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なにもかもが贅沢だ! アストンマーティン DBS スーパーレッジェーラ・ヴォランテ試乗記

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なにもかもが贅沢だ! アストンマーティン DBS スーパーレッジェーラ・ヴォランテ試乗記

「おおおおおお!!」

箱根の山道の登りでアクセルを床まで一瞬踏みつけたら、5.2リッターV型12気筒ツインターボ・エンジンが雷鳴のようなサウンドを発し、リア・タイヤがスキッドした。3速、ドライ路面なのに。絶句。いまどき、ドライバーをこんなかたちで脅す怪物があらわれるとは!? もちろん一瞬のことで、その後すぐにトラクション・コントロールが介入し、何事もなかったかのように加速を続けた。ドッキリするじゃんねえ。

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英国のサラブレッド・スポーツカー、アストンマーティンのグランド・ツーリング・カーのオープン・モデル、その名も「DBSスーパーレッジェーラ ヴォランテ」のステアリングを握りながら、筆者は思った。これぞイギリスの荒ぶる神の化身だ! イギリスの荒ぶる神……って聞いたことがないけど、この最高出力725ps、最大トルク900Nmのモンスターがそれだ。

【主要諸元】全長×全幅×全高:4715×1970×1295mm、ホイールベース2805mm、車両重量1863kg、乗車定員4名、エンジン5204ccV 型12気筒DOHCツインターボ(725ps/6500rpm、900Nm/5000rpm)、トランスミッション8AT、駆動方式RWD、タイヤサイズ、フロント265/35ZR21 リア305/30ZR21、価格3796万185円(OP含まず)。タイヤサイズはフロント265/35ZR21 リア305/30ZR21。ソフトトップはワンタッチの電動開閉式。トランスミッションは8AT。ギア・セレクターはスウィッチタイプ。もちろん幌は開けている。スイッチひとつの全自動で、開くのに14秒、閉めるのに16秒というスグレモノだから、開閉にためらう必要はない。空は青く澄みわたっていて、箱根山中の大気は、これが温暖化によるものだと考えると恐ろしいけれど、気持ちのよい程度に冷たくて、つまり、さほど寒くなくてたいへん気持ちイイ。オープン・カーには絶好の日和だ。シートとステアリングホイールのヒーターをオンにすれば、寒風のなか、ぬくぬくとしていられる。

フロント・ミドに搭載する5.2リッターV型12気筒ツインターボは、前述の725ps を6500rpmで、900Nmを1800~5000rpmで発生する。途轍もないパワー&トルクだ。高回転型にして、低速からトルクたっぷり。第一印象は羽のように軽くまわるエンジンである。

搭載するエンジンは5204ccV 型12気筒DOHCツインターボ(725ps/6500rpm、900Nm/5000rpm)。スーパーレッジェーラはイタリア語で「超軽量」を意味する。給油口はキャップレス・タイプ。最高速度は340km/h。ベースをおなじくするDB11用に較べると、DB11は608psと700Nmだから、それより117psと200Nmも上乗せしている。器は基本的にDB11のシャシーで、トレッドを前10mm、後ろ20mm広げ、最低地上高を5mm低めるなどしてジオメトリーを改良、前225/40、後ろ295/35の20インチから、前265/35、後ろ305/30の21インチという、ぶっとくて薄くて、でっかいサイズのタイヤに履き替えているとはいえ、全開時に生まれる大トルクを、リアだけでさばき切れるはずもない。

いや、そうではない。電子制御技術の発達したこんにち、エンジン・パワーを必要に応じて絞ればいいだけのことである。一瞬のスキッドはドライバーを楽しませるエンタテインメントなのだ。もしも何事も起きなかったら、725psも900Nmも単なるカタログの数字に過ぎなくなってしまう。日常にスリルをもたらす、観客参加型の演劇的空間、しかも自然を取り込んだ野外劇場! 実質、乗員ふたりのためのウルトラ贅沢な。

117psと200Nmもパワー&トルクが増えているのに、ファイナルのギア比はDB11の2.703:1から2.93:1へ、加速重視になっている。DB11のヴォランテはV8しか設定がないので、ここはクーペ同士でスペック上の乾燥重量を比較すると、DB11が乾燥重量1770kgなのに対して、DBSスーパーレッジェーラは1693kgへと80kg弱もの軽量化を達成している。これがイタリアのカロッツェリア、トゥーリングの代名詞であるスーパーレッジェーラ(superleggera=イタリア語で「超軽量」)を名乗る所以だ。

静止状態から100km/hに要する時間は3.6秒。メーターパネルはフルデジタル。ステアリング・ホイールはオーディオ用スウィッチ、パドルシフト付き。ちなみに、トゥーリング本来のスーパーレッジェーラ工法は、細い鋼管を組んで骨組みとし、それに薄い軽金属のパネルを貼り付けてボディをつくる。DBSスーパーレッジェーラは、アルミ押出材を接着剤でくっつけてプラットフォームとしているのはDB11と同じだけれど、DB11の外板がアルミなのに対して、DBSはカーボンを使っている。高いわけだよ、車両価格3796万185円。

スポーティだけどすこぶる快適ヴォランテは、幌の仕組みを搭載するなど、オープン化に対する対応をしているため、乾燥重量は1863kgと、クーペに較べて170kg重い。車検証の車両重量は2010kg。しかるに、その重さはまったく意識させない。途方もないパワーとトルク、ほぼ50:50の前後重量配分、ロック・トゥ・ロック2.27回転のステアリング(電動アシスト付き)等、絶妙なチューニングによるものだ。

ボディは全長×全幅×全高:4715×1970×1295mm。上質なレザーをたっぷり使ったインテリア。フロントシートはDBSのロゴ入り。フロントシートの電動調整スウィッチは、センターコンソール横にある。フロントセンターコンソールには大型の収納ボックス付き。リッドは電動開閉式。ストロークを縮めて排気量を6.0リッターから5.2リッターに縮小し、2基のターボチャージャーで武装したV型12気筒エンジンの回転フィーリングも、ドライバーが抱く軽さの感覚に大きな影響を与えている。カーボン製のプロペラシャフトも駆動系のスムーズさに貢献しているだろう。低速から、雷鳴を轟かせながら、ホイールベース2805mmのこの大型GTを、蝶のように軽く走らせる。

アクセルを深く踏み込むと、3000rpmからガオーッと一段と男性的な歌声を張り上げ、そこから回転が積み重なるに連れて、二重奏、三重奏のハーモニーとなって音量が増す。楽器はほとんど用いていない。勇ましい男声合唱団による、厚みのある咆哮。アクセルをオフにすると、ガボガボ、いかにも“ガソリン燃やしています”、というレーシング・エンジンさながらの音を発する。

駆動方式はRWD(後輪駆動)。パーキングブレーキは電動。スウィッチはメルセデス・ベンツのAクラスやBクラスなどとおなじデザイン。インテリアには、メルセデス・ベンツとおなじパーツが多数使われている。360°カメラも搭載。リアシートはセパレートタイプ。ラゲッジルームの広さは必要十分。専用ロゴ入りのアンブレラ付き。いわゆるドライブ・モードはGT、スポーツ(S)、スポーツ・プラス(S+)の3種類の設定があり、Sになると歌声がもちろん大きくなり、S+にするとアダプティブ・ダンパーが俄然硬くなる。

それでも、DBSスーパーレッジェーラ・ヴォランテはどこかやさしい。21インチにもかかわらず、オープンであるにもかかわらず、いや、オープンにしているから、ということもあるけれど、ランプの魔人ジニーの両手にアラジンたちが乗っているときに、たぶんアラジンが感じているような爽快さ、快適さがある。トラスト・ミー!!

それにしても、もしもこのクルマを筆者が買ったとして、私は爆音を轟かせて、いったいどこへ行けばいいのだろう? いつも行っている郊外のショッピング・モール、ではないですね。ガレージにはメルセデス、フェラーリ、ベントレー、ポルシェなんぞが並び、ヨットとプライベート・ジェットがあって、家がトーキョーとロンドンとモナコとスイスとサンフランシスコとカリブ海に……。

いやはや想像がつきません。ともかく、ものすごく多忙なひとが気晴らしをしたいとき、役に立ってくれる1台ではあるまいか。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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みんなのコメント

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  • 素晴らしい!優雅さでは先代DB9に譲るところがあるが、それでも屋根が落ちた姿は猪毛さと優雅さが絶妙にバランスしていて惚れ惚れ。

    が、やっぱり何度見ても内装が量産車臭くなったのは気になる…外から見えてしまう機会の多いヴォランテなら尚更。メーターやダッシュ周りは成金好みの幼稚で複雑な造形にせずに、アストンらしく洗練された上質さと優雅さをたたえたデザインであって欲しかった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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