リチウムイオン電池
ロッキーe-SMARTのバッテリー容量0.73kWは、ノートe-POWERのバッテリー容量1.5kWの約半分
・WLTCモード燃費
ロッキーの28.0km/Lに対して、ノートは29.5km/L(車重は、ノートの方が約150kg重い)
同じシリーズハイブリッドですが、決定的な違いは、ロッキーe-SMARTのバッテリー容量が、ノートe-POWERの約半分、モーターのトルクが約40%小さいことです。これらが、2つのハイブリッドの特性の違いの要因となっています。
バッテリーEVに近い日産e-POWER
日産は、ノートe-POWER発売の当初から、e-POWERをハイブリッドと呼ばず、「電気自動車の新しい形」として訴求しています。シリーズハイブリッドそのものは、目新しいものではありませんが、バッテリーEVを推進する日産らしい最新の技術と制御を組み合わせたシステムです。
e-POWERでは、大きなモーターとバッテリーを搭載して、エンジンで発電した電力をいったん大容量のバッテリーに蓄え、その電力でモーター走行します。エンジンは、基本的には車速とは無関係にエンジンの効率のいい2000rpmと2400rpmで定点運転するので、燃費向上に有利です。
またバッテリー容量が大きいので、通常の街乗りではエンジンの起動回数が少なく、その分、燃費向上と静粛性に優れた力強い走行が楽しめます。
一方で、大きなモーターとバッテリーが必要なのでコストが高くなる、バッテリーEVと同じように高速運転で燃費が悪化しやすいという課題があります。
ノートは、2016年のマイナーチェンジでe-POWERのハイブリッドモデルを追加で設定。2020年の3代目ノートから、e-POWER専用モデルとなる
エンジンが主役のダイハツe-SMART
ダイハツのe-SMARTに関しては、「なぜトヨタのTHS-IIを採用しないのか」と疑問に思った方は多いでしょう。トヨタとシステムを共用化すれば、コスト低減を図ることが可能なのに、ダイハツは、なぜシリーズハイブリッドを選択したのでしょうか。
その背景には、ダイハツの将来を見据えた電動化戦略があります。電動化で後れを取っているダイハツにとっては、小型車だけでなく、軽自動車への展開も可能な小型の低コストハイブリッドシステムが必要。THS-IIは効率に優れますが、機構が複雑でコストがかかりますし、かといって、簡易なパラレルハイブリッドでは、燃費改善効果が物足りない。ダイハツが得意とする軽量の小型車にはシリーズハイブリッドが適していると考えたのです。
しかしながら、日産e-POWERのような大容量のバッテリーを搭載したシステムではコストがかかるので、e-POWERの半分程度のバッテリー容量とし、エンジンの起動頻度が上がり、静粛性と燃費向上代の低下については、SUVでもあることから、ある程度割り切る判断をしたと思われます。実際のところ、ロッキーは車速が40km/hを超えるとかなりの頻度でエンジンが起動します。
2019年に22ヶ月ぶりに小型クロスオーバーSUVとして復活。そして、2021年11月にe-SMARTハイブリッドモデルを追加で投入。トヨタのライズは、基本性能やデザインがほとんど同じ姉妹車
◆ ◆ ◆
この両者の違いは、小型車が多いダイハツと、上級モデルも抱える日産、というメーカーの違いによるもので、どちらが技術的に優れている、というものではありません。どちらも、容易にバッテリーEVに変更できるシリーズハイブリッドの将来性を見据えた、素晴らしいシステムです。
前述したように、ダイハツは将来的に、軽自動車のような小型車に展開できるよう、超コンパクトなサイズでe-SMART ハイブリッドを作りました。対する日産も、コンパクトカーよりも大きなミニバンやSUVに対応する、パワフルなe-POWERを開発中です。両社ともに、今後の横展開が楽しみです。
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みんなのコメント
日産はEV、ダイハツスズキはシリーズHVと言う選択肢をって事なんじゃ。
システムも車としても
現時点では日産の方が数段上ですね!