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なぜホンダ「N-BOX」売れ続ける? 軽メーカーダイハツ・スズキが超えられない理由とは

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なぜホンダ「N-BOX」売れ続ける? 軽メーカーダイハツ・スズキが超えられない理由とは

■どうしても倒せない「最強軽」N-BOX

 ホンダ「N-BOX」の人気が止まりません。2017年に続いて2018年も、軽自動車以外のクルマを含んだ国内販売ランキングの総合1位になりました。直近の2018年度(2018年4月から2019年3月)では、N-BOXは23万9706台の販売を記録しています。2位のスズキ「スペーシア」は15万8397台、3位のダイハツ「タント」は14万2550台ですから、ほかのクルマに大差をつけています。

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 ちなみに軽自動車を除いた1位は、日産「ノート」の13万1760台です。国内販売の上位を軽自動車が占めているなかでも、N-BOXの売れ行きはダントツといえるでしょう。どのようにして、N-BOXはここまでの人気を獲得したのでしょうか。

 スズキの販売店からは「お客様は、スズキのどの軽自動車を買うときも、N-BOXと比較・検討します」という声が聞かれます。

 N-BOXは、全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた軽自動車であるため、直接的なライバルは似た仕様のスペーシアやタント、日産「デイズルークス」、三菱「eKスペース」などです。しかし販売の現場では、全高が1700mm以下でスライドドアを装着しないスズキ「ワゴンR」もN-BOXと競争するのです。

 日産の販売店で話を聞いても同様で「新型になった『デイズ』が競う相手はN-BOXが一番多い」といいます。デイズも、ワゴンRと同じく全高1700mm以下でスライドドアがない軽自動車。全高やボディスタイル、価格を考えるとデイズの競争相手はホンダ車なら「N-WGN」ですが、実際はN-BOXと競うのです。

 圧倒的な人気車は、概していろいろな車種のライバルとして取り上げられます。似た事例では、先代のトヨタ「プリウス」がそうでした。

 先代プリウスは2012年に今のN-BOXよりも多い31万7657台を登録しており、幅広い車種がプリウスと競合しました。スバル「インプレッサ」やマツダ「アクセラ」だけでなく、セダンの日産「シルフィ」、さらに輸入車のフォルクスワーゲン「ゴルフ」やボルボ「V40」まで、競争相手がプリウスという状況でした。今ではそれがN-BOXで発生しているわけです。

 そのため、近年の軽自動車の商品開発は「打倒N-BOX!」がスローガンになりました。最も分かりやすいのはスペーシアでしょう。先代スペーシアとその前身モデルの「パレット」は、全高を少し低く設定して、個性を表現すると同時にN-BOXとの真っ向勝負を避けました。

 天井が低いためボディが軽く重心も下がり、走行性能や燃費などでN-BOXに勝てる分野を設けました。それにもかかわらず、販売台数ではまったく太刀打ちできなかったのです。

 そこで現行スペーシアは渾身の開発を行い、全高をN-BOXとほぼ同じ数値まで高めました。その上で、内外装をスーツケースをモチーフにした個性的なものに仕上げ、マイルドハイブリッドの採用でJC08モード燃費も28.2km/Lとしました(N-BOXは27km/L)。さらにデザインをSUV風に変更した派生モデル「スペーシアギア」を加えるなど、発売後のテコ入れも入念に行っています。

 それでも2019年3月の届け出台数は1万8848台で、N-BOXの2万6418台と比べると71%にとどまります。N-BOXの牙城を崩すのは、とても難しいです。

■改良によってN-BOXは「無敵」の存在に

 N-BOXがここまで好調に売れるのは、2011年に発売された初代モデルと、2017年に登場した2代目モデルが効果的に連携しているからです。初代モデルは、軽自動車で最大の居住空間と荷室を備え、抜群の実用性で多くのユーザーを驚かせました。水平基調のボディが採用され、ボンネットとルーフの長さの配分や窓の角度などが適度で、外観の見栄えが良いことも特徴でした。

 2代目モデルは、人気を高めた初代モデルの特徴をすべて受け継ぎ、なおかつプラットフォームを刷新して、やや鈍さもあった従来の操舵感を自然な印象に改めました。

 さらに内装の質感やシートの乗り心地は、軽自動車で最良の仕上がりという声も多いです。衝突被害軽減ブレーキをはじめとした先進機能で構成される運転支援システム「ホンダセンシング」も加わり、ミニバンと同等の安全性能も備えました。

「ホンダセンシング」には、軽自動車での採用例はまだ少ない車間距離の自動制御機能「クルーズコントロール」も含まれています。

 このようにN-BOXは、初代モデルで最高の居住性と積載性、均整の取れた外観を確立させ、2代目モデルでは質感や乗り心地、そして多くのユーザーが関心を寄せる安全装備を軽自動車でナンバーワンの水準まで高めました。こうしてN-BOXは、最強の軽自動車に仕上がったのです。

 今後の動向で注目されるのは、2019年の夏から秋にフルモデルチェンジが噂される次期型のダイハツ「タント」でしょう。タントはダイハツの最多販売車種なので、次期型はライバル車のN-BOXに絶対に勝たねばなりません。失敗すると、軽自動車の販売ナンバーワンメーカーというダイハツの位置付けまで揺らぎかねません。

 そこで、次期タントはプラットフォームを新開発して安定性と乗り心地を向上させ、内装やシートの座り心地も大幅に改善するようです。現行タントの特徴は、左側スライドドアにピラー(支柱)を埋め込んだことでドア開口幅が1490mmまで広がることですが、このほかにもN-BOXやスペーシアにはない新しい機能を備えます。

 そうなると、2020年発売と予想される次期デイズルークス&eKスペースも、N-BOX、次期タント、スペーシアに負けない機能を目指します。軽自動車は、ますます商品力を高めるので、普通車はそれ以上に力を入れないと、販売面で軽自動車に勝てません。

 問題は、新車市場で軽自動車が占める販売比率です。現時点で36%から38%程度に達しており、もし今後40%を超えて50%に近づくと軽自動車の増税に繋がりかねません。そうなれば、クルマを日常の移動手段として使う地域の人達を困窮させてしまいます。

 クルマの税金の話は、軽自動車と普通車が同じ次元で取り上げられることが多いですが、ふたつを分けて考えたうえで軽自動車の増税を防ぐ必要があるでしょう。

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