熟成したボルボの大型SUV「XC90 Ultra T8 AWD Plug-in hybrid」ならではの魅力とは? 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
ボルボXC90 Ultra T8 AWD Plug-in hybridの特徴
本質的な豊かさを追求したSUV──ボルボXC90 Ultra T8 AWD Plug-in hybrid試乗記
1.概要2.タイムレスなデザイン3.静かで力強い1.概要
2010年代半ば、長きにわたるボルボの歴史において、ブランドのイメージを大きく覆し、新たな時代への扉を開くエポックメイキングなモデルが誕生した。それが、現行型となる第2世代のXC90である。
デビューからすでに10年近くの歳月が経過しようとしているものの、目の前に佇む堂々たる姿からは、いささかも古さを感じさせない。
むしろ、年を重ねるごとにデザインのタイムレスな魅力が際立ち、洗練の度合いを深めているようにすら思えた。
今回試乗したのは、そんなXC90のラインナップにおける最高峰グレードのUltra T8 AWD Plug-in hybrid。車両本体価格は¥12,940,000、多彩なオプションを含めれば¥13,600,000を超える、名実ともにボルボのフラッグシップを担うラージクラスSUVだ。
電動化の波が押し寄せる現代の自動車産業において、熟成を極めたPHEV(プラグインハイブリッド)モデルがどのような価値を提示してくれるのか……今回、湘南の海風を感じながら、じっくりとその真価を探ってみた。
2.タイムレスなデザイン
エクステリアでは、北欧神話の雷神が持つハンマー「トールハンマー」をモチーフにした象徴的なLEDヘッドライトや、無駄なプレスラインを排したクリーンな面構成が、静かで知的な存在感を放っている。
サイズに目を向けると、全長4955mm、全幅1960mm、全高1775mmの立派な体躯を持つ。しかし、ここで特筆すべきは、全長が5mを切っている点だ。現代のプレミアム・ラージクラスSUVは、モデルチェンジのたびに肥大化を続ける傾向にあり、5mを超えるモデルも決して珍しくはない。その中にあって、XC90は日本の都市部や狭い路地でもギリギリ扱いやすい、絶妙なサイズ感をキープしている。
大柄でありながらも持て余さないこのパッケージングは、日常の足として使い倒す上で非常に大きなメリットとなる。
3.静かで力強い
リヤゲートに輝く“T8”のバッジが示す通り、本モデルはボルボが誇る強力なプラグインハイブリッドシステムを搭載している。
ボンネットの下には、2.0リッターの直列4気筒ターボエンジン(最高出力233kW/317ps、最大トルク400Nm)が収まり、これにフロント(52kW/165Nm)とリア(107kW/309Nm)の電気モーターを組み合わせた電子制御AWDシステムを採用している。フロア下に敷き詰められた駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は18.8kWhで、カタログ上のEV走行換算距離(WLTCモード)は73kmを誇る。
実際に試乗を開始し、まずは平塚の街中を電気のみのモーター駆動で走り出す。メーター上の表示では、ほぼ満充電の状態で約53kmのEV走行が可能と表示されていた。日常使いなら完全なEVとして使える。
ボルボは近年、「EX30」のようなピュアEV(BEV)を積極的に市場へ投入しており、そこで培われた電気駆動に関する膨大な知見が、XC90のハイブリッド制御にも見事にフィードバックされているように思う。アクセルペダルに対するモーターの反応はナチュラルであり、唐突なトルクの変動やショックを感じさせることはない。
走り出してすぐに気づくのは、圧倒的な静粛性の高さだ。ボディの各所に入念に配置された吸音材などの効果により、外界の喧騒は見事にシャットアウトされている。静寂に包まれたキャビンでリラックスしてステアリングを握っていると、車両重量2300kgに達するヘビー級のクルマを操っていることをすっかり忘れてしまうほど、その走りは滑らかで軽快だ。
しかし、ひとたびアクセルを深く踏み込めば、穏やかな表情は一変する。
電気モーター特有のトルクの立ち上がりの速さにより、シートバックに背中が強く押し付けられるほどの強烈で息の長い加速を披露するのだ。
さらに、ドライブモードを「パワーモード」に切り替え、タイトなコーナーが連続するワインディングロードへと車両を進めてみた。すると、エンジンとモーターが常にスタンバイ状態となり、ステアリングの操舵感も適度な重さとソリッドな手応えを増し、全体がよりスポーティな味付けへと変化する。
2.3tの重量級ボディでありながら、コーナーをハイペースで駆け抜けても不快なロールは抑え込まれ、ステアリングの操作に対してノーズが素直に向きを変えていく。車体を意のままに振り回すようなドライビングでも破綻をきたさない、シャシー性能の熟成度合いには心底驚かされた。
専用のチューニングが施された「R-Design」や「ポールスター・エンジニアード」といったスポーツ特化のグレードでなくとも、これほどまでに刺激的な走りを楽しめるのだ。普段は心優しいファミリーSUVとしての顔を持ちながら、いざとなればドライバーの要求に応えてスポーティな一面をのぞかせる懐の深さとギャップこそが、熟成されたXC90の魅力のひとつである。
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