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「70周年の節目に新たな挑戦を」ヤマハがフォーミュラEで戦う理由。開発は課題直面も「学びは大きい」

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「70周年の節目に新たな挑戦を」ヤマハがフォーミュラEで戦う理由。開発は課題直面も「学びは大きい」

 5月17日(土)、東京・有明の東京ビッグサイト周辺で行われている2024/25年フォーミュラE第8戦東京E-Prixにて、ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームが記者会見を実施し、その後囲み取材に対応。フォーミュラE参戦の理由や、パワートレイン開発における難しさを語った。

 ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームは、2024年の東京E-Prixにてシリーズ参入を発表。今季からレース参戦を開始し、第5戦マイアミE-Prixでは初の表彰台獲得を果たした。さらに4月には、2026/27年以降の参戦継続決定をアナウンスしている。

バンドーンが語る今季フォーミュラEの難しさと東京大会の戦い方。元チームメイトの野尻にも連絡


●初のFE母国レースは新章の幕開け「我々のF1参戦は相当昔の話」

 会見にはローラ・カーズからティル・ベヒトルスハイマー会長とマーク・プレストン(モータースポーツディレクター)、ヤマハからは常務執行役員の丸山平二取締役と、執行役員の青田元経営戦略本部長(CSO)、ABT(アプト)からはトーマス・ビアマイヤーチーム代表が登壇。

 会見の中で丸山取締役は、改めてヤマハがフォーミュラEに参入した理由について触れ、「新しい領域へのチャレンジを、ファンの皆さんに楽しんでいただきたい」と語った。

「当社は1955年に創設され、2025年でちょうど70周年を迎えます。その節目の年に、サステナブルなフォーミュラEのホームレースを戦うことができるというのは、非常にチャレンジングなことだと感じています」

「ヤマハはこれまで、数々のレースにチャレンジしてきましたし、現在も、2輪の最高峰MotoGPに参戦を続けているとともに、大きなチャレンジングスピリットを持って活動しています」

「この精神はヤマハ発動機という会社にとって、非常に大事な資産であり、ヤマハブランドのルーツです。70周年という節目のステップを踏みながら、サステナブルなレースシーンに挑戦するという、新しい領域へのチャレンジを、ファンの皆さんに楽しんでいただきたいと思っています」

 丸山取締役の言葉にもあるように、ヤマハがこれまで注力してきたのは、MotoGPをはじめとした2輪のレース。4輪レースへの挑戦は、90年代のF1挑戦などの歴史はあるものの、フォーミュラEに挑む際には、2輪で培った技術をどのように活かすことができるのか、悩みも生じたのだという。

 会見で青田CSOは、「たしかに、わが社にはF1マシンも展示してありますし、4輪レース自体も知らないものではない」と前置きしたうえで、フォーミュラE挑戦についての捉え方を話した。

「それでも、我々のF1参戦は相当昔の話ですので、今の4輪のレースについてはあまり知らない分野になります。それでも、(開発の取り組み方としては、2輪と)似たようなところを攻めていると感じています」

「具体的には、技術的にエネルギーをどうマネジメントしていくかという点において、近いものを感じています。あるいは我々がエレクトリフィケーション(電動化の意)という世の中の流れに、どのようにアプローチしていくか、という状況におけるひとつの取り組みとしても、このフォーミュラEプロジェクトを位置づけています」


●直面するソフトウェア開発の難しさ「制御項目が格段に増えている」

 さらに、囲み会見では丸山取締役が、エンジン開発と電動パワートレインの開発における違いに触れ、さらにはフォーミュラEで重要になるデジタル開発での課題や、シリーズが検討を進めているバッテリーの自由化についての意見を語った。

「これまで我々は、ハイパフォーマンスな内燃機関を作ってきたので、新しいエンジンを開発するにしても、感覚としてエンジンのサイズ感や出力を8割方イメージできます。その点、電動パワートレインにおいてはまだまだイメージが難しいのが現状です」

「例えば、モーターのサイズを小さくした方が、回転の上がりは良くなりますし、そのうえでトルクを出していきたい。それとも、モーターのサイズを上げてトルクフルなモーターに仕上げて、なおかつギア同士の摩擦で生じるエネルギーロスを省いた方が効率が良いのか」

「現状は、こうしたノウハウについてまだまだトライしている最中です。他社さんはすでにいろいろなトライを重ねているものですから、我々が得る電動パワートレイン開発の学びは、非常に大きい意味があると思います」

 また、モーターの開発だけでなく、パワートレインを制御するソフトウェアもフォーミュラEの重要な競争領域だ。このデジタル面における開発の難しさについても触れ、「考えていたよりも、はるかに高度な世界」だと語った。

「非常に複雑な制御を考えなければならないうえに、制御項目の数が10~20年前に比べると格段に増えています。それを、今までと同じように1個1個セッティングしていたら、膨大な時間とコストがかかってしまいます」

「ですので、省けるところは省かなければいけないのですが、逆にしっかり見ないといけない項目も増えていて、それぞれを見極めなければならない。そのメリハリをつけながら、しっかりと全体を圧縮できるかどうかがポイントであり、課題ですね」

 こうして、フォーミュラEに参戦を継続することで、電動パワートレイン開発とデジタル開発におけるノウハウの獲得を目指しているヤマハだが、シリーズではGEN5以降のマシンにおいて、バッテリーの開発自由化を検討しているという話が出ている。その点については、「フォーミュラEの取り組み方を考えなければいけない」とし、その理由を語った。

「開発要素が複雑になることで、レースが高度な戦いになって面白くなるというのは、非常にウエルカムなのですが、我々がこのシリーズにチャレンジしている最大の理由は、バッテリーがワンメイクだからであり、その前提があるからこそ、にエネルギーマネジメントの技術が求められます」

「ですので、バッテリーが競争領域になってしまうと、現在求めているノウハウの開発が薄れてしまいますので、フォーミュラEの取り組み方を考えなければいけないかもしれないですね」

 2026/27年以降の参戦継続をすでに発表しているヤマハ。このシーズンは、さらにパワーの増大するGEN4マシンが導入される予定となっており、ヤマハとしてもすでに開発をスタートしているという。このGEN4は、バッテリーがワンメイクである点において現行のGEN3 EVOの延長線上にあると言えるが、その後のGEN5でバッテリーが自由化されればその根底は変化するだろう。ヤマハにとって久々の4輪挑戦は、どのような未来を歩むことになるだろうか。

[オートスポーツweb 2025年05月17日]

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