車を購入する際、忘れてはならないのが自動車保険への加入です。法律で加入が義務づけられている自賠責保険はもちろん、幅広い状況をカバーする任意保険への加入もドライバーの責務と考えられています。
一方で、任意保険のプランは実にさまざまであり、契約者の選択によって補償範囲も大きく異なります。「加入しておけば安心」と考えられている任意保険ですが、小さな契約上の見落としが思わぬトラブルにつながることも。
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今回は損害保険会社の従業員から、「任意保険の思わぬ落とし穴」について話を聞きました。
■修理代がもう少し高ければ、新車に買い替えられたのに……
車を購入した際に、万が一の事故に備えて車両保険に加入する人は多いでしょう。しかし通常の車両保険では、経年とともに補償額は減っていってしまいます。たとえば300万円で購入した新車でも、3年目には180万円しか補償されない、といったケースが考えられるのです。
「車両の時価額は年々目減りしていきますから、それに合わせて車両保険の補償額の上限も減っていきます。こうした減価償却のリスクを避けるうえで、役に立つのが『新車特約』と呼ばれるオプションです。
新車購入から一定期間(多くの場合5年ほど)にわたり、設定した購入金額を上限に、全損事故などの際の買い替え費用が補償されます」(損害保険会社スタッフ)
こう聞くと「大きな事故を起こしても、代わりの新車が手に入る」と考えてしまいそうですが、適用条件には十分注意する必要があります。新車特約が適用されるのは、「全損時または修理費用が新車価格相当額の50%以上となった場合」であり、この点を十分把握していないと、後悔につながることもあるようです。
「たとえば新車を購入してから数ヶ月で大きな事故を起こしたものの、全損には至らず、修理費用もわずかに『時価額の50%』には届かなかった、というケースがあります。
この場合、車両保険によって修理費用は補償されますが、フレーム修理が必要ならリセールバリューは大きく低下してしまいますし、買い替えに比べて精神的なダメージはどうしても大きくなると考えられます」(同上)
保険契約の際に新車価格相当額を高く設定しすぎてしまうと、特約が適用される修理費用のラインも高くなり、「より大きな損傷でなければ適用されない」というケースも増えると考えられます。結果として、「もう少し安く設定していれば新車にできたのに」という状況も想定されるのです。
■保険料を滞納したまま事故を起こすと……
保険の契約は、保険料が一定期間支払われない場合、自動的に解除されるようになっています(不払い解除)。多くの自動車保険では、不払い解除の猶予期間は3ヶ月。月払いで契約している方の場合はとくに、口座の残高が足りずに引き落とされず、契約が強制的に解除されるケースが少なくないのだとか。
「保険料を滞納している場合、もちろん保険会社からの通知や連絡はありますが、書類を確認していなかったり、危機感を持てずに後回しにしたりする方が珍しくないんです。
一度不払い解除になってしまうと、新たに契約を結び直したとしても以前の等級を適用することはできず、新たに6等級からのスタートとなります。
たとえば20等級の状態で不払い解除となり、新規の6等級に戻ってしまうと、保険料は3倍近くなります。そこではじめて事の大きさに気づいても、以前の契約に戻すことはできません」(同上)
無事故の年数を積み重ねる度に、自動車保険の等級は上がっていき、それにより保険料は低くなっていきます。長い年数を要した等級がリセットされることは、ドライバーにとって悪夢にほかなりません。
なお、保険料を滞納している猶予期間に事故を起こした場合、通常どおり保険交渉は行われますが、滞納分が納付されない限り保険金は支払われません。滞納分を支払わないままデッドラインを過ぎてしまえば、保険交渉もなかったことにされてしまうのです。
「ある契約者の方が不払い解除になるギリギリのタイミングで事故を起こしてしまい、数十万円の損害賠償責任を負ったケースがあります。そのときの未納分は3万円ほどでしたから、どう考えてもすぐに支払った方がいいのですが、『お金がない』といってなかなか振り込んでくれません。結局、担当者が契約者のところまで出向き、直接説得をして事なきを得ましたが……」(同上)
今保険料として3万円を支払うか、後から損害賠償として30万円を請求されるか……天秤にかけるまでもないように思えますが、「今ある現金」を支払うことに抵抗感を示す契約者は一定数いるのかもしれません。
■「子供が帰省したときのために」と運転条件を設定していると……
その他、細かい条件の部分で損をしている人も多いのだとか。
「意外に多いのが、年齢条件を適切に設定しておらず、保険料を余計に支払っているパターンです。たとえば独立している24歳のお子さんがいる50歳のご夫婦が、帰省時にお子さんも運転できるよう、年齢条件を『21歳以上』としてしまう、といったケースがよく見られます。
しかし、年齢条件の範囲に含めることで保険が適用されるのは『同居の親族』までですから、同居していないご家族に合わせて低い年齢条件を設定しても、その方が事故を起こした際に補償はされません。ですので、低い年齢条件を設定した分、保険料を無駄に支払うことになるわけですね」(同上)
とくに代理店などとのコミュニケーションが発生しないネット型の場合などは、お子さんが独立する前の条件をそのままにしてしまっているケースも多いようです。そもそもお子さんが車を所有し、任意保険に入っていれば、多くの場合「他車運転特約」が付随しているため、親御さんの方の契約で対処する必要はありません。
その他、保険料を多く支払ってしまっているケースとしては、家族間で契約内容が重複している場合があるといいます。たとえば弁護士特約などは1つの契約で同居家族分もカバーされるため、2人目以降は加入する意味がないとのこと。
契約内容が複雑になりやすい自動車保険ですが、実際に事故に遭った際には小さな文面の違いによって大きく状況が変わることもあります。あらためて自身の契約内容を確認し、「何がどこまで補償されるのか」を入念にチェックしておきたいところです。
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記事内容の独立した子というのは、既婚の子という事になります。