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【F1分析】順調ならば、角田裕毅入賞の可能性も十分にあった……しかしコラピントとの接触で、全ての可能性潰える。そして”溶けて”いったミディアムタイヤ

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【F1分析】順調ならば、角田裕毅入賞の可能性も十分にあった……しかしコラピントとの接触で、全ての可能性潰える。そして”溶けて”いったミディアムタイヤ

 F1オーストリアGP決勝で角田裕毅(レッドブル)は、完走したマシンの中で最下位となる16位でチェッカーを受けた。しかしレース中のペースの推移を分析すると、十分に入賞も可能だったように見える。

 苦悩が続く角田。オーストリアGPの決勝レース終了後には「タイヤが溶けているみたいだ」とそのペース不足を語った。しかしレースペースは、それほど悪いものではなかった。とはいえ、トップグループと比べると、大きな差があるが。

【コラム】角田裕毅がレッドブル入り。彼の野望「チャンピオンになる」ためには、避けては通れない”一歩”

 角田は予選でうまくいかずにQ1敗退。決勝レースは18番グリッドから、ミディアムタイヤを履いてスタートした。

 上位勢(そのうちの1台はチームメイトのマックス・フェルスタッペンだった)がリタイアしたことなどもあって、角田はスタート直後に15番手までポジションを上げた。この時後方には、最終的に9位入賞を果たすニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)らがいた。そして目の前にはハースのエステバン・オコン……彼も、最終的には10位入賞を果たしたドライバーである。

 角田はなかなかオコンを抜くことができなかったが、第1スティントも第2スティントも、そのペースはオコンやヒュルケンベルグと同等であった。特に第2スティントでの角田のペースは、オコンやヒュルケンベルグよりも速くなりつつあったため、これを続けていけば、いずれかのタイミングでこの2台を攻略できる、そんなタイミングが訪れていた可能性は十分にある。

■ハードタイヤでのペースは良好。しかしミディアムには大いに苦しんだ

 このグラフは、レース中の中団グループのペース推移をグラフ化したものだ。第1スティントは他のマシンと同等だが、第2スティントの赤丸で示した部分では、オコン(濃いピンク色の実線)やヒュルケンベルグ(蛍光緑の点線)、ボルトレト(蛍光緑の実線)より角田(紺の実線)のペースが速くなっている。この時角田とオコンはハードタイヤ、ザウバーの2台はミディアムタイヤを履いていた。

 しかしその直後、30周目のことだった。角田はアルピーヌのフランコ・コラピントと接触し、ピットインを余儀なくされてしまう。これにより、角田が入賞を目指すチャンスが事実上潰えた。

 角田はコラピントとの接触の接触の責任を問われて10秒のタイム加算ペナルティ受けた。しかもこの接触により、まだ使用履歴が短かったハードタイヤを捨てることになってしまったのだった。この時角田に残っていたタイヤはミディアムとソフト……しかしまだ40周以上周回数が残っていたため、さらにもう1回ピットストップが必要であることは明らかだった。

 緊急ピットインで履いたミディアムタイヤのデグラデーションが少なければ、そのままチェッカーを目指すこともできたかもしれない。しかしミディアムのデグラデーション(性能劣化)は大きく(グラフ青丸の部分)、これではチェッカーを目指すことは不可能……実際にもう1回ピットストップする羽目になった。

 なおこのミディアムタイヤのデグラデーションの大きさは、角田が「タイヤが溶けているよう」と表現した通りの状況を示している。

 ヒュルケンベルグ(蛍光緑の実線)は、第2スティントと第3スティントでミディアムタイヤを履いていた。しかしデグラデーションの傾向は見られず、逆に走れば走るほどペースが上がっていった(グラフ紫丸の部分)。ボルトレトも、第1、第2スティントでミディアムタイヤを履き、ヒュルケンベルグほどではないものの、やはりデグラデーションが小さかった。ここから、ザウバーのマシンがタイヤに優しいモノに仕上がっているということがよく分かる。今後も、高いパフォーマンスを発揮する可能性が高いと見ていいだろう。

 一方角田に目を戻すと、このミディアムタイヤでのデグラデーション値は、中団グループのマシンと比較してもかなり大きく、足枷になっているだろうことは間違いない。

 つまり今回のマシンは、ハードタイヤには合っていたが、ミディアムには全く合っていなかったのではないかと想像できる。そしてハードタイヤを存分に活かす戦略でしか上位を目指すことはできなかったが、その可能性はコラピントとの接触で潰えた。もちろん、このコラピントとの接触により、マシンにダメージが及んでいたからという可能性も否定できないが。

 角田は今回のコラピントとの接触については、自らの非を認めている。接触した際、コラピントは異なる戦略で走っており、ペースも角田に対してかなり劣っていた。そういう意味では、あのタイミングで無理してオーバーテイクを仕掛ける必要はなかったわけだが、オコンを攻略して入賞を目指すためには、少しでもロスを少なくしたかったがための焦りがあったのかもしれない。

 今のレッドブルには、フェルスタッペンも苦労しているように、以前のような輝きはない。角田としては、かなり厳しいタイミングでのレッドブル入りとなってしまったが、それを嘆いても仕方がない。次のイギリスGPは1週間後……それまでに対策を施し、少しでも前進する姿を見せてほしいものだ。

文:motorsport.com 日本版 田中 健一

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みんなのコメント

10件
  • t_b********
    順調でも入賞はあり得ない
    予選タイム見れば歴然です
  • ott********
    これ以上遅くならない所まで来ちゃったけど、後は速くなるだけと言えないもどかしさ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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