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NHK『100カメ』ディレクターが見た、スーパーフォーミュラ&モータースポーツの真髄「裏側にある人間ドラマは見る者を惹きつける」

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NHK『100カメ』ディレクターが見た、スーパーフォーミュラ&モータースポーツの真髄「裏側にある人間ドラマは見る者を惹きつける」

 10月24日(火)、スーパーフォーミュラを題材としたテレビ番組が地上波で放送される。それがNHKのドキュメンタリー番組『100カメ』である。

 100カメは、気になる場所に100台の固定カメラを設置して人々の生態を観察する“のぞき見ドキュメンタリー”として放送中の番組であり、今回はモータースポーツにスポットライトが当てられた形。日本最高峰のフォーミュラカー選手権であるスーパーフォーミュラのレースウィークに密着し、そのVTRを司会のお笑い芸人・オードリーが観察する……というのが番組の流れだ。

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「100カメは、ディレクターが聞きたいことを聞く、ディレクターの考える方向で構成するようなドキュメンタリーの正攻法とは違い、取材者が現場にタッチせず、固定カメラを置くという、これまでと違ったドキュメンタリーの手法を用いています」

 番組についてそう説明するのは、今回制作に携わった小林涼太ディレクターだ。

「その場にカメラマンがいるだけでも(取材対象にとっては)プレッシャーになるじゃないですか。カメラマンがいたら撮れないものや、撮影スタッフが入れないところでも、100カメなら撮影できる。そのようにドキュメンタリーの新たな可能性を探るというのが100カメの存在意義だと私は考えています」

■100カメでやりたいテーマの中に当初からモータースポーツがあった

 そんな100カメが、なぜスーパーフォーミュラを題材にすることになったのか? 小林ディレクターによると、モータースポーツは当初より100カメとの親和性が高いと考えられており、以前から「やりたいテーマ」として挙がっていたという。

「100カメは表舞台の裏側を描くことに強みを持っています。脚光の当たっている人の裏にはそれを支える人たちが大勢いますが、その人たちの知られざる努力だったり、影の頑張りを描くことが得意です。それがモータースポーツと親和性が高いのではないかというのが第一にありましたし、100カメが立ち上がった当初からやりたいテーマにモータースポーツがありました」

「固定カメラだからこそギリギリまで迫れるものがあるんじゃないかという映像的な楽しさもありますし、そういう意味でモータースポーツをテーマに選びました」

 企画は昨年秋からスタートしていた。まず、昨年鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーフォーミュラ最終戦に制作チームが出向き、密着対象となるKids com Team KCMGの土居隆二チーム代表への挨拶をはじめ、レースウィークの流れなどのリサーチを行なった。スケジュールの都合で、撮影は翌年4月に同じく鈴鹿で行なわれるシリーズ第3戦で行なうこととなったが、それまでにも制作陣の細やかなリサーチは続いた。

「チームの方々に取材し、どんな役割の方がいて、それぞれどんなキャラクターで、どんな関係性なのかを調べました」と小林ディレクター。

「例えば『この人とこの人はよく飲みに行っている』『この人とこの人は師弟関係だ』と言った人間関係を把握したり、彼らがどこでどういう仕事をするかの行動パターンを把握しておかないと、カメラを置く場所もそれに左右されたりします」

 それらを踏まえ、100個の固定カメラをどこに設置するかの『カメラマップ』を作成して撮影に臨んだ制作陣。撮影時の彼らは基本現場にはノータッチだが、カメラスイッチのオン/オフ、定期的なチェックやSDカード交換が必要なため、ロケは早朝から深夜まで続いた。

「僕たちは彼ら(チーム)が来る前にカメラのスイッチをオンにし、帰るところまで撮ってカメラをオフにしないといけません。特にメカニックさんは、朝7時くらいに来て、日付が変わるくらいまでマシンの調整をしています。それでいて、他のカテゴリーを掛け持ちしている方も多いとのことなので、大変な仕事だと思いました」

 撮影後は、そうして集められた膨大な映像素材を編集する作業に移る。スーパーフォーミュラなどのモータースポーツは、練習走行→予選→決勝と時系列がハッキリしているため、そういった点では楽な部分もあったと語る小林ディレクターだが、飛び交う言葉が専門用語ばかりのため、それを咀嚼するのには苦労したとのこと。必要なものは適宜チームに確認をとりながら、約2ヵ月強をかけてVTRを仕上げていった。

■100カメが捉えたモータースポーツの真髄

 実際に完成したVTRでは、チームが車高を1.8mm下げるといったミリ単位 の調整を行なっている様子や、破損したパーツの驚きの値段が明かされる場面、ドライバーの小林可夢偉、国本雄資と個性豊かなチーム関係者との何気ないやり取りなど、実に様々なシーンが30分弱の中に凝縮されている。VTRを見たオードリーのふたりも、収録前とはモータースポーツに対する見方が変わっていたとのこと。中でも若林正恭はミニ四駆が趣味であり、VTRを見ながら自身のミニ四駆での経験と照らし合わせてコメントを挟むなど、熱心に“観察”していた。

 小林ディレクターも「F1もたまに見ていたし、NetflixのF1のドキュメンタリーも見ていたが、わざわざサーキットまで観に行くほどのファンではなかった」というが、今回の100カメを通してモータースポーツの真髄を感じたという。

「モータースポーツは個人競技ではなくチームスポーツだということはおそらく散々言われていることかと思いますが、それは今回の100カメでも感じていただけるかと思います」

「番組の中でも春日(俊彰)さんが(国本が0.043秒差で予選Q1敗退したシーンを見て)『瞬きくらいの差じゃないの?』とおっしゃっていましたが、それって僕ら素人からすると、差はほとんどないんじゃないか、実力ではなくて時の運で変わってしまうものなんじゃないか、そう思ってしまうと思います」

「ただ今回彼らの仕事ぶりを観察させていただく中で、彼らが必死に負けた要因を分析している姿や、その差を埋めるための努力をしている姿を見て、彼らはこの0.04秒の世界で戦っているのだということを改めて実感しました。もちろんコンディションの要因もあると思いますが、そこに合わせて車高やウイングをどのようにセッティングするのか、アタック前のタイヤの温め方はどれくらいがいいのかなど、細かい判断に悩みながら0.04秒の世界で戦っていることにこの世界の凄みを感じました」

「ドライバーのテクニックだけではなく、チームの判断やメカニックのスキル……そういう細かい積み重ねがタイムに表れると思うと、味わい深い世界だなと思います」

 今回題材となったスーパーフォーミュラは、選手権自体を今まで以上に盛り上げるため、これまでスーパーフォーミュラやモータースポーツを見てこなかった人たちへのアピールも含めて試行錯誤を繰り返している。モータースポーツの魅力をより多くの人たちに伝えるためにはどんなアプローチがあると考えるかと小林ディレクターに問うと、100カメでフォーカスした「裏側のドラマ」には人を惹きつける力があると述べた。

「シーンの裏側というのは積極的に見せていく価値があると思います」

「メカニックの人たちやエンジニアの人たちが何をやっているのか、監督がどういうところに悩んで、どういう判断を下して、それがどう結果に繋がったのか……そこにはドラマがあるし、そこに人間性が表れたりします。今回裏側を見させていただき、そういうところが面白いと思いました」

「クルマが走っているだけで格好良い、というのは間違いないですが、裏の人間ドラマなど、そういうところには人を惹きつける力があると思いますし、私たちのような番組がそういう裏側の魅力を伝えられるといいなと思っています」

 スーパーフォーミュラが特集されるNHK『100カメ』は、スーパーフォーミュラ最終戦直前の10月24日(火)、23時00分からNHK総合で放送される。また、10月28日(土)の18時05分から再放送が行なわれる予定で、NHKプラスでも同時配信と1週間の見逃し配信が実施される。

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みんなのコメント

1件
  • hab********
    最近、テレビなどで無料でレースを見られることがほとんどなくなって、特にファンで無い人が偶然ですらモータースポーツを目にする機会もほぼ無くなった。
    レースの舞台裏が見られるらしいこの番組で、少しでも興味を持ってくれる人が増えてくれたらいいな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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