常時排水している地下鉄トンネル
水は少しでも隙間があれば流れ込んできます。それは鉄筋コンクリートの強固なトンネル内を走る地下鉄も例外ではありません。
【貴重な記録】戦前の地下鉄浸水被害と復旧の様子を見る(写真)
例えば小さなところでは、地下駅の天井にビニールなどで即席の導水管が設置されているのを見たことがあるでしょう。穴をふさげばいいと思うかもしれませんが、地下水の圧力は強く、ひとつをふさいでも他の場所から水が出てくるのです。同様にトンネル内には様々な理由で水が流れてくるため、トンネルは水を集めやすい構造にして常時ポンプで排出しています。
深刻なのは災害による浸水です。東京では2004(平成16)年の台風22号で古川が氾濫し、南北線麻布十番駅がホーム半分近くまで浸水した事例があります。また、2000(平成12)年の「東海豪雨」など、線状降水帯が引き起こす記録的豪雨で地下駅が浸水した事例が各地にあります。
短時間で局地的な大雨が降ると、周囲から低い土地に水が流れ込み、排水能力が追い付かなくなった下水道や排水路から雨水があふれ出す「内水氾濫」が発生します。
直近では2024年8月21日、東京の新宿区や港区を中心に発生した集中豪雨で、東京メトロ市ケ谷駅、麻布十番駅、都営地下鉄国立競技場前駅の構内に大量の雨水が流れ込み、浸水しました。「市ケ“谷”」の名前が象徴的ですが、地形図を見ると3駅はいずれも周辺より低地であることが分かります。
気象庁によれば、全国で大雨の年間発生回数は有意に増加しており、1時間降水量80mm以上などの強い雨は1980年頃と比較して、おおむね2倍程度の頻度となっているそうです。この変化には地球温暖化が影響している可能性があり、今後はさらなる増加も懸念されています。
もっとも、集中豪雨による浸水被害は、今に始まったことではありません。日本初の地下鉄浸水被害は1935(昭和10)年10月27日に発生しました。
日本初の地下鉄浸水被害 その顛末は
90年前の10月27日は、前日から降っていた雨が正午頃から急に強まり、東京都心では当時の観測史上最大、現在でも歴代8位となる1時間降水量70.5mmを記録し、東京市内で床下浸水1万1千戸、床上浸水1200戸が発生しました。
地下鉄は14時頃から上野駅で浸水が始まると、末広町駅を走行していた浅草行き列車が側壁の通風口から滝のように流れ込む水に突っ込み、運転台のガラスが破損して運転士は負傷。当日は全線で運転中止となりました。
浸水開始からわずか20分後には、上野駅はレール上約1m、田原町駅50cm、排水のためトンネルが深くなっている末広町~神田間はトンネルの半分近い1.8mもの浸水となったそうです。翌日から一部区間で折り返し運転を行い、29日に全線で運転を再開しました。
終戦直後の1945(昭和20)年9月3日には、8月末から降り続いた長雨が豪雨となり外苑前駅周辺の道路が30cmも冠水しました。雨水は外苑前駅南側の笄川(こうがいがわ)に流れ込み、氾濫。その水が近くの通風口からトンネル内に流れ込みました。
3日夕方には排水ポンプの能力を上回る雨水が流入し、レールは徐々に浸水。それでも終車まで運転を継続したのは終戦前後らしいエピソードですが、深夜になると水勢はますます激しくなり、ついに外苑前駅は天井下30cmまで、ほぼ完全に水没してしまいました。30台のポンプをかき集めて排水し、ようやく13日に運転を再開できました。
第三軌条方式の銀座線などは言うまでもなく、その他の路線も線路付近に様々な電気設備があるため、レールが冠水すると復旧が大変です。特に制御装置が水没すると致命的なので、過去に浸水被害を受けた名古屋市営地下鉄は、名城線の途中区間から機器のかさ上げや非常用ポンプを設置するなどの対策を行っています。
心臓部まで水に浸かった地下鉄の職員対応とは?
それでも浸水してしまったらどうするか。その苦労と鉄道人の底力を物語るのが「内閣府防災情報のページ」に掲載された福岡市地下鉄職員の証言です。
博多駅は2003(平成15)年7月の福岡水害でホーム面近くまで浸水し、様々な電気系統の設備が水没しましたが、翌日に運転を再開。「電気系統のものがたくさんありますから、あるものは部品を交換し、あるものは完全に乾かすというやり方で対応」したと振り返っています。
対策は水の侵入を防ぐしかありません。地下駅には出入口ごとに止水版が用意してあり、緊急時は土嚢を積み上げます。また過去、幾度も浸水の原因となったトンネル通風口には、雨を感知して自動的に閉扉する浸水防止装置が設けられています。
また東京メトロ、都営地下鉄は荒川氾濫時の大規模浸水に備え、地上からトンネルに入る坑口や出入口そのものを密閉する防水扉の整備を進めており、浸水対策は飛躍的に向上しています。しかしそれでも2024年の事例のように浸水被害が起こり得るのが現実。水との戦いは地下鉄の宿命と言えるのです。(枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家))
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