2020年3月の車名別販売台数を見ると、トヨタプリウスは、8020台を記録している。新型ヤリスや新型フィットがデビューした翌月だから、ランキングこそ、12位と下がっているものの、現行型の登場は2015年12月のこと。5年目を迎えたミドルクラスハッチバックとしては、立派な数字だろう。
いっぽう、そのプリウスの対抗馬として企画され、かつてハイブリッドカーの覇権を争ったホンダのインサイトはどうかというと、同じく2020年3月の販売台数は、531台に過ぎない。新車販売台数を比較すると、10倍以上の差が開いている。どうして、こうなってしまったのか。この両車に、これほどの「差」があったのか。思い起こせば、この2台の対決が始まったのは、約20年前。両車の軌跡をたどることで、この「差」ができた理由と事情を調べてみたい。
激戦必至!! ハリアー対エクストレイル 日本SUV界頂上決戦の行方を占う
文:片岡英明、写真:トヨタ自動車、本田技研工業
【画像ギャラリー】プリウスVSインサイトの歴史を振り返る
省燃費競争が生んだ未来のクルマ
1990年代後半から省燃費技術の開発競争が盛んになった。
最初にハイブリッドカーの実用化に成功したのはトヨタで、1997年12月に世界初の量産ハイブリッドカー、プリウスを発売している。
1.5Lのアトキンソンサイクル4気筒に電気モーターを組み合わせたTHSは、トヨタ独自のストロングハイブリッドシステムだ。駆動用と発電用、2つのモーターを搭載したシリーズ・パラレル式ハイブリッドシステムで、モーター走行のときでも発電できる。
世界初の量産ハイブリッドカーとして、1997年に登場した初代トヨタ プリウス。トヨタ独自開発のシリーズ・パラレル式ハイブリッドシステムを採用した
ホンダは、1999年9月に、個性派ハイブリッドカーのインサイトを発表し、販売した。こちらは、IMAと名付けたパラレル式ハイブリッドシステムだ。1Lの直列3気筒SOHC・VTECリーンバーンエンジンで、モーターは、補助的な役割である。
トランスミッションは、無段変速のCVTに加え、5速MTを設定した。10・15モード燃費は、プリウスが28km/Lだったのに対し、インサイトは35km/Lだ。最終モデルでは燃費を36km/Lまで伸ばしている。
インサイトは、アルミ合金を多用し、820kgの車重を実現した。空力性能も当時の量産車としては、世界トップレベルだ。トヨタとは違う手法で、CO2削減に挑んだが、販売は伸び悩んでいる。プリウスは、2代目にバトンタッチするまでに累計販売台数は12万台を超えていた。
これに対し、インサイトは、1万7000台余りにとどまっている。2人乗りのクーペだったし、デザインもクセが強かったのが、インサイトの販売が低迷した理由だ。販売価格は、ほとんど同じだから、多くの人はプリウスを選んでいる。
1999年に投入したホンダ インサイトは、ホンダの個性が光るハイブリッドカーだ。ハイブリッドシステムもトヨタと異なるパラレル式を採用。2名乗員のクーペであった
海外セレブも魅了した2代目プリウス
プリウスは、2003年9月に初めてのモデルチェンジを行い、4ドアセダンから5ドアハッチバックに生まれ変わった。全幅も1700mmを超えて、3ナンバー車になる。ハイブリッドシステムは、THS-IIに進化し、燃費を向上させた。新たに「EVモード」を加え、世界初のインテリジェントパーキングアシストも設定する。
2代目プリウスは海外でも高く評価され、環境保護に高い関心を持つハリウッドの俳優や高名な学者などもオーナーになった。北米とヨーロッパの両方で、カー・オブ・ザ・イヤーに輝き、世界中に知られるようになる。
日本では目立つ存在ではなかったが、2008年に7万3000台余りを販売し、一気にブレイク。サブプライムローン問題の影響で、ガソリン価格が高騰したこともあり、モデル末期ながら人気が高まったのである。
2003年登場の2代目トヨタ プリウス。環境問題の高まりから、海外セレブにも愛用されるなど、新生代のスタンダードとしての不動の地位を築くことになる
インサイトは2006年に生産を終了し、それ以降は、シビックハイブリッドが代わりを務めていた。だが、2009年2月に2代目が5人乗りの5ドアハッチバックで登場する。1.3Lエンジンに14psを発生するモーターを組み合わせ、10・15モード燃費は30km/Lの大台に乗った。最初の半年は、月に7000台前後の販売と好調な滑り出しを見せている。
約3年のブランクの後、復活を果たした2代目ホンダ インサイト。初代と異なり、5ドアスタイルの実用車へと転身した
絶対王者となったプリウスに大敗を期したインサイト
その3カ月後、累計販売台数100万台の偉業を達成したプリウスの3代目が、ベールを脱いだ。ファンの期待は大きく、正式発表を前に、なんと8万台ものオーダーが舞い込んだのである。
技術的なハイライトは、エンジンを1.8Lに拡大し、モーターの力を増幅するリダクション機構を採用したことだ。10・15モード燃費は38km/Lを達成し、ホンダを驚かせた。
エコカーとして、大きな支持層を獲得したプリウス。2009年の3代目登場では、8万台の予約注文を抱えるほどに。
2009年、プリウスはエコカー補助金やグリーン税制の援護もあり、20万8876台を販売して、ベストセラーカーに輝いている。インサイトも、9万3283台を売ったが、2010年は3万8000台ほどに減少。これ以降はジリ貧となり、販売を大きく落ち込ませた。結果、2014年春に生産を終了した。
インサイトが不発に終わったのは、プリウスより街中の燃費が悪いことに加え、窮屈なパッケージングと安全装備の煮詰めが甘かったからである。挙動安定制御システムの非装着車があるなど、プリウスより割高に感じた。
これに対しプリウスは、モデル末期まで好調をキープして、カローラに代わる国民車へと成長を遂げている。2009年6月から2010年12月まで、19カ月連続して新車販売台数トップに君臨し、2010年は販売台数を31万5000台以上に伸ばした。2011年と12年も販売は年間トップだ。2013年は、同じトヨタの安価なハイブリッドカー「アクア」に僅差で首位の座を奪われたが、その差は1万台もなかった。
新たなライバル登場も見事な巻き返したプリウス
リーマンショックの後に落ち着きを見せたガソリン価格が、再び高騰に転じ、ユーザーが燃費にこだわったことも、プリウスの好調な販売を後押ししたと言えるだろう。燃費のいいクルマに乗り、環境負荷を減らしているという美意識と優越感が得られる。これは、プリウスの魅力のひとつだ。だからその後も、アクアに続く販売2位の座を守り続けた。
続いてプリウスがフルモデルチェンジするのは、2015年12月だった。4代目は3代目のキープコンセプトだが、大幅に商品性を高めて登場、アクアから販売台数首位を奪還する狙いがあった。
新世代のTNGAプラットフォームの採用によって走りの実力は大幅に高められ、乗り心地もよくなっている。自慢の燃費性能にも磨きをかけ、厳しくなったJC08モードで40km/Lを超える燃費を叩き出した。
2016年にはベストセラーカーに返り咲き、前年の2倍近い販売台数を記録している。2017年もトップの座を守った。2018年はe-POWERを投入した日産のノートとアクアに負け、3番手となっている。
3代目ほど販売台数が伸びず、飽きられるのも早かったのは、斬新すぎるデザインが一因だったようだ。そこで2018年の末に内外装のデザインを変更した。この軌道修正が功を奏し、2019年には販売台数トップの座を奪い返すことに成功するのである。
2015年登場の4代目トヨタ プリウスは、新たなクルマ作りとなるTNGAが話題を呼ぶ一方で、個性的なスタイルが賛否を呼んだ
インサイトの復活で反撃を狙うも……
プリウスがマイチェンした2018年12月、インサイトは復活を遂げ、反撃に転じた。3代目は4ドアセダンになり、ボディも3ナンバーサイズ化。ハイブリッドシステムは、i-MMDと呼ぶ2モーター式のスポーツハイブリッドに進化させている。これは、熱効率40%を超える1.5Lの直列4気筒DOHC・i-VTECエンジンに、駆動用と発電用の2つのモーターを組み合わせたシリーズハイブリッドだ。
素直な乗り味の大人のハイブリッド車に仕立てられているが、販売は低迷している。2020年2月の新車販売台数は、プリウスが6240台であるのに対し、インサイトは、わずかに361台と大差をつけられた。デザインは凡庸だし、全幅も1820mmだから駐車などで持て余す。四方の視界は今一歩だし、後席もそれほど広くない。価格も332万円からと、先代と比べると割高な印象だ。ファンの多くは、高価で大柄なインサイドを望んでいなかったのである。
3代ともインサイトはプリウスに完敗した。「つまずき」の理由は、いくつか考えられる。ひとつは、パッケージングのまずさと分かりにくいデザインだ。もうひとつは、ハイブリッドシステムの燃費で、2代目からはプリウスに引き離された。装備や燃費などを加味すると、買い得感の薄い価格設定も、足を引っ張っている。
とくに最新のインサイトは、日本の熱狂的なホンダファンが欲しがるエコカーではない。海外より厳しい目を持つ日本のユーザーが欲しくなる、魅力的なデザインとサイズのハイブリッド車を生み出さないと、ホンダに愛想をつかす人が増えていくはずだ。これが中途半端だと、多くの人は「神話」を持っているプリウスを選ぶし、ホンダ好きはフィットを選ぶ。Cセグメントのハイブリッド正統派モデルに、ヒット作が出ない限り、ホンダの春は遠い。
再び復活を果たし、2018年に登場した3代目ホンダ インサイト。上級ハイブリッドカー路線を目指し、プリウスに挑むも、大敗を期している
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みんなのコメント
デザインは良いんだけど、名前は引き継ぐ必要なかったように思う。
この辺の戦略がどのメーカーも探り探りでうまくいかないね。
名前という知名度に頼らざるを得ないってことかな。
どちらかというとカムリだけど、アコードとぶつかるだろうから、インサイトの相手はいないんじゃい?