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「大砲ついていたら戦艦じゃないの?」←違います!「じゃあ、何て呼べばイイの?」じつは便利な呼び方あるんです

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「大砲ついていたら戦艦じゃないの?」←違います!「じゃあ、何て呼べばイイの?」じつは便利な呼び方あるんです

病院船も軍艦の一種

 ミリタリーファンにとっては常識でも、知識のない一般の人では見分けがつきにくいもののひとつに、「軍艦」と「戦艦」の違いがあります。大砲がついていれば何でも「戦艦」と呼んでしまうかもしれませんが、じつは明確な線引きがされているのをご存じでしょうか。一般にはなじみのない「軍艦」と「戦艦」の違い、そして現在の状況について解説してみましょう。

【画像】これが現存唯一の日本戦艦です

 ひとくちに「軍艦」といっても、その種類は多岐にわたります。最も広い定義では、軍が保有し運用している艦船は大小問わず軍艦になります。

 ここには海戦で直接戦闘には加わらない輸送艦や練習艦などをはじめ、試験艦や音響測定艦といった特殊な用途に使われる艦船、いわゆる支援艦(補助艦)も含まれます。普段は世界各地で医療支援を実施し、新型コロナウイルス禍でも活躍したアメリカ海軍の病院船「マーシー」も、広義の軍艦といえます。

 それでは「戦艦」とは、どのようなものなのでしょうか。保有する国/軍が「戦艦」と呼称すれば戦艦になるのですが、あえて定義するとしたら「砲撃で相手の艦船を撃破するために作られた船」というのが、近代以降の戦艦だといえるでしょう。

 見分け方としては、威力の大きな大口径の砲を多数装備し、その発射時の反動でひっくり返らないよう、大きな船体になっていることが挙げられます。このほかにも有効射程の長い大口径砲を活用する関係で、遠くまで見通すための高い艦橋構造物やマスト(見晴し台)を持っているのも特徴に挙げられます。

 その定義で各国の海軍が保有する現役の艦船を見渡してみると、実は「戦艦」に分類される船は1隻もいないことがわかります。というのも、現代の海戦において砲撃戦で決着をつけるということは想定されず、砲撃戦を専門とする戦艦が「時代遅れ」の存在となったためです。

 戦艦が時代遅れの存在になったきっかけは、第二次世界大戦で確立された「空母などを中心とした航空戦力による攻撃」でした。

 航空機は戦艦の主砲が持つ有効射程より航続距離が長いので、主砲の射程外にいる空母や陸上基地から発進してくるうえ、艦船と比較すれば非常に小さく速い存在なので、主砲による攻撃が命中しにくく、せっかくの大口径砲も役に立たなくなったのが大きな理由と言えます。

戦艦が廃れてしまったワケ

 1941年のマレー沖海戦で、日本の陸上攻撃機隊がイギリス海軍の戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋戦艦「レパルス」を撃沈したこと、そして戦争末期の1945年、沖縄へ向けて出撃した日本の戦艦「大和」がアメリカ海軍の空母艦載機隊によって撃沈されたことは、象徴的な出来事といっていいでしょう。

 さらに、ミサイルの発達も見逃せません。大砲は発射した砲弾が風に流され、最初から狙い通りに命中させるのが難しいのに対し、ピンポイントに誘導できるミサイルは高精度の攻撃が可能です。

 このため現代の海軍では、飛行機を運用する大型の空母や強襲揚陸艦などを除けば、小回りの利く駆逐艦やフリゲートといった小型の艦種が主力となっており、メインの兵装も主砲は1つ(1門)だけ、あとはミサイルを発射する装置が多くを占めています。私たちが艦船見学などで目にする「大砲を積んだ船」は、ほとんどが駆逐艦またはフリゲートだといっていいでしょう。

 海上自衛隊の護衛艦も、国際的には「駆逐艦」もしくは「フリゲート」に分類されています。なお、大型で全通甲板を持つ「ひゅうが型」や「いずも型」は、文献によってはヘリコプター空母や軽空母とされる場合もあるようです。

 戦術の変化によって時代遅れになり、世界中の海軍からすべて退役してしまった戦艦ですが、その大きさと多くの主砲を持つ特徴は「海軍の象徴」として非常にわかりやすく、各地で記念艦という形で保存されています。

 日本でも、日露戦争でバルチック艦隊を打ち破った日本の連合艦隊旗艦を務めた戦艦「三笠」が、神奈川県横須賀市で「記念艦三笠」として一般公開されています。また、1945年に日本の降伏文書調印式が開かれたアメリカ海軍の戦艦「ミズーリ」は、ハワイの真珠湾で記念艦として、その姿を見ることができます。

 砲が積んであれば何でも戦艦というわけではありません。加えて、いまや現役の戦艦は1隻もなく、日本で見られる戦艦は横須賀の「記念艦三笠」だけ、と理解していただければ幸いです。また軍艦には、戦艦や空母だけでなく巡洋艦や駆逐艦、フリゲートやコルベットなどまであります。それらの違いや成り立ちを知れば、見識は広がるのではないでしょうか。(咲村珠樹(ライター・カメラマン))

文:乗りものニュース 咲村珠樹(ライター・カメラマン)

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