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スーパーGT分析|雨上がりの中、“スリック優位”になるのがGT300より遅かったGT500。その要因は何なのか? 両クラスのエンジニアに聞く

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スーパーGT分析|雨上がりの中、“スリック優位”になるのがGT300より遅かったGT500。その要因は何なのか? 両クラスのエンジニアに聞く

 富士スピードウェイで行なわれたスーパーGT第4戦は、100周のレースの中で路面状況が幾度となく変わる実にトリッキーなレースとなり、それがレース展開を大きく左右した。

 まずスタート前に降ったスコールのようなにわか雨により、レースはウエットコンディションでスタート。しかし10周ほどで路面は乾いていき、各車ドライタイヤに交換してレースは進行していった。

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 しかし、レースも残り30周と少しというタイミングで25号車HOPPY Schatz GR Supra GTの車両火災により赤旗中断になると、中断中にまたもバケツをひっくり返したような激しい雨がサーキットをびしょ濡れにした。これにより再びウエットコンディションとなり、72周目からレースが再開した。

 ここから路面はまた乾いていく方向になったが、その後のレース展開はGT500クラスとGT300クラスで異なるものとなった。

 まずGT300は、レースが20周以上残っているタイミングで18号車UPGARAGE NSX GT3がドライタイヤに交換するギャンブル。ただこの段階では水しぶきが上がるほどには路面が濡れており、ギャンブルは大失敗。しかし残り10周が近付いてくる頃にはドライタイヤ勢のペースが急激に向上していき、優勝を争う上位陣までもドライタイヤへの交換に踏み切っていった。

■GT300の終盤レースペース

 以下のグラフは、真っ先にドライタイヤ交換のギャンブルに踏み切った18号車UPGARAGE(黄色)、そして優勝争いを展開していた11号車GAINER TANAX GT-R(黒色)、4号車グッドスマイル 初音ミク AMG(緑色)、そしてウエットタイヤのまま走り切る選択をした61号車SUBARU BRZ R&D SPORT(青色)の赤旗再開後のレースペースをグラフ化したものだ。

 かなり早い段階でピットインした18号車(赤丸1の部分)はその後ペースが上がらずにいたが、80周目を超えたあたりから急激にペースアップ。そのタイミングで11号車もピットインしてタイムを上げている(赤丸2の部分)。完全にウエットタイヤとドライタイヤの勢力図は逆転し、ステイアウトしトップに立っていた61号車スバルは、後ろから1周10秒近く速いペースで迫る11号車になす術なく、残り3周で首位陥落した。

 一方、GT500クラスに関しては同様の展開とはならなかった。下位を走る数台がドライタイヤへの交換に踏み切ったものの、上位陣を脅かすほどのパフォーマンスを発揮することはなかったのだ。

■GT500の終盤レースペース

 以下のグラフでは、GT500クラス優勝の3号車Niterra MOTUL Z(赤色)と2番手フィニッシュ(黒色/ペナルティで3位降格)の16号車ARTA MUGEN NSX-GT、そしてドライタイヤ交換のギャンブルに出た14号車ENEOS X PRIME GR Supra(オレンジ色)、1号車MARELLI IMPUL Z(青色)のレースペース推移を示している。

 レース再開直後はミシュランタイヤを履くトップの3号車が驚異的なペースでリードを築いていく中(赤丸1の部分)、GT300のトラフィックにかかりはじめ各車のペースが落ちていた80周過ぎあたりから14号車、1号車がピットインしてタイヤ交換。90周目ごろにはようやく、ステイアウトする上位陣と同等のタイムが出るようになったが(赤丸2の部分)、上位陣に対してアドバンテージを築き始めたタイミング(赤丸3の部分)でチェッカーとなった。

■GT500とGT300でなぜ傾向が異なったのか?

 結果的にGT300クラスはドライタイヤに交換したチームが上位を占めた一方、GT500クラスはドライタイヤを履いたとしても、タイヤ交換によるタイムロスなどを相殺できないという展開となった。全車が同じ路面状況で走っている中で、クラス毎に傾向が異なったことにはどんな要因があるのか? スーパーGTを戦うエンジニアたちに聞いた。

 まずGT500のエンジニアからは、GT500とGT300の車重やサスペンション設定の違い、運転支援システムの有無などが関係しているのではないかという声が聞かれた。

 GT300の車両は軒並みGT500車両よりも重く、そのことでタイヤに荷重をかけやすい。つまりタイヤを温めやすいということが考えられる。またサスペンション設定もGT300の方が柔らかく、雨にも対応しやすい。そしてGT500にはないABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やトラクションコントロールを備えていることで、トリッキーなコンディションでも走らせやすくなっているのだ。

 また、近年はレースウィークにおけるタイヤの持ち込みセット数が減らされている中で、GT500の各チームは今回のような真夏のレースに、雨上がりの低温コンディションでも作動するような、いわゆる“ソフト系”のドライタイヤを持ち込めていなかったのでは……そういった意見もあった。

 一方、ドライタイヤに交換する作戦でGT300クラスを制した11号車GAINERのチーフエンジニア、福田洋介氏は、GT500車両より重心が高いという日産GT-R NISMO GT3の特性も今回の結果に繋がったのではないかと分析する。

「GT500の方がダウンフォースがあるので早めに(ドライタイヤで)いけそうな気がしますが、GT-Rは重心が高いので、面圧(タイヤの接地圧)がかかりやすいんです。重心の高さが不利に働くこともありますが、こういったコンディションの悪い時に有利になる、ということもあります」

「重心が低いと慣性モーメントが横にスライドする方向にいってしまうので、タイヤがグリップしない路面ミュー(摩擦係数)の時は滑ってしまいます」

「GT500はダウンフォースありきの車両で重心が低いですが、タイヤ的にはどうなんでしょうね……。スピードが出ているところは良いんでしょうけど、(低速の)セクター3での影響を考えると、GT300の重心が高いクルマの方が(ラップタイムの逆転が)起きやすいのではないかと思います」

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