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ロールス・ロイスの美学はわずか0.5ミリの薄片にも宿る! 知られざるウッドパネル製造現場の「インテリア・サーフェス・センター」のヒミツ

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ロールス・ロイスの美学はわずか0.5ミリの薄片にも宿る! 知られざるウッドパネル製造現場の「インテリア・サーフェス・センター」のヒミツ

インテリア・サーフェス・センターの舞台裏を紹介

英国ウェスト・サセックス州グッドウッドにあるロールス・ロイスの本社は、手作業で製造される世界で唯一の場所です。1台のクルマを製造するには600時間以上を要し、複雑な場合は4年を要することもあります。今回はロールス・ロイスのクラフツマンシップについて4回のシリーズに分けて紹介します。第3弾はインテリアのウッドパネルの製造を行うインテリア・サーフェス・センターです。

ロールス・ロイスにしかないインテリアはかくして作られる! 他メーカーの追随を許さない「インテリアトリム・センター」のヒミツ

30種以上の選択肢と、希望を叶える調達対応

長年にわたり、インテリア・サーフェス・センターは「ウッドショップ」と呼ばれていたが、現在の名称はこの部門が近年に経験した大きな変化を反映している。ウッドは依然として主要な素材であるが、専門の職人たちはカーボンファイバーや金属、さらに多様なラッカー仕上げ、塗装仕上げ、装飾仕上げといったハードサーフェスにも精通している。

ロールス・ロイスにおいて視認できる木製部品は、すべてベニア板を使用して製造されている。ベニア板とは、下地に接着された薄い木の板のことである。1台のクルマに使用されるベニア板の部品はすべて同じ木材から作られており、色合い、模様、木目は、そのクルマに唯一無二の指紋を与えるものであり、正確な複製は不可能である。また、これは木製パーツが均一に経年変化することを保証するものであり、多くのロールス・ロイス車が世代を超えて受け継がれることを鑑みると、極めて重要な要素である。

顧客は約30種類の木材から選択でき、さらに染色、オーバーレイ、特殊処理などによって多様な効果を得ることが可能である。特定の個人的思い入れのある樹種を指定し、同社がそれを調達することもできる。ただし、指定された木材は制限種や絶滅危惧種でない場合に限られる。

レーザーカットによる緻密なパーツ製作

工場に到着したベニアは芳香を放つ加湿室に移され、最低3日間、温度23℃、湿度75%という安定した環境で保管される。湿度管理は木材のひび割れ防止に不可欠であると同時に、木製部品が持つ複雑な形状に対応する柔軟性を保持するためにも必要である。

ほぼすべてのベニアパーツは、まず準備エリアにおいて加工される。専門職人が木目や模様を調整し、クルマ全体にわたって統一された美しいラインを作り出す。ロイヤルウォールナットのように木目がまっすぐな木材は、正確に55度の角度でシェブロンパターンに合わせて配置される。バーウォルナットのような複雑な木目を持つ木材は、ブックマッチ技法によって左右対称の鏡像パターンを生み出し、手作業で正確に縁を整えて研磨される。

このように整えられたベニアは接着されて大判の板にプレスされ、そこからレーザーによってクルマの全パーツが精密にカットされる。各ベニアパーツは接着シートを挟み込みながら数層に重ね、熱と圧力を加えて一体化し、さらなる加工が可能な強度を備えた多層構造の表面を形成する。完成したベニアパネルは、鋳造アルミニウムまたは複合素材で成形されたキャリアパーツに大型プレス機で接着される。すべてのベニアパネルは、完成クルマに取り付けられた後も、過酷な運転条件下での安定性を確保するため、高温および低温環境でのテストが実施される。

人の目こそ、究極の検査機

その後、部品は仕上げ工程に進み、熟練の職人がベニアの傷をすべて除去する。職人は使用されているのと同一のベニアから色調を正確に合わせた微細な薄片をメスで切り出し、傷のある箇所に接着してホットプレートで密封する。

仕上げが完了したすべてのパーツは、オービタルサンダーを用いて手作業で丁寧に研磨される。どれだけ木材表面を削るかの判断には熟練の目と安定した手先が求められる。木管楽器のリードのような繊細な部位は、サンドペーパーを用いて手作業で仕上げられる。

ラッカー塗装工程に進む前に、各パーツは最終検査を受ける。経験豊富な職人がラッカー仕上げを模した下塗りを施し、表面に残る微細な欠陥を目視で確認する。ここでは一切のテクノロジーを使用せず、すべての判断は人の目と感性に委ねられる。欠陥が見つかったパーツは、再度仕上げ工程に戻され、修正が施される。

最終工程においては、加工済みのパネル部品に0.3mmのラッカーを複数層にわたり塗布する。各層は温度や気圧などの条件により異なるが、およそ20分間の乾燥時間を要する。全層の塗布完了後、表面にはオレンジピールと呼ばれる微細な凹凸が現れるが、これを除去すべく研磨が施され、深い鏡面のような輝きが得られるまで磨き上げられる。木目やテクスチャを際立たせ、触感を生み出すオープンポア仕上げには、特別に開発されたマットシーラーが使用される。

天然木と異素材が織りなす革新的なデザインベニア

さらに個性を際立たせるため、インテリア・トリム・センターのチームは、天然木と他素材の組み合わせによる手作りのデザインベニアの開発にも常時取り組んでいる。これらの革新的ベニアは、特殊なプレス技術により波状模様を施したり、銅などの金属を組み込むなどして、独創的なデザインを実現している。現在、デザインウッドパネルのラインナップには、オブシディアン・アユース、リネア・シルバーバーチ、ダークアンバーが含まれており、さらなる新作も開発中である。

これらのパネルは、天然のベニアシートを何層にも重ねて高圧プレスし、堅牢な木材ブロックを形成した後、それを0.5mmの薄さにスライスし、内装部品として使用される。

AMWノミカタ

イギリスの自動車会社ではウッドパネルの製造ラインを一般的には「ウッドショップ」という名称で呼ぶ。ロールス・ロイスはこの名称をあらためて「インテリア・サーフフェス・センター」と呼ぶようになったが、確かに現代のモデルではウッドパネルだけではなくアルミニウムやカーボンファイバーのトリムも増えてきたので、この名称変更は理にかなっている。

ベニアの仕上げの工程で、傷を切り取った小片のベニアで埋める作業をしているということは初めて聞いた。このような作業はベニアを高温で圧着させる前に行われるのだろうと考えていたが、熱と圧力をかければ当然思いもしないダメージを負うこともある。1枚のウッドパネルにそこまで丁寧な仕事がされていることに驚く。顧客の期待は早くクルマを手に入れることでなく、完璧な車を手に入れることである。ロールス・ロイスのオーダーバンクがいくら増えようとも、このプロセスに掛ける時間は変わらないのであろう。

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みんなのコメント

1件
  • tondemo310
    ロールスロイスは元々エンジン・シャシーメーカーだった。これにコーチビルダーが豪華内装を含むボディを架装した。しかし、モノコックボディになるとコーチビルドが困難になり、パークウォードが吸収されて車内コーチビルダーになった。かつてはロールスロイスにパークウォードという車種があった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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