現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜV型5気筒エンジン!? MotoGP初年度を圧倒的な強さで制したホンダ「RC211V」の時代とは

ここから本文です

なぜV型5気筒エンジン!? MotoGP初年度を圧倒的な強さで制したホンダ「RC211V」の時代とは

掲載 更新 48
なぜV型5気筒エンジン!? MotoGP初年度を圧倒的な強さで制したホンダ「RC211V」の時代とは

初代MotoGPチャンピオンマシン、栄光のメカニズム

 2025年5月に生産台数累計5億台に達したホンダですが、舞台をサーキットに限れば、ホンダ最速のマシンはMotoGPマシンです。

【画像】その強さ圧倒的!? ロッシと共に駆け抜けた新時代最初のチャンピオンマシン「RC211V」を画像で見る

 1990年代半ばから、環境問題により2ストロークエンジンのストリートバイクはほとんどなくなり、モータースポーツの世界でもそれに同調し、大きな変革を迎えました。それまでの世界グランプリの2ストローク500ccクラスに替わる新たなトップカテゴリーとして作られたのが、4ストローク車を主体とするMotoGPでした。

 MotoGPに使用するマシンの排気量は、第1期と言える2002年から2006年までが990cc、2007年から2011年の第2期は800cc、2012年から現在までは1000ccと、その時代の状況によって車両規則を変更しています。

 ここに紹介するホンダのMotoGPマシン「RC211V」(2003年)は、ホンダがMotoGP初年度に投入し、第1期の5シーズンを走ったマシンです。車名の「RC」はホンダがレースのために少数だけ生産する特別なバイク、いわゆるワークスマシンに使用されるものです。「211」は21世紀に入って最初のトップカテゴリーレーサーであることを示しています。「V」はV型エンジンや5気筒の5を表すローマ数字、または勝利(Victory)の意味も込められています。

 MotoGPが始まる数年前から、メーカーとFIMの間で車両の仕様に関する検討が始まりました。エンジンの排気量上限は990ccに、最低重量はエンジンの気筒数によって異なり、3気筒以下が135kg、4気筒と5気筒が145kg、6気筒以上が155kgと定められました。

 それに従って各メーカーがMotoGPマシンを開発した訳ですが、2002年の開幕戦に登場したマシンが搭載したエンジン形式は、アプリリアが並列3気筒、ヤマハとカワサキが並列4気筒、スズキはV型4気筒、そしてホンダはV型5気筒でした。

 どのエンジン形式が正しいのか? どのメーカーにも分からないまま自分たちの選択を信じて開発を進めたはずです。基本的には気筒数が多い方がより高出力を獲得しやすく、軽量な方がタイヤをレース終盤まで持たせることが期待できます。

 エンジン形式を決める以前に、さまざまな要素が噛み合うニューマシンでしたが、ホンダは振動やエンジンのジオメトリーとエンジン重量という3つの大きな要件をもとに、V型5気筒を選択しました。

 例えばV型4気筒では、一次振動を消す90度のVアングルでは大柄なエンジンになってしまいます。並列4気筒では横に長く、3気筒でもバランサーが必要です。V型3気筒はV型4気筒と大きさがさほど変わりません。6気筒以上は車重が重く、タイヤの摩耗が早く進行する弊害が予想され、検討の初期段階から外されています。

 そんな中、「V型5気筒なんかできると、ホンダらしくて面白い」という上司が発したひと言を聞いたエンジニアたちは、念の為に検討してみると理論上振動は無いため、バランサー不要と分かりました。

 V型のシリンダーの挟み角は75.5度として、エンジン全体が球体のようにコンパクトにまとまり、車体のパッケージングにも優位な形態になりました。

 現在のMotoGPマシンではウイリー抑制効果がある逆回転クランク=4軸構成(クランクがタイヤと逆方向に回転する)が定石です。しかし「RC211V」開発時にはその効果の確認が十分に行われておらず、よりコンパクトに設計できる3軸構成の正回転クランク(タイヤと同じ回転方向)となっています。

 2014年以降はMotoGPマシンは共通のECU(電子制御ユニット)を使用し、行き過ぎた開発競争を抑制しています。それ以前はホンダを含めた各メーカーが高度化した電子制御技術を持っていました。

 一方、初期の「RC211V」は電子制御は入っているものの、まだシンプルなもので2002年シーズンの後半になってやっとトラクションコントロールのような制御が始まります。

 前後サスペンションのストロークセンサーによる単純なウイリーコントロールが始まったのは、2005年と言われています(6軸センサー導入はずっと後)。

 20年以上の年月を間に挟んで強引に比較すれば、2002年型の「RC211V」は吸排気バルブは金属スプリングでの作動で、スロットルはワイヤー直引き、圧縮比は13.5で238.6psを15000rpmで発揮し、トラクションコントロールは無しです。

 2025年型の「CBR1000RR-R FIREBLADE」は、2004年型の「RC211V」と同じボア×ストローク比でチタンコンロッド、6軸センサー+2モーターの電子制御スロットルを装備し、圧縮比は13.6で218psを14000rpmで発揮します。

 こうして見ると、ロードレースの頂点から市販車に降りて来たテクノロジーが、スポーツバイクの速さや安心感などを供与していることが分かります。

 2002年のMotoGPの開幕戦は、日本の鈴鹿サーキットでした。現地で見たレースファンはコーナーの立ち上がりで豪快にスライド走行する「RC211V」に驚いたはずです。

「RC211V」はそれまで前例の無いV型5気筒エンジンで、MotoGP初年度を駆け抜けました。16戦中14勝という圧倒的な強さで、ライダーとメーカーのダブルタイトルをホンダにもたらします。

 さらに進化した2003年は、バレンティーノ・ロッシ選手が2年連続でタイトルを獲得し、「RC211V」最後のシーズンとなった2006年にはニッキー・ヘイデン選手がチャンピオンに輝きました。

■ホンダ「RC211V」(2003年型)主要諸元エンジン種類:水冷4ストローク75.5度V型5気筒DOHC20バルブ(1気筒あたり4気筒)総排気量:990cc最高出力:238.6PS/15000rpm最大トルク:117.4N・m/11500rpm車両重量:145kg(乾燥)燃料タンク容量:24L

【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)(柴田直行)

文:バイクのニュース 柴田直行
【キャンペーン】第2・4金土日は5円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

2002年登場の「エアジョーダン9」の人気色“フリントグレー”が待望の復活! クラシックな配色でも現代ファッションに合うおしゃれな1足
2002年登場の「エアジョーダン9」の人気色“フリントグレー”が待望の復活! クラシックな配色でも現代ファッションに合うおしゃれな1足
VAGUE
スズキ相良工場、実験施設で従業員死亡事故が発生
スズキ相良工場、実験施設で従業員死亡事故が発生
レスポンス
技術規則の変更は“チームとして立ち向かう挑戦”。大きく変わるマシンの開発は「魅力的な挑戦だった」とハミルトン
技術規則の変更は“チームとして立ち向かう挑戦”。大きく変わるマシンの開発は「魅力的な挑戦だった」とハミルトン
AUTOSPORT web
「エア ジョーダン 1 LOW OG “Medium Olive and Summit White”」はアースカラーに注目!──GQ新着スニーカー
「エア ジョーダン 1 LOW OG “Medium Olive and Summit White”」はアースカラーに注目!──GQ新着スニーカー
GQ JAPAN
434万円から! 新「“3列7人乗り”ミニバン」に大注目! 全長4.7m級にスライドドア採用! ちいさい“5人乗り”もある特別色のシトロエン「ベルランゴ」販売店での反響は?
434万円から! 新「“3列7人乗り”ミニバン」に大注目! 全長4.7m級にスライドドア採用! ちいさい“5人乗り”もある特別色のシトロエン「ベルランゴ」販売店での反響は?
くるまのニュース
ゼンリン、東急不動産グループに地図データ統合プラットフォーム提供…不動産業務のDX支援
ゼンリン、東急不動産グループに地図データ統合プラットフォーム提供…不動産業務のDX支援
レスポンス
レーシングブルズ、テクニカルディレクターにファロウズを指名。2024年にアストンマーティンを離脱
レーシングブルズ、テクニカルディレクターにファロウズを指名。2024年にアストンマーティンを離脱
motorsport.com 日本版
ホンダ「スーパーカブC125」にシルバーのツートーンが登場! 従来色と置き換えで英/伊ほか発売【欧州】
ホンダ「スーパーカブC125」にシルバーのツートーンが登場! 従来色と置き換えで英/伊ほか発売【欧州】
WEBヤングマシン
「パラパラ冷凍」と「オートクローズ」を実現する意外な仕組み!? シャープ最新冷蔵庫が示す、テクノロジーと“生活の距離感”とは
「パラパラ冷凍」と「オートクローズ」を実現する意外な仕組み!? シャープ最新冷蔵庫が示す、テクノロジーと“生活の距離感”とは
VAGUE
三菱の新たな「高級“四駆SUV”」に反響殺到! “豪華内装”&専用「新ブラック仕立て」外装がカッコいい! 「3列・7人乗り」仕様も魅力な「アウトランダーPHEV“特別仕様車”」販売店に寄せられた声とは
三菱の新たな「高級“四駆SUV”」に反響殺到! “豪華内装”&専用「新ブラック仕立て」外装がカッコいい! 「3列・7人乗り」仕様も魅力な「アウトランダーPHEV“特別仕様車”」販売店に寄せられた声とは
くるまのニュース
エクセディのスマートロボット「Neibo」、中小企業省力化投資補助金の対象製品に登録
エクセディのスマートロボット「Neibo」、中小企業省力化投資補助金の対象製品に登録
レスポンス
ジュエリーの新ルール──ディオールとブシュロン
ジュエリーの新ルール──ディオールとブシュロン
GQ JAPAN
地震大国なのに危機管理が甘くない!? いざという時のために加入しておきたい「地震特約」と自動車保険の問題点って
地震大国なのに危機管理が甘くない!? いざという時のために加入しておきたい「地震特約」と自動車保険の問題点って
ベストカーWeb
戸田建設・西日本鉄道・東京建物、熊本市東区でマルチテナント型物流倉庫を着工…2027年3月竣工
戸田建設・西日本鉄道・東京建物、熊本市東区でマルチテナント型物流倉庫を着工…2027年3月竣工
レスポンス
フェラーリF1、2026年のニューマシンSF-26発表。昨年未勝利からの復活なるか?
フェラーリF1、2026年のニューマシンSF-26発表。昨年未勝利からの復活なるか?
motorsport.com 日本版
ホンダ「“新”アドベンチャー」発売! 1082ccエンジン搭載&電子サスペンションで超快適! めっちゃ売れてる「CRF1100L アフリカツイン」最新モデル登場!
ホンダ「“新”アドベンチャー」発売! 1082ccエンジン搭載&電子サスペンションで超快適! めっちゃ売れてる「CRF1100L アフリカツイン」最新モデル登場!
くるまのニュース
フェラーリが新型マシン『SF-26』を公開。技術規則が刷新される2026年は2年ぶりの勝利を目指す
フェラーリが新型マシン『SF-26』を公開。技術規則が刷新される2026年は2年ぶりの勝利を目指す
AUTOSPORT web
阪急「最大のターミナル駅」の“スゴい風景”、最後の姿が公開される 「寂しくなるな~」「かっこいい!」将来どう変わる?
阪急「最大のターミナル駅」の“スゴい風景”、最後の姿が公開される 「寂しくなるな~」「かっこいい!」将来どう変わる?
乗りものニュース

みんなのコメント

48件
  • Haru
    この時代のホンダはかっこいい!
  • kam********
    V5エンジンと初めて聞いた時は本当に驚いた。前3・後2とバランスが悪いではないか、前後のVバンクが75.5°って中途半端な数値で、これって一体何なんだ!と思っていたら、なんと振動0。しかも、不等燃焼間隔でグリップ力は向上。
    エンジン内部が明かされるまでは、前と後でピストンの重さが違うのではないかと噂されていたが、否。クランクはどうなっているんだろうか?と興味が尽きなかったが、中央が104.5°の位相と知って、また驚いた。
    他社が思いつかないホンダらしい作りのエンジンだったし、4ストロークエンジンの歴史に残る最高傑作のひとつではないかと思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村