ランキング1位と3位でタイトル決戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』に乗り込んできたNISSAN GT-R NISMO GT3勢の2台。だが、ともに予選Q2で想定外の事態に見舞われ、Q1からポジションを落としてしまった。波乱の予選の裏事情を含め、両陣営に土曜日の流れを聞いた。
■公式練習の不調からQ1・A組トップへ蘇ったTANAX
今季、無類の安定感を誇るランキングリーダー、56号車リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)は11月5日(土)朝の公式練習から一番時計と、この上ない滑り出しを見せた。「1周目から、とてもバランスがいいと感じ、まったく問題がなかった」とオリベイラは言う。
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一方ランキング3位、6ポイント差からの逆転を狙う10号車TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき。ランキングとポイントは大草のもの)は、公式練習からマシンに頭を悩ませていた。そのときの状況を富田が振り返る。
「朝イチ、ブレーキの焼き入れを終えたあとの乗り始めは、5~6ラップユーズドのタイヤであまりプッシュもせず、タイヤのピークも過ぎた状態でもすごくフィーリングが良く、(1分)47秒フラットくらいが出せたので、『今日はいいのかな』と思っていたのですが、大草選手に乗り替わったらあまりタイムが出ず、ニュータイヤを入れてみても最初のタイムを抜けるか抜けないかくらいでした」
「それで(もう一度)乗ってみたら、確かにあまりフィーリングが良くなく、全体的にあまりグリップしていないような感じでした。その中でも唯一クルマ側(の問題)ではないかなというところだけはセットアップして、そこの改善はできたのですが、トータルのパフォーマンスとしては全然高いところにいませんでした」
チームはダンロップをまじえて予選に向けた対策を協議するが、ダンロップからの「例年もてぎはこういうフィーリングで始まることが多い。予選になったら路面の上がり幅に対して、タイヤが合ってくるはずだから」という言葉を信じ、予選に臨んだという。
「一応、予選でグリップアップしたとき用のセットアップはできていたので、それでダメだったらしょうがないかな、と。あとは大草くんも僕も、ドライビング面でひとつ間違っていた部分があったので、そこを処理して、それに合わせてクルマを動かしていったら、ものすごくいい雰囲気になりました。今年予選やっていたなかでも、1番か2番目くらいにクルマのフィーリングは良かったです」
アタックしながらセクタータイムを確認していた富田は、V字からヘアピンあたりで、1分45秒台に入ることが分かったという。コントロールラインを通過すると実際そのとおりとなり、見事にQ1・A組を1位通過。そこに僅差で続いたのがリアライズの藤波だった。
■赤旗と黄旗とトラフィック。「決勝は自信がある」とオリベイラ
予選Q2でもこの2台含め、NSX GT3勢やLEON PYRAMID AMGがポールポジションを争うかと思いきや、GT-Rの2台はともに想定外の事態に見舞われてしまう。引き金となったのはSUBARU BRZ R&D SPORTのスピン・クラッシュによる赤旗だ。
TANAXの大草はこのとき、すでにアタックラップに入っていた。
「1コーナーをフィーリング良く曲がったところで、赤旗になってしまいました。ダンロップは1周しか(チャンスが)なく、その時点でもうピークは引き出してしまっていました」と大草。
クラッシュ車両回収ののち、残り5分でセッションは再開されるが、再び大草を災難が襲った。一度タイヤのピークを引き出してしまったこと、そして残りの時間も考え、大草はアウトラップ翌周から2周連続のアタックに入る『アウト・アタック・アタック』というプランを立てていた。
「なので、温めながら(1度目の)アタックに行っていたのですが、ビクトリーコーナーに入るところで(K-tunes RC F GT3のスピンによる)黄旗が見えたので、フルブレーキングしました。そこで距離を取ってからもう1周のアタックに行ったのですが、減速した分をホームストレートで取り返せなくて、(トップとのタイム差が)プラスからのアタックになってしまいました」
今季は第5戦でポールポジションも獲得している大草は、「運がなかったと言ったらそれまでですが、もうちょっと何かできることあったんじゃないかなぁって」と肩を落とす。
一方のリアライズ。赤旗提示時には、オリベイラはアタック前の段階。だが、当然ながらアタックラップに向けてタイヤのピークを持っていこうとしていたため、再開後のアタックでは妥協を強いられることになる。加えて、各車が一斉にコースへとなだれ込む残り5分での再開には、別の問題も生じてしまった。
「僕らのタイヤは、ちょっとウォームアップが難しいものだったんだ」とオリベイラ。残り5分で再開されたセッションでは、『アウト・ウォーム・アタック』というプランを立てていたという。
「多くのクルマが近くにいたから、ウォームアップが充分にできなかった。前後のクルマとのポジションを気にしながら、タイヤのウォームアップと内圧をマネジメントするのは、とても難しかった。だから、アタックを開始した1コーナーでは大きなオーバーステアに見舞われてしまって、セクター1でコンマ2~3秒をロスしたと思う。セクター2~4は良かったんだけどね」
このように満足のいくアタックを完遂できなかった2台は、グリッド4列目に並んで明日の決勝をスタートすることとなった。気になる決勝レースペースへの見立てはどうだろうか?
「(リアライズの履く)ヨコハマタイヤさんは、(スティント)後半に強いことは分かっています。なので、そこでしっかりと抑え切れるようにタイヤマネジメントをして、チャンピオンに向けて足を踏み出したいと思います」(大草)
「僕らのレースペースはいいと思う。レースペースには自信があるんだ。もちろんNSXはとても速そうだし、メルセデスもここ数レースは強さを見せている。だけど、僕らの目標は10号車の前に居続けることだ」(オリベイラ)
SUBARU BRZが中団に沈んだことで、タイトル争いはGT-R2台による同門対決の様相も色濃くなってきた。タイヤメーカーが異なる2台の、レースペースと戦略に注目したい。
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