1974年の導入以来、50年以上もグダグダと「暫定」が続いているガソリン暫定税率。廃止になったとしても、軽油引取税の暫定税率廃止については棚上げとなっている。このままではガソリンと軽油の価格に差がなくなってしまう!?
※本稿は2025年8月のものです
文:井元康一郎/写真:トヨタ、マツダ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年9月26日号
物価高対策の暫定税率廃止なのに軽油は除外なんてアリ!? トラック輸送が恩恵を受けれず!? 軽油にかけられてる暫定税率はどうなる
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地方の反発を恐れ軽油引取税は除外
暫定税率が廃止でも軽油引取税は除外のため、ガソリンと軽油の価格がほぼ同じに!?
●軽油価格の構成(1Lあたり146円で想定)
・本体価格:101円
・軽油引取税:32.1円 ※本則税率分:15.0円、暫定税率分:17.1円
・石油炭素税:2.8円
・消費税:10.0円(軽油の消費税は本体価格+石油炭素税にかけられ、軽油取引税にはかけられない。二重課税であることは変わらないが、ガソリンと違う点だ)
暫定税率を廃止した場合の税収減は、ガソリンの揮発油税が1兆円、軽油引取税が5000億円と試算されているが、全体の税収の増加ぶりを考えれば、代替財源を確保せずとも簡単に補えるレベルだ。
しかし、自公政権が代替財源の確保を必須事項に掲げ、それに野党が引っ張られているという現状にかんがみて、今後の議論の行方は依然不透明だ。
自公政権が人質としているのは、暫定税率廃止に伴う地方公共団体の税収減。国から地方に全額が分与される地方揮発油税は1Lあたり本則4.4円だが、暫定税率を上乗せした現在の額は5.2円。
現在の暫定税率廃止論議はその影響を考慮せずに進められており、実際に地方公共団体からは反発の声が上がっている。
裏には暫定税率廃止という流れに楔を打ちたい自公政権の思惑があるものと考えられる。暫定税率を廃止すれば地方が困る、だから一気に進めるのは問題があると誘導しているわけだ。
軽油引取税の除外で国内貨物輸送量の約90%を占めるトラック輸送が恩恵を受けられないのは本末転倒
地方を盾に取る戦術の最たるものは、全額が地方税である軽油引取税の扱い。現在は1Lあたり本則15円に暫定17.1円が加わり合計32.1円となっているが、その暫定税率が廃止されれば、地方税の減収は5000億円と甚大なものになる。
ゆえに現在、軽油引取税の暫定税率廃止については棚上げとなっている。
しかし、暫定税率といういびつな課税構造の是正という本来の趣旨に照らし合わせれば、軽油引取税の棚上げも許されることではない。
国家と地方は一体なのだから、地方が困らないよう国全体で税の分配を調整すべきものであって、地方が困るからできないというのは暫定税率維持のための言い訳でしかないのだ。
今後も紆余曲折が予想される暫定税率の改廃論議。納税者である我々は制度が正当に改革されるよう、しっかり声を上げ続けることが求められる。
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