燃費を向上しながらターボで出力を補う有難い技術
ますます進むエンジンのダウンサイジング化。小排気量化により燃費を向上し、二酸化炭素排出量を減らしながら、出力はターボ過給で補う。この発想自体は古くからあったが、今日の大繁栄の契機をもたらしたのは欧州市場。2008年に5代目ゴルフの途中で追加された1.4リッターTSIエンジンは、非常に衝撃的だった。まだ珍しかった高効率デュアルクラッチミッションのDGSと組み合わされたこともあって、新世代パワートレインの誕生に胸が踊ったクルマ好きは多いはず。1.4リッターながらNAの2リッターに速さで遜色がなく、エコ走行をすると小排気量らしい低燃費を記録。実用的な性能面の完成度はすでに高く、これ以降、世界中のクルマがダウンサイジングターボ化を進める流れとなった。
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実用車はもちろん、フェラーリやポルシェなどのスーパースポーツ級もダウンサイジングターボ化されるにいたっている。Bセグの小型車では1リッター前後の3気筒が世界的なスタンダードに。高級車クラスも、小排気量ダウンサイジングターボ+ハイブリッドが主流になりつつある。燃費規制が自動車メーカーにとって深刻なレベルで厳しくなるなか、この流れはまだ続くことだろう。
速くてエコなダウンサイジングターボエンジンがさらに進化し、普及することは、ユーザーにとって百利あって一害ナシ。あえて言えば、ポルシェ911は伝統の高性能グレード「911ターボ」以外のカレラ系もターボ化されているので名称がややこしい、という問題ぐらいのように思える。もちろん、そんな細事は無視できる程度のことだ。
一人のクルマ好きとして、速さと環境を両立させられるダウンサイジングターボの存在はありがたい限りであり、文句を言えばバチが当たるというもの。今後もダウンサイジングターボ技術が磨かれることに期待してやまない。自動車テクノロジーの進化には、ただひたすら感謝するばかりだ。
しかし、理性的にはそう思いながらも、クルマ好きの感覚としては、いまだ不満に思う点があるのも事実。ダウンサイジングターボは100%すべてが完璧で、従来型排気量のNA車や大排気量車はもうイラナイ、とはまったく思えないのもまた現実なのだ。
官能性やフィーリングの良さでは一歩及ばず
ダウンサイジングターボエンジンが今も抱えるネガ、というかクルマ好きが感じる不満のひとつは、官能性能。スポーツモデルのダウンサイジングターボも旧型比で明らかに速く、レスポンスも良いなど性能面では何の不満もないものの、気持ち良さの面においては、どこか物足りなさを感じてしまう場面が多い。官能性やフィーリングの良さで、従来型エンジン車を超えたと思えることはほとんどないのだ。
たとえばフェラーリ488では、その旧型458時代までの「脳髄に雷が落ちて失神しそうになる」ような刺激は薄まったし、シビックタイプRでは、ターボ化されてから圧倒的にパワフルとなり、フラットトルクで扱いやすくなった反面、NA時代の他に得難い魅力だった鋭利な刃物のようにシャープな切れ味は減退した。
BMW M3(およびその流れを組むM4)では、大排気量V8をやめて伝統の直列6気筒に回帰。かのシルキーシックスが復活したのは情緒的にも歓迎されたものの、快楽さではE46型時代までに積まれたNAのシルキーシックスに遠く及ばない。
アルファロメオ各車も然り。かつてのアルファといえば、エンジン単体の気持ちよさだけでも欲しくなるクルマで、たとえばアルファ156/147GTAなどに積まれた3.2リッターのV6、あるいはアルファ155に積まれたSOHC2.5リッターのV6は、もはや内燃機関の機械ではなく「高級な楽器」のような甘美さが得られたものだ。
しかし今のアルファのエンジンは、言葉で表すと「なかなかスポーティ」ぐらいの感動レベルに落ち着いてしまう。4Cは例外的に刺激的ながら、それはレーシングカーに近い成り立ちによるもので、冷静になって乗ると、エンジン単体の刺激性はそれほど高くないと感じてしまう。
最新モデルでも各ブランドならではの「らしさ」は十分備わっているし、返す返すも性能面ではリスペクトに値する向上を遂げていて、基本的には文句はない。だが、それでもなお一抹の寂しさを感じてしまうところに、ダウンサイジングターボの課題があるように思える。
今でも単純に、同じスペックのハイパフォーマンスカーでも、ダウンサイジング系よりも大排気量、あるいはピークパワー重視の出力特性の尖ったターボエンジンのほうが、乗ってて面白いのだ。
ドライブ後、とくに意味もなくボンネットを開けて、エンジンルームをいつまでも鑑賞したくなるような情緒的なスポーツモデルの魅力。それが、かつてほどではなくなってしまったと感じるのは、筆者だけではないはず。
官能性の次に難癖を付けたくなるのは「豊かさ」だ。ダウンサイジングターボは基本的にフラットトルクで低速トルクは豊かながら、微低速域など過級圧が高まらない瞬間は小排気量ゆえのトルクの細さを感じさせる。高額車では電気モーターアシストでこれを補ったりしているが、やはり絶対的な排気量が小さいとトルクの厚みを増すのは難しく、どこか無理に絞り出しているような苦しさが伝わる場面がある。ダウンサイジングターボ車から大排気量NA車に乗り換えると、排気量の大きさがもたらす豊かさは想像以上に大きいことを実感するのだ。
あとの課題は、やはり情緒面での物足りなさだろう。大排気量&多気筒がエライという価値観はさすがに廃れたものの、小排気量&少気筒は、どうしてもスペック的にワクワク感が欠ける。フィアットのツインエアで見られた2気筒には個性の強さがあり、あるいはいっそ単気筒まで割り切れば逆に凄みを増すが、現在増殖中の1~1.5リッター前後の3気筒エンジンは、もはや新鮮味が薄れた。
しかも、現状では世界中どのブランドも似たような特性だったりするなど、ダウンサイジングエンジンは画一化されやすく、強い個性を発揮しにくいユニットだとも感じる。小型車で増えた3気筒は、V6モジュールをベースとした効率優先の結果であるなど、背景的にもグッと来るモノがない。
全般的に、現状のダウンサイジングターボは性能面では素晴らしい反面、ひと昔前のエンジンと比べると、クルマ好きが深い愛情を注ぐ対象としての魅力にはいまひとつ欠ける。それが、いちクルマ好きとしての率直な思いだ。これから登場するダウンサイジングターボには、官能性や情緒面での魅力が増すことを切に願う。
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みんなのコメント
車重に対してエンジンが小さいのか、DSGの仕様なのか、エンジンブレーキがほとんど効かないとか
乗ればわかるはずですが
ああ、ちゃんと乗ってないうわべだけで記事書いてるんですね、共感がないから薄っぺらい。
ポンピングロスも当然記さず
まあその程度の記事だわな