昨年(2013年)11月11日、13代目となる日産スカイライン・V37型が発表された。クルマ好きの心にグサリと刺さる「スカイライン」の車名だが、13代目・V37スカイラインはいったいどんなスカイラインなのか!? その走りを徹底レポート!(本稿は「ベストカー」2014年4月10日号に掲載した記事の再録版となります)
撮影/佐藤正勝
11年経過した2025年でも現役!! 日産 V37「スカイライン」デビュー時徹底レポートプレイバック【ベストカーアーカイブス2014】
【画像ギャラリー】ぶっちゃけ先代までと比べてどうなのよ!!? 日産 V37「スカイライン」徹底レポートプレイバック(17枚)
■最新のV37スカイラインは直6搭載のスカイラインと較べてどうなのか?
13代目となる新型スカイライン。2001年に登場したV35型以来のV6エンジン搭載のフロントミドシップレイアウトを踏襲するも、ハイブリッド専用モデルとして誕生したのがトピックス!
「徹底的にお客様の声を聞きました。私の仕事のほとんどが、お客様のお話を聞くことだったと言っても過言ではありません。お客様の声を反映させたのが、この新型スカイラインです」
日本仕様の開発責任者の寺田美穂リージョナル・プロダクト・マネージャー(RPM)は発表会に先立って開催された事前説明会の場でそのように言っていた。
さて、『お客様の声』とはいったいなんなのだろう!?
・スカイラインには圧倒的なパフォーマンスが必要だ。
・プレミアムなスポーティサルーンであるべき。
・走りの楽しさを感じさせるクルマである。
寺田RPMをリーダーとする国内仕様スカイラインの開発チームがたどり着いた代表的な『回答』は上記のとおりである。
そのためにチョイスされたパワートレーンはシステム出力364psを発揮する3.5L、V6エンジン+モーターのハイブリッドシステムとなった。
V37型スカイラインに用意されるパワートレーンはこれ1タイプのみ。すなわち、スカイラインはハイブリッド専用車なのだ。
基本的にはフーガに搭載されるパワーユニットとハード的には同じものである。
インフィニティマークは付いても『日産スカイライン』
編集部は寺田RPMに意地悪な質問をした。
「スカイラインは走りの楽しさを追求したプレミアムな4ドアスポーティサルーンだとおっしゃいましたが、フーガハイブリッドで感じたドライブフィールは、たしかにパワフルではありますが、“楽しい”というモノとはちょっと違うと思いました」
これに対し寺田RPMは、
「いま日産自動車が持っているパワーユニットで最もパワフルでスポーティなのが、この3・5Lハイブリッドです。だからスカイラインにはこのユニットを搭載することを決めました。いま、フーガと同じとおっしゃいましたが、ハード的には確かに同じですが、制御を一新してよりパワフルにチューニングしています。そのあたりは乗っていただければご理解いただけるはずです」
と。
エンジンカバーにもインフィニティマークが付けられる。3.5L、V6ハイブリッドはシステム出力364ps
■パワフルで燃費もいいけど、スカイラインらしい個性は!?
ハイブリッド専用車となった新型スカイラインに搭載されるエンジンは306ps/35.7kgmを発揮する3.5LのV6。これにモーターが組み合わされてシステム出力364psを発揮する。R34までのスカイラインには直列6気筒エンジンを搭載していた
まあとにかく乗ってみよう。
ゆっくりアクセルを踏み込んでそろそろと発進すれば、モーターだけで走り出す。このあたりはフーガと同じ。10km/hあたりで一瞬“ブルン”となってエンジンが始動する。エンジンとモーターの出力がミックスされた加速感は確かにパワフル!
例えばV36型の370GTと比べてもグイグイと押し出していく感覚は圧倒的。R34型の2.5L直6ターボとは比較にならない怒濤の加速力、だ。
いったん停車して次はアクセルベタ踏みでスタート。最初からエンジンが始動してこれまた怒濤の加速力。確かに速い!
今度は高速道路を80km/hでの巡航から一気に追い越し加速を試みる。この時、エンジンは停止していてモーターのみで巡航している状態。
この状態でアクセルをベタ踏みすると、一瞬間を置いてエンジンが始動して加速体制に移行するのだが、この『間』が気になる。
ホンの0コンマ何秒かのタイムラグなのだが、そしてフーガで感じたタイムラグよりも、ずいぶんとシャープに進化しているものの、やはり、このちょっとのラグが気になった。
「大きくなりすぎましたね。直6だとか、V6だとか、ハイブリッドがどうしたなどということは、たいした問題ではありません。ただ、意のままに操れるドライビング感覚だとか、ボディサイズだとか、ハンドリングフィールなどを大切にしたいと思っています。その点で最新のV37型は、ちょっと大きすぎることと、ハイブリッドユニットのタイムラグが気になりましたね。ただとても速いです!」
R34型スカイライン4ドアセダンをこよなく愛する『最後のスカG保存会』会員の久保さん、神谷さん、上原さんが口を揃えて言う。
そういえばスカイライン開発チームは「お客様の声を徹底的に聞いた」と言っていた。そのお客さんはというと、「多くがV36型にお乗りのお客様」だったという。
全長4800mm、全幅1820mm、全高1440mmでホイールベースは2850mm。これは旧型となるV36型に対して全長でプラス30mm、全幅でプラス50mmそれぞれ大きくなっている。いっぽうで全高は10mm低くなった
50年を超える歴史を持つスカイラインだけに、実に多くの「お客様」がいて、それぞれに思い入れも深いものがある。
それだけに『スカイラインはかくあるべき』という指針のようなものは、実はあってないようなものだと思うのだ。先の上原さんたちの意見もひとつの貴重な意見だし、また違った「スカイライン観」がいくつもある。
だから、スカイラインというクルマに求められるのは「お客様の声を聞いて作り上げた」無難な“商品”ではなく、作り手が熱いメッセージを込めた、「新しいスカイラインはいままでとは違う、こんなスカイラインです!」という“想い”なのではなかろうか!?
V36型の370GTタイプSPの車重は1640kgだったがV37型の350GTハイブリッドタイプSPは1800kg。これはハイブリッドゆえの重量増だ
■FRスポーツセダンとして新型スカイラインはどう評価されるのか?
新型スカイラインは2月28日現在約4200台の受注。一番人気は2WDの「タイプP」で約38%、続いてタイプSPが約30%。ボディカラーはクリスタルホワイトパールが約29%、HAGANEブルーが約19%、スーパーブラックが約14%となる
いろいろな意見はあろうが、新型V37型スカイラインは、乗って走り出せば、間違いなく速い! そこに口を挟み込む余地などいっさいない。
それと、大いに気になっていた「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング」だが、おそらく、前もって「それ」と知らされていなければまったくわからないほど自然なフィーリングであった。
ハンドルを回した操作が電子制御されたアクチュエーターの動きに置き換えられてタイヤが操舵されているとは思えない。操作に対してダイレクトにタイヤは反応するし、微妙な操舵に対しても緻密に反応する。
細かいうねりやギャップなどといった路面からのちょっとした情報は、大きなキックバックは弱めつつ、必要な情報は伝わってくるので、ドライブフィールに違和感はなかった。
ステア操作をECUが演算処理をして、アクチュエータが実際にタイヤを動かすのだから、操舵力や操舵に対するタイヤの切れ角(ステアリングギア比)などは電子制御で自在にセッティング可能。
コックピットのスイッチでスタンダードモードからスポーツモードに切り替えると、グッと操舵力が増してセンター付近のレスポンスがシャープになる。ちょっと“重すぎ”にも感じたが、ジワリと切り込むような操作には、この重さが具合いいのだ。
搭載する3.5LのV6エンジンは306ps、35.7kgmを発揮し、そこに68ps/29.6kgmのモーターが組み合わされるのだから、速くないわけがない。システム出力は364psを発揮する。
パワースペックは、同じハイブリッドユニットを搭載するフーガハイブリッドとまったく同じである。フーガハイブリッドの車重は1840kg、いっぽうスカイラインは1800kgと40kg軽いので、そのぶんも含めて、体感的にはスカイラインのほうが力強い加速を味わえる。
フーガハイブリッドはスカイラインよりもひと回り大きなボディで車重も1840kg
旧型V36型と比べるとどうか!? トップレンジの3.7Lエンジン搭載モデルは330psの最高出力に最大トルクは36.8kgm。エンジン本体のパワーは旧型が上だが、モーターの加わる新型がシステム出力では上回る。
実際に走ると、動力性能ではむしろ旧型が力強く感じる。
直接タイムを取って比較したわけではないので、あくまでも体感的なものだが、明らかにV36型370GTのほうが軽快でパワフルだし、エンジンの吹け上がりも気持ちがいい。
ハイブリッド専用車となった新型の車重1800kgもあり、V37型に対し約200kg重くなっているのだ。これが大きく影響をしている。V37は「重たいカタマリを圧倒的な力でグイグイ動かしている」という印象なのだ。
V37スカイラインの価格は449万6100円~、最上級の「タイプSP」は526万4700円。BMWの320dの価格帯(482万~526万円)とほぼ同じ。さて、どっちを選ぶか?
高速道路の巡航からの追い越し加速では上記で触れたとおり、『停止していたエンジンをモーターで再始動させて、クラッチを切り替えて加速体制に入る』動作にコンマ何秒かのタイムラグが発生するため、ちょっともどかしさを感じる場面もある。
いっぽう、山道などでエンジンが常に稼働しているような運転状態では、アクセル操作に対し、即座にエンジン/モーターが反応するためキビキビした走りを味わえる。
このあたり、THSIIを搭載するレクサスIS300hよりもパワフルだしダイレクトにエンジンの動きを操ることができるので、スポーティな走りを楽しめる。THSIIはどうしても「アクセルペダルとエンジンの間にワンクッション緩衝材が入っている」印象なのだ。
BMW320dに搭載されるディーゼルターボは直列4気筒で1995cc。最高出力は184psだが最大トルクは38.7kgmを1750rpmで発揮する。このトルクはスカイラインをも凌ぐ!
●同じ3.5Lハイブリッドを搭載するフーガハイブリッドとNEWスカイラインはどう違う!?
新型スカイラインに搭載されるハイブリッドユニットはフーガハイブリッドに搭載されるものとまったく同じ。システム出力364psという数字も含めて、パワースペックはフーガとスカイラインはまったく同じだが、制御チューニングの違いによりスカイラインの方がよりパワフルでシャープ。
具体的には、追い越し加速時の「エンジン再始動→モーターアシスト→加速」のタイムラグを低減するとともに、モータートルクの立ち上がりを大きくしてパワフルな加速力を出しているという。また、スポーツモードではエンジンが停止する領域を少なくして、タイムラグそのものが発生しないようにしているのだ。
●新型スカイラインは「FRスポーツセダン」なのか!?(自動車評論家・松田秀士の意見)
基本的にはとてもよくまとまっているスポーティセダンです。同じ3.5Lハイブリッドを搭載するフーガと比べて、追い越し加速時のレスポンスやトルク感など大いに改善されているし、エンジンサウンドは心地よく、振動も少なくパワーユニットに不満はありません。
『ダイレクト・アダプティブ・ステアリング』については、ボクは“スポーツモード”が操舵力やゲインの立ち上がりに自然さを感じました。“スタンダード”モードはやや軽すぎることと、戻しの際にイナーシャを感じる場面がありましたが、スポーツモードではそのようなことはなく、操舵に対する切れ込み方など自分好みの動きをしてくれます。スポーティで楽しいクルマです。
アッパーミドルサイズのFRスポーティセダンとして評価するなら、新型スカイラインは充分に高く評価できるクルマです。
FRスポーティセダン採点チェック!
* * *
「ハイブリッドではないスカイライン」も試してみたいぞ!
【番外コラム01】世界初の操舵システム「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング」 どんな走り!? どんなフィーリング!?
注目の「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング」は、自然なフィーリングで、それと知らされなければ気がつかないほど。モードの切り替えで、操舵力などを変更できる
世界初のメカニズムとして新型スカイラインに採用されたのが「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング」。
ステアリングの操作情報をセンサーで電気信号化し、実際に前輪を操舵するのはアクチュエーター。つまり、ハンドルとタイヤが物理的に繫がっていない、ということ。
もちろん、システムダウン時に備えてシャフトが通っており、いざという時にはクラッチが繫がって操舵は可能なので心配はない。全車で採用。
ダイレクト・アダプティブ・ステアリングは日産が世界に先駆けて実用化したメカニズムだ
【番外アンケート02】ベストカー読者は「スカイライン」をどう見た!?
欲しい、カッコいいという肯定的な意見はわずか9%にとどまった。うーん……
ベストカー読者に『スカイラインに対する意識調査』の緊急アンケートを実施したところ、短時間にもかかわらず、実に106名もの方に貴重なご意見をいただくことができたので、ご紹介したい。
やはりというか、「スカイラインというクルマに対するイメージは!?」という質問に対してはスポーティな走りとの回答が多かった。
また、「好きなスカイラインは?」に対しては、回答はある程度バラけたが、R32とR34が多かったのは、やっぱりベストカー読者らしさといった部分か。
(写真、内容はすべて『ベストカー』本誌掲載時のものですが、必要に応じて注釈等を加えている場合があります)
投稿 11年経過した2025年でも現役!! 日産 V37「スカイライン」デビュー時徹底レポートプレイバック【ベストカーアーカイブス2014】 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。
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