■新型「ヤリス」に搭載される世界初の駐車システム、ついに普及か?
クルマの先進装備のなかには、ボタンひとつで“ほぼ自動”で駐車してくれるシステムが存在します。日産の「プロパイロット パーキング」など、自動車メーカー各社で導入が始まっていますが、日常生活の中で実際に使う人が増えている印象はありません。
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なぜ、駐車支援システムは本格的な普及が進まないのでしょうか。
筆者(桃田健史)は、駐車支援システムが普及しない理由を知るために、最新型のシステムを体験してみました。
最新の駐車システムを搭載したクルマは、2020年2月に発売予定のトヨタ新型「ヤリス」です。トヨタ初となる高度な駐車支援システム「アドバンスト パーク」が1.5リッターハイブリッドの全グレードに標準装備されます。
さらに、世界初の機能として、白線のない駐車場でも事前に駐車位置をシステムに登録することで、ほぼ自動で駐車が可能となります。2019年11月上旬に千葉県内のサーキットでおこなわれた新型ヤリスのメディア向け試乗会場のパドックエリアで体験しました。
操作の手順としては、まず駐車したい場所の真横にクルマを停めます。距離はだいたい2m以内が目安です。そして駐車支援システムのボタンを押すと、カーナビ表示などが出る画面に後向き駐車か縦列駐車かを選択する表示が出ます。
後向き駐車を選択してみたところ、ブレーキから足を離すと、自動的にハンドルを切りながら前進して自動で停止。R (後退)にシフトチェンジしてください、という表示が出るので、シフトチェンジしてブレーキから足を離すと自動で後退していきます。
また、世界初の機能となる白線のない駐車場での使用では、後向き駐車か縦列駐車を選ぶ画面で駐車位置選択をおこない、最終的に自分で駐車枠を登録するだけの簡単操作で済みました。
使い慣れれば便利に感じるはずの、こうした高度な駐車支援システム。本格的に普及しない理由は、いくつかあると筆者は思います。
■駐車支援システムの普及を阻む理由は「そもそも論」?
それほど普及がすすまない理由のひとつに、販売される地域で異なる駐車向きの問題があります。
トヨタの開発者は、「国別では、日本は後ろ向き、アメリカは前向き、そしてヨーロッパは縦列駐車が主流です。そうした国別の事情を、新型ヤリスでは結果的に考慮したことになります。
なぜならばこのクルマはアメリカでの発売予定がないことが、前向き駐車に対応していない理由のひとつといえます」と説明しています。
駐車の向きが国や地域で違う理由については、筆者の世界各地での体験から考えると、駐車スペース、または駐車場内の通路が広い場合に、前向き駐車となる比率が上がると思います。
それに該当するのが、主にアメリカですが、日本でも地方都市のコンビニなどではコンビニの敷地が広いために、前向き駐車が多い印象があります。
ちなみに、技術的には新型ヤリスに搭載されるアドバンスト パークでも、日産やメルセデス・ベンツが採用しているような、前向きでの自動駐車システムを実装することは可能だと前出の開発者はいいます。
ただし、駐車支援システムでおこなう前向き駐車では、後向きと縦列と同じように、クルマをいったん駐車スペースの横に並べる必要があります。
これについては「本来、ドライバーが前向き駐車をおこなう際は、クルマを駐車スペースのそばに並べることはあまりなく、駐車スペースのかなり後方から一気にハンドルを切って入れるケースが多いです。
その方法を駐車支援システムで真似るとなると、かなり後方から前方の状況をしっかり把握する必要があり、それは現在搭載しているセンサーだけでは実現できません」(トヨタ関係者)。ちなみにアドバンスト パークには12個のセンサーが使われ、カメラは4個装備されています。
高度な駐車支援システムがなかなか普及しない理由はほかにもあります。それは必要性の高さです。
今回体験したように、確かに「あれば便利」かもしれませんが、2019年現在においては、結局「自分で駐車したほうが楽」という人が多いはずです。
最近のクルマは、後退時に障害物があると警報が鳴ったり、自動でブレーキがかかるシステムの装着比率が上がっていますので、自動駐車でなくても安心して後ろ向き駐車ができるようになっています。
技術がそこそこ進化したとしても、実際に必要かどうか。これを社会受容性といいます。自動運転の研究で最近、頻繁に使われる言葉です。
今後、自動運転の技術開発がさらに進むなかで、画像認識技術のレベルも向上して、カメラや各種センサーの量産効果が上がることで、トヨタでも前向き駐車に対応する、より便利で高度な駐車支援システムを搭載したクルマが登場するのだと思います。
そうした技術進化と社会受容性のバランスが、高度な駐車支援システムが普及するための指針になりそうです。
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