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走る太陽光発電「ソーラーロード」知ってる? オランダで成功、中国で盗難…日本で普及しない理由と隠されたコストとは

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走る太陽光発電「ソーラーロード」知ってる? オランダで成功、中国で盗難…日本で普及しない理由と隠されたコストとは

道路650万kmが生む電力革命

 CO2の増加による環境問題は、いまや国際的な共通課題となっている。こうしたなか、再生可能エネルギーの中核として太陽光発電が長年注目されてきた。その一方で、太陽光発電の大きな課題が設置場所の確保である。特に大規模な発電を行うには、日当たりの良い広大な土地が必要となる。実際、国内でも各地でメガソーラーの開発が進んでいるが、なかには森林を伐採して設置するケースも少なくない。しかし、CO2を吸収する森林を失ってまで発電設備を広げることには矛盾がある。こうした状況を受けて、代替策として注目されているのが「ソーラーロード」だ。

【画像】「えぇぇぇぇ!」 これが栃木県の「ソーラーロード」です(計6枚)

 道路の路面に太陽光パネルを設置し、交通インフラと発電機能を両立させるという発想である。現在、欧米を中心に実証実験が進められている。

道路650万kmが生む電力革命

 米国のスタートアップ「Solar Roadways」によれば、同国の全道路にソーラーパネルを敷設できれば、国内の電力需要を何度も上回る発電量が見込めるという。米国の道路総延長は650万kmを超えており、その規模の大きさが潜在的な電力供給力につながる。

 仮に、車両が通行していない時間帯も発電が可能であれば、エネルギー供給の安定性や効率性も高まる。ソーラーロードの本格的な実用化は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた有力な一手となる。

 日本の道路総延長は約128万kmで、世界第6位の規模を持つ。平地の限られる国土において、土地の有効活用という観点からも、ソーラーロードの導入には一定の合理性と将来性がある。

盗難と劣化に晒される路面資産

 ソーラーロードは発想こそシンプルだが、課題は多い。2014(平成26)年にようやく世界初の実証実験が行われるなど、いまだ発展途上の技術である。

 世界初の試みはオランダの自転車専用道路だった。全長70mの路面にソーラーパネルを設置し、年間で一般家庭2~3世帯分の電力を発電した。以後、米国や欧州、中国でも同様の実証が相次ぎ、中国では世界で初めて高速道路への設置も試みられた。

 各国の取り組みを通じて、いくつかの課題が浮き彫りになっている。最大の技術的ハードルは

「パネルの耐久性」

である。ソーラーロードでは、透明な強化ガラスや強化樹脂でパネルを保護しているが、重量車両の通行により表面の傷や汚れが避けられない。透過率が下がると発電効率も低下するため、実用化にはパネルの耐久性向上と、交換や保守の容易さが求められる。

 さらに、パネルの盗難リスクも顕在化している。中国では、高速道路上からパネルが剥がされる事例が発生した。国内でも太陽光発電設備の盗難は相次いでおり、パネルや電線の持ち去りが報告されている。ただし、ソーラーロードは地面に固定される構造のため、適切な施工と監視体制があれば、盗難リスクはある程度抑制できる。幹線道路などでは、通行車両そのものが抑止効果を持つ可能性もある。

 とはいえ、最大のボトルネックはコストにある。現状では、通常の舗装道路と比べて数十倍の費用がかかる。技術的には試験段階であるため、一定のコスト高はやむを得ないが、普及に向けたコスト圧縮は避けて通れない課題だ。

1kWhあたり5.8円 導入加速の転機

 ソーラーロードの技術課題は多いが、改善に取り組む企業は増えている。すでに大型車の通行に耐える高強度・高耐久のパネルも登場している。

 米国のSolar Roadwaysは新型パネルを開発中だ。高強度ガラスを採用し、トレーラーが走行してもキズがつきにくい。アスファルトと同等の強度を実現している。このパネルはモジュール単位で交換できる仕様で、メンテナンス性も向上した。

 国内では仏Wattwayが各地で実証実験を進めている。多層構造による耐久性強化を図り、都内の駅前や駐車場、コンビニなどで導入が進みつつある。あるコンビニ店舗では、年間の電力需要の

「約9%」

をまかなえるという。光熱費の削減効果も期待される。

 コスト面の課題も残るが、量産が進めばスケールメリットによる低減効果が見込まれる。太陽光発電の価格も年々下がっており、追い風はある。経済産業省によれば、世界平均の発電コストは2023年時点で1kWhあたり5.8円。10年前の半額以下になっている。国内では依然高水準にあるが、パネル単体の価格は確実に下落傾向にある。

 ただし、ソーラーパネルに加えて

「電線の敷設」

も必要なため、設置費はアスファルト舗装と比べて高額になる。一方で、ソーラーロードには路面にヒーターやLEDを埋め込めるという利点がある。雪国では凍結防止、夜間は視認性の向上といった副次的効果が見込まれ、別のコスト削減にもつながる可能性がある。

 近年は電気自動車(EV)の普及やAI関連機器の増加により、電力需要が世界的に逼迫している。ソーラーロードが十分な発電能力を持てば、カーボンニュートラル実現に向けた一歩となるだろう。(鳳つくも(自動車ライター))

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みんなのコメント

19件
  • tat********
    「走る太陽光発」って文がおかしいだろう。
  • you********
    効率的に発電するには太陽光を出来るだけ遮らずにパネルに当てる必要があるが、そうするとパネルは透明度が高いだけでなく、表面が滑らかである必要がある
    雨降ったらアスファルトとコンクリートですらグリップ力が大きく変わるのに、ツルツルの強化ガラスや強化樹脂のパネルの上でタイヤはちゃんとグリップするのだろうか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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