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【独占告白】F1を拒絶する毎日……苦しい10年を乗り越え、人生の“新章”に突入したハイメ・アルグエルスアリ

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【独占告白】F1を拒絶する毎日……苦しい10年を乗り越え、人生の“新章”に突入したハイメ・アルグエルスアリ

 2009年に、当時史上最年少となる19歳でF1デビューを果たしたハイメ・アルグエルスアリ。彼は2011年までトロロッソでドライブした後、2015年に25歳の若さで突如レーシングドライバーを引退した。あれから歳月が経ち、彼は再びモータースポーツへの情熱を取り戻しつつあり、現在はカートレースなどに出場している。

 アルグエルスアリがレーシングドライバーを引退するきっかけとなったと言えるレースが、2015年6月6日に行なわれたフォーミュラE第9戦モスクワ。彼は当時のことを次のように語った。

■元F1ドライバーのアルグエルスアリ、カートでレース復帰目指す。6年前に25歳の若さで一度引退

「子供の頃から、ヘルメットの中で笑えなくなった日には(レースを)続ける意味がない、諦めようと誓っていた。その時がモスクワで来たんだ」

「僕は(レース後に)気を失ってしまった。それは偶然の出来事ではなかったと思う。長い間、僕はサーキットに行くことを考えるのも嫌になっていたし、これは自分の歩みたかった人生ではないと気付いたんだ」

 その4ヵ月後、アルグエルスアリはモータースポーツからの引退を表明することになる。

「失望と痛みを抱えたままでの引退だった。僕の頭の中にはまだF1が残っていて、心の傷は癒えぬままだった」

「この仕事には愛情を持って取り組まないといけないし、そうじゃないとベストは尽くせない。モスクワで失神したことはある種の警告だったと思う。やる気はなく、笑顔もなかったんだ。チーム内でもうまくいっていなかった。もちろん勝ちたい気持ちもあったけど、なぜ遅い時とそうでない時があるのか分からず、頭を悩ませていた。フォーミュラEでの1年目は本当に多くの問題があったんだ」

 そう語ったアルグエルスアリ。彼はフォーミュラEへの参戦を始める3年前、レッドブルに見限られてF1の世界を追われる事になったが、そこから既に彼の精神は不安定になっていたようだ。

「F1に対して、ヘルムート・マルコ(レッドブル相談役)に対して、レッドブルに対して、そして自分に起きた全てのことに対して、怒りと拒絶を感じながら生きていた時期だ」

 F1を離れることになり、フォーミュラEに参戦するまでの約3年間について、アルグエルスアリはそう表現した。

「僕はモビスター(母国スペインのTVチャンネル)の解説に挑戦しようとしたけど、サーキットに着くやいなや気分が悪くなってしまった。その場にいることが辛く、自分の居場所だとは思えなかった。そして僕は23歳にして、自分が持ち続けていた音楽への情熱にしがみつくようになったんだ」

 引退後アルグエルスアリは、“スクワイア”という名前で音楽活動を行なうようになる。彼曰く、モータースポーツから離れた後、“ハイメ・アルグエルスアリ”とは一旦別れを告げ、“スクワイア”という新たな人格として再出発を切ったという。しかし、”その瞬間”は突然訪れた。

「ある日、家族ぐるみの付き合いのセテ・ジベルナウ(元MotoGPライダー)から、『週末ウチにおいでよ』と連絡があった。彼の家の近くにはゴーカート場などがあって、僕たちはカートに乗りに行ったんだ」

「カートに乗るのは7年ぶりだったから、特別な瞬間だった。ヘルメットを被って、カートでコースを走ると、1周するごとに忘れかけていた感覚が蘇ってきた。ヘルメットの中では笑っていたし、思わず『ワオ!』と言ってしまった。そしてすぐに考え始めたんだ。『僕はまだ歳じゃない。腕もそんなに錆び付いていない、あとは体重を少し落とせば……』と。僕にはドライブをしたいという大きな欲求があることに気付かされたんだ」

 F1最年少デビューから12年。31歳となったアルグエルスアリは幾多の歳月を経て、再び“ハイメ・アルグエルスアリ”としての考えや価値観を取り戻すことができたという。F1という世界にも、ようやく笑顔で向き合うことができるようになったようだ。

「僕はスクワイアだけど、またハイメ・アルグエルスアリにもなれたような気がする」

「今の僕はF1のパドックに戻り、クリスチャン・ホーナー(レッドブルチーム代表)やマルコと笑顔で挨拶できる。時間はかかってしまったけど、彼らの存在は以前より僕を苦しめなくなった。僕は31歳になり、全く違った人間になったと思う。僕はハイメでもありスクワイアでもあるんだ。色んなことができるし、色んな環境の中でもうまくやっていくことができる」

「僕はありがたいことにチャンスに恵まれてきたと思う。たくさんのレースに出て、F1でもポイントを獲れた。確かにレッドブルや速いマシンで走るチャンスはなかったけど、それでも十分恵まれていたし、感謝しないといけないことに気付きはじめたんだ。この辛い時期に区切りを打つのに10年かかってしまったけど、僕はこの章を終わらせ、サーキットに戻ることを決めた」

「以前は、F1に関するものがテレビで流れたらチャンネルを変えていたし、新聞を読む時も同じようにページを変えていた。今はアルファタウリのピットに行って、フランツ・トスト(チーム代表)とハグできる。楽観的に考えられるようになったし、自分がいかに幸運かに気付いたんだ」

 現在はカート場で、レーシングドライバーを目指す子供たちと話す機会が多いというアルグエルスアリ。そんな少年少女たちやその親からアドバイスを求められた時、彼はこう返すという。

「楽しんで、自分がここにいられるのは幸運なことだと忘れないようにね」

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みんなのコメント

1件
  • 成績だけで頭いっぱいになっていたのだろうか?
    結果が良くない時もどうしたら良くなるのかを提案して実践、トライ&エラーを繰り返す事も楽しまないと続けられないとなるのかな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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