今のところ終わりの兆しすら見えない、新型コロナウイルスによるパンデミック。筆者の住むドイツでも、コロナのパンデミックは日常生活に多くの影響を与え続けています。そしてそれは、クルマの利用に対する意識にも変化を起こしていることが、最近の調査でわかってきました。
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今回のドイツ現地レポは、パンデミック以降のクルマ利用に対する意識の変化について、最新の調査をもとに紐解いていきます。
■パンデミック以前と比べて自転車の利用が増加
日本のJAFに相当する組織、ADAC(ドイツ自動車連盟)は、コロナのパンデミック以降3回に渡って「18歳以上の人々が、生活の中で移動にどんな変化があったのか」を調査しています。初回の調査は2020年3月、2回目は2020年11月、そして3回目は2021年11月に行われました。
この調査で浮き彫りになったことが3つあります。1つは自転車の利用の増加、2つ目は公共交通機関の利用の減少、最後はクルマを利用した国内旅行の増加です。
パンデミック以前よりも自転車を頻繁に利用している、という人は2020年3月の調査では8%に過ぎませんでしたが、2021年11月の調査ではなんと22%にまで増加しました。
こうした自転車利用の増加については、現地で生活していると明確に感じられます。パンデミック以降、大都市では以前にも増して自転車専用レーンが整備されましたし、自転車メーカーの直販サイトでは人気モデルが慢性的な品薄状態になるなど、自転車の需要が増しているのは明らかです。
また「1週間のうちに移動距離が少なくなった」と答えた人は30%で、そのほとんどがホームオフィス導入に伴って自宅から出る回数が減少したことによる影響だと考えられています。ホームオフィスの導入については好意的に捉えている人が多く、現在ホームオフィスで働いている人(労働人口の53%)の3分の2以上が、これからもホームオフィスで働きたいと考えています。
■公共交通機関の利用の割合は逆に減少
自転車の利用の増加に伴って減少したのが、公共交通機関の利用の割合です。鉄道・地下鉄・バスの利用が減った、または利用しなくなったと答えた人は33%にものぼります。年齢別でみると、29歳までの人の方が、高齢者よりも公共交通機関を利用する頻度が高くなっています。これは年配の方ほどクルマを利用し、若者はクルマを所有していない、または環境保護の観点から自家用車の利用を避ける傾向があるからです。
そんな中でも、依然としてクルマの存在感は高いといえます。調査対象者の54%がパンデミック前と同じくらい、20%がパンデミック前よりも頻繁にクルマを利用していると答えました。これは、公共交通機関や乗換駅での感染を恐れる人が多いためと考えられています。
ドイツではパンデミック前と比べて、ドイツ国内で旅行をしたいという人が大幅に増えました。ヨーロッパ以外の遠方への旅行に不安を抱く人が増えたためです。また、ドイツ国内でも感染を恐れて大都市の人気は低くなり、地方都市や自然の中でのんびり過ごしたいという考え方が広まりました。ここで主役となるのがやはり自家用車です。25%の人が自然や地方への旅行に自家用車を利用し、14%の人がより頻繁に自家用車を利用したいと考えています。
■バスも路面電車もカーシェアリングも定額で利用できる?
近年は電気自動車の台頭や、サブスクリプション、カーシェアリングなどの新しいクルマ利用の登場によって、クルマが環境に与える負荷を減らす努力が続けられています。公共交通機関も環境負荷が小さいインフラとして、特に大都市では存在感を示していますが、上記調査結果にもある通り、パンデミックによって利用者が減っているのも事実です。
そんな中、ドイツのいくつかの地方都市ですでに導入され注目を集めているのが、バス・路面電車・地下鉄・鉄道・レンタルサイクル・カーシェアリングを全部まとめて月払いの定額制で利用できる、というサービスです。
アウグスブルク市のSWA(シュタットヴェルケ・アウグスブルク)は2019年末に定額制サービスをドイツで初めて導入。月額67~129ユーロ(約8,700~16,700円)の固定料金で、利用者は様々な交通手段を組み合わせて移動できます。
ドイツでは、こうした包括的な定額制サービスが今後さらに増えていくだろうと予想されています。
■より環境負荷の少ない移動方法を目指して
パンデミック以降、充電インフラの不足を指摘されながらも増加する電気自動車や、サブスクリプションやカーシェアリングなどの新しいクルマ利用の方法の台頭、そしてそもそもクルマを使わないサイクリストの増加、より柔軟な利用ができる公共交通機関の定額制サービスの登場など、短期間で大きな変化が数多く起こりました。
また国内旅行の増加によって、中古のキャンピングトレーラーの値段が以前よりも少し上がるなど、身近なところで感じる変化も数多くあります。
仮に新型コロナが終息、またはその影響が限りなく小さくなっても、クルマを取り巻く社会の変化が止まることはなく、むしろより大きくなっていくことでしょう。ドイツだけではなく、世界の変化にもしっかりと注視していきたいですね。それでは、また次回のドイツ現地レポでお会いしましょう。
[ライター/守屋健]
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