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アウトランダー連続盗難事件が欧州で発生! 日系メーカーの携帯ゲーム機に似た形状の盗難ツールとは一体!?

 今年、欧州では先代アウトランダーが連続して盗難する事件が発生している。犯人グループが犯行の際に使用していたのは、ひと昔前のポータブルゲーム機である任天堂ゲームボーイカラーのようなものを盗難用ツールとして使用していたという。なぜ、先代アウトランダーが盗難ターゲットになったのか、その背景を追った。

文/桃田健史、写真/ベストカー編集部、三菱、AdobeStock

通報しました! CANインベーダー コードグラバー… 海外サイトで買える!? 自動車盗難最新事情と「撲滅に向けてやるべきこと」

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■英国で発生したアウトランダーの連続盗難事件について地元警察が情報公開

 英国中部に位置するウエストヨークシャー州で、2021年5月から7月にかけて30台もの三菱アウトランダーが盗難に遭った。同州の警察本部が2021年10月4日に詳しい情報を同本部のホームページで公開している。

環境意識の高まりにより元祖電動車であるアウトランダーPHEVの市場人気は高い。ただ、元祖ゆえ、最新車両に比べ脆弱なセキュリティであることが盗難のターゲットになってしまったようだ

 それによると、逮捕されたのはディラン・アーマー容疑者(29歳)が率いる3人組。その手口は「ハイテク・ガジェット(道具)」を使った車両のセキュリティシステムへのトリック(違法行為)だ。

 キーレスシステムを違法に操作し、ドアを開錠してパワートレーンをスタートさせてそのまま逃走した。被害総額は18万ポンド(1ポンド=155円換算で2790万円)に及ぶ。

■「ハイテク・ガジェット」の筐体が日系メーカーのゲーム機に酷似!?

 この「ハイテク・ガジェット」とウエストヨークシャー警察本部が称するものは、外観は任天堂のゲームボーイカラーのように見える。その表面には大きく「SUP」という白地ロゴが描かれている。あくまでもゲームボーイの外部部分だけを用いて、内部には専用の基盤などが組み込まれていた可能性が高い。各種報道では中国製の海賊版ゲームボーイの改造品という情報もある。

 ウエストヨークシャー州警察本部によると、アーマー容疑者らによる「ハイテク・ガジェット」の購入価格は2万ポンド(約310万円)だという。同警察本部は、一連の盗難事案についてアーマー容疑者らが「ハイテク・ガジェット」を使用したのはこの3カ月間が初めてであるとしている。

鍵穴に異物を突っ込んで解錠、コード配線から直結でエンジンを始動させ、盗む手口は過去の話。キーレスの発達以降は、電波を悪用しクルマを損壊せず盗難可能な世の中を生み出してしまった

 盗難の様子について、同警察本部はYouTubeで動画も公開している。紹介された事案では、まず防犯カメラの映像がある。この時の盗難場所は、建物が集合住宅に隣接する屋外駐車場のように見える。車両は車幅に対して左右1m弱の狭いところに、車両前方から駐車してある。

■犯人グループが盗難に要した時間はわずか1分……これでは防ぎようがない

 犯人グループはまず、建物壁に設置された普通充電器のプラグを車両右側後部から抜いている様子が確認できる。つまり、車両はアウトランダーPHEVである。次にドアに近づくと、ヘッドライトが点滅してドアが開錠され、車内に入った。変速機をリバースに入れて、後方に止めてある日産ジュークをうまく避けて逃走した。

通常充電でも深夜まで待てば、ある程度車載電池に充電されているだろう。窃盗団にしてみればバッテリーによるEVモードで音もなく、車両を持ち去ることも可能となってしまう訳だ

 盗難に要した時間は1分以内だという。そのほか、犯人グループがスマートフォンと思われる機器で撮影した映像では、違法にパワーユニットがオンになった様子と、それに対して歓喜する犯人たちの声が録音されていた。

 一部報道では、一連の盗難行為で盗まれたされた車両がすべてアウトランダーPHEVのように表現されているが、ウエストヨークシャー警察本部の発表では、三菱アウトランダーのみの表記だ。

 英国で発売されているアウトランダーぺトロール(2Lガソリン車)とPHEVの双方が今回の盗難被害の対象車なのかについては、筆者として本稿執筆時点では最終的な確認ができていない。

■環境意識の高まりに乗じて中古車でも人気のアウトランダーを盗難の標的に?

 では、なぜアウトランダーが盗難の標的になったのか。その理由について確かめるのは難しいのだが、端的に言って、人気があるので盗難車を流す闇ルートで転売しやすいのだと思う。

 特にアウトランダーPHEVは、英国を含めて欧州各国の政府が進めるカーボンニュートラルを目指す電動化戦略のなかで、中古車市場での価値も安定している。

今回盗難されたアウトランダーがPHEVのみなのかガソリン仕様も含まれるのかは定かではない。しかし、長年販売されたモデルのため、搭載されるセキュリティの甘さを突かれた感は否めない

 そもそも、アウトランダーPHEVは2010年代前半に登場した後、欧州市場では一時、「カンパニーカー」として大人気となった。カンパニーカーとは、企業の幹部が会社から通勤が普段使いのために長期間貸与される制度で、就業契約のなかに組み込まれる項目である。

 筆者は、2010年代半ばに当時の三菱自動車の欧州支社関係者と欧州内で会食した際、アウトランダーPHEV人気の理由について「国や地方自治体による各種補助金制度なども併用すると、企業としての車両維持費をかなり抑えることができるからだ」と説明していた。

 また、時計の針を少し戻すと、アウトランダーPHEVのセキュリティシステムについては、過去に社外から指摘があった。英国のセキュリティコンサルティング企業の「ペン・テスト・パートナーズ」が2016年6月、スマートフォンのアプリをWi-Fiで利用する場合、盗難の警報を解除する機能などをハッキングできることを、英国BBC放送を通じて紹介している。

 この件と今回の盗難事案が具体的にどのように関係しているかについては、ウエストヨークシャー警察本部は公開した資料のなかでは触れていない。

■盗難の手口もハイテク化! 対抗する術はないのか?

 では、ハッキング撲滅は可能なのか? 日本でも近年、高級車を対象として「CANインベーダー」という、ECU(車載コンピュータ)同士をつなぐ通信プロトコルを経由して車載システムに侵入するケースが目立つようになっている。そのほかに、スマートキーの微弱電波を増幅させる「リレーアタック」と呼ばれる手法がある。

リレーアタックやCANインベーダーの「手口」をイラスト化したもの。防ぐにはハンドルロックやタイヤロックなど、物理的な拘束しか確実な防衛策がない

 一般的に公開されている盗難手口から今回の事案を考察すると、3人組という点や、CANインベーダー使用時に行われるとされているフロントバンパー付近での作業する様子が見当たらないこと、また盗難場所が低層の集合住宅に見えることなどから、断定はできないがリレーアタックによる犯行の可能性が高いのではないだろうか。

 こうしたクルマのサイバーセキュリティへの対応については近年、世界的に「オートモーティブ・ISAC(インフォメーション・シェアリング・アンド・アナリシス・センター)」と呼ばれる業界団体の活動が強化されている。

■サイバーセキュリティへの取組みが遅れているクルマ業界の対応は急務だ!

 日本でも、日本自動車工業会が2017年にワーキンググループを発足させ、2021年2月に「一般社団法人ジャパン・オートモーティブISAC」として独立したばかりだ。同年10月29日時点で自動車メーカー、自動車部品メーカー、電機機器メーカーなど97社が参加している。

 筆者はこれまで、国内外でサイバーセキュリティに関する各種シンポジウムを取材してきたが、電機やITの業界関係者からは「我々と比べて自動車産業ではISACという考え方の導入が遅れた」という指摘をよく聞いた。

セキュリティシステムも日々進化しているが、合わせて盗難の技術もまた進化してしまう。常日頃より盗難に対する意識を高め、自衛策を講じるしか現状確実な防衛策はないと考えるべきだ

 そのうえで、日本を含めたオートモーティブISACでは、サイバー攻撃に対するシステム側の脆弱性の情報の収集と解析を行い、対策や新規開発等に向けて、メーカーの垣根を超えた情報共有を進めている。

 そうしたなかでは当然、今回の英国ウエストヨークシャー州での盗難事例についても日本で詳しい調査と分析がすでに行われているはずだ。

 ハッカーとの熾烈な戦いが今後、さらに厳しさを増すことが予想されるが、日本でのオートモーティブISACの活動に期待したい。

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