フェラーリ308GTB
text:C&SC Team(クラシック&スポーツカー・チーム)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)/Max Edleston(マックス・エドレストン)/James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
1000台以下のFRPボディ
Alastair Clements(アラステア・クレメンツ)
クラシック・フェラーリのボディを作る光景を想像すれば、ハンマーを丁寧に打つイタリア職人の姿が浮かぶ。木製の台の上で、アルミニウムパネルを打ち出していく様子だ。
そこには、成形型の上に敷かれたグラスファイバー・マットに、樹脂を塗り込む作業はない。だからこそ、FRPボディのフェラーリ308が魅力的に感じてしまう。
誕生当初は、プラスティック製フェラーリとからかわれたこともあったが、今では特に価値あるモデルだと思う。何しろ、1975年のパリ・サロンでの発表から1977年にスチール製へと変更されるまで、作られたFRPボディは1000台以下と少ない。
レーシーな軽量版308を期待するかもしれないが、実際はスチールボディ版より113kg程度の差しかない。そのかわり、ピニンファリーナが生み出した、最も純粋でゴージャスなスタイリングをまとっている。
物議を呼んだベルトーネ・デザインのフェラーリ(ディーノ)308GT4を挟み、V6エンジンのディーノ246のクラシックな曲線美が生むインスピレーションを、瑞々しく反映している。
今回の308GTBは1976年製。オプションの16インチホイールと、アンサ製のクワッド・エグゾーストが華を添えている。
オーストラリア仕様の右ハンドル車で、2926ccのクワッドカムV8エンジンは、欧州仕様と異なりウェットサンプ。リア・ナンバープレートの周囲パネルがフラットなことが、FRP製だと見分けるポイント。スチール製ボディの場合、窪みが付いている。
バックライトがテールライト内ではなく、バンパーに付くことも特徴。エンジンカバーを開けば、FRPらしい織り目が表れ、チューブラー・シャシーにビスでボディが取り付けられているのがわかる。
ディーノの後継モデルと呼べる
5年前にフェラーリ・ディーラー、QVロンドンが英国へ輸入し、徹底的なレストアを行った。「フェラーリ以外のFRPモデルと同様に、正しく仕上げることが最大のチャレンジでした」 とQVロンドンのマイク・レスターが話す。
「ボディは肉厚で高品質。ひび割れの心配もありません。初期モデルのスペアパーツが見つからず、最終的に部品取り車としてもう1台購入するほどでした」
ボディを閉めた時の音はFRPらしく単調だが、308GTBの車内はディノの後継モデルとしての雰囲気が強い。その後にフェラーリに訪れた、デジタル革命ともかけ離れている。
コンパクトな計器パネルには280km/hまでのスピードメーターと、1万rpmまで切られたレブカウンター。イエローは7000rpmで、レッドは8000rpmに設定されている。
慣らし前でエンジンを保護する必要があったが、オリジナル状態ならV8エンジンはとても柔軟。低回転域ではクワッド・ウェーバーの吸気音を響かせるが、少しぎこちない。回転数が上がるとスムーズになる。
過去の経験では5000rpmを超えると、4カムと8シリンダーが協奏し、素晴らしい咆哮を響かせるはず。トランスミッションの変速フィールは引っかかりが小さい。
発進時は感触に乏しいラック・アンド・ピニオンのステアリングは、速度上昇とともに息を吹き返してくる。カーブに素早く飛び込めば、路面の細かな状態を手のひらに伝えてくれる。
しなやかなダブルウイッシュボーンと、素晴らしいバランス。ショートサーキットは、308GTBには朝飯前だ。
マラネロのバーゲン・モデル、308GTBは、ディーノの後継モデルとして認識されるようになった。ニッチなスポーツメーカーから、現代のメガブランドへ進化する過程で生まれた、稀有なフェラーリだといえる。
フェラーリ308GTB
最高速度:247km/h
0-96km/h加速:6.5秒
燃費:6.8km/L
乾燥重量:1100kg
パワートレイン:V型8気筒2926cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:258ps/7700rpm
最大トルク:38.9kg-m/5000rpm
ギアボックス:5速マニュアル
ジェンセン541R
4.0L直6エンジンに空力に優れたボディ
Martin Buckley(マーティン・バックリー)
大きなオースチン製エンジンを積んだジェンセンは、いつもわたしを惹き付けてきた。ベントレーRタイプ・コンチネンタルに通じるラグジュアリーさと、現代のアストン マーティンにも似たスポーティなオーラ。
気難しいメカニズムは搭載していない。手作りで少量生産されたジェンセン541は、両車よりも遥かに安価。オースチン製のサスペンションを活用し、丸パイプと角パイプを組み合わせた機能的なシャシーを用いることで、コストを抑えた。
少量生産に向いていただけでなく、その後のV8エンジンを搭載したジェンセンの基本構造を確立した。バランスに優れたエレガントなボディ。垢抜けたグランドツアラーが、イタリアの独壇場ではなかったことの証でもある。
アストン マーティンや2.0Lのブリストルのオーナーが小馬鹿にした、古典的なシアーライン・リムジンの4.0Lエンジンを積む。重く低回転型で、魅力的とは呼びにくいが、541に160km/hを超えるスピードを与えた。何よりも重要なポイントだ。
事実ジェンセン541は、1950年代の量産モデルの中で最速の1台だった。ドアとトランクリッドはアルミニウム製たが、それ以外のボディはグラスファイバー製。基本的にサビず、滑らかな流線型はCd値0.36と空気抵抗にも優れる。
発表は1953年。おそらく長距離の走行性能を重視したヨーロッパ車として、初めてFRP製のボディを採用したモデルだったはず。
加えて1957年のデラックスには、英国量産車としては初めて4輪にディスクブレーキを搭載。1960年のワイドボディの541Sには、シートベルトが標準装備されるなど、ジェンセンは安全性への取り組みにも積極的だった。
当時は英国最速の4シーター
このシェーン・グリフィンがオーナーの541Rは、1958年から1960年に掛けて製造されたモデル。152psのオースチン・プリンセスDS7用エンジンを搭載している。
ステアリングは正確なラック・アンド・ピニオンで、541や541デラックスよりシャシー剛性も高い。ボディは変わらず、エリック・ニールが手掛けた可愛らしいスタイリングのままだ。
当時のAUTOCARでは、ジャガー製のモス・トランスミッションが組まれた試乗車で、204km/hを達成。541Rは英国最速の4シーターだと記している。
そんなジェンセン541は、想像以上に希少。すべてのタイプを合わせても、生産は500台程度といわれている。1960年代から1970年代にかけて、V8エンジンのジェンセン人気に押されて影が薄くなっていたが、近年、541は初期のインターセプター並みに取引価格が上がっている。
ジェンセンの車内はセミバケットシートと、低速時も扱いやすいステアリングホイールを備え、居心地が良い。上質な仕立てのインテリアは心地よい香りが漂う。
トランスミッションはメカノイズを放ち、速度の上昇とともにゆっくりと正確な変速が求められる。滑らかな加速感は、ボンネットの内側から響く重々しいノイズ以上に、力強い。高速コーナーでは安定性が高く、タイトコーナーは想像以上に楽しい。
オーナーのグリフィンは、1959年製541Rは運転がしやすく、買い物にも使っているという。「常にエンジンオイルとラジエター液の量を保つ必要があるくらいです。面倒なことが起きても、地元のガレージが面倒を見てくれるので、助かっています」
元弁護士の彼は、トライアンフTR4Aも所有している。541Rを手に入れたのは7年前。手に入れた理由は、見た目が気に入っただけだというが、それでもジェンセンなら、充分な理由になり得る。
ジェンセン541R
最高速度:207km/h
0-96km/h加速:10.6秒
燃費:6.3km/L
乾燥重量:1480kg
パワートレイン:直列6気筒3993cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:154ps/4100rpm
最大トルク:31.3kg-m/2400rpm
ギアボックス:4速マニュアル
マーコス1600GT
合板製のシャシーにブレッドバン・ボディ
James Mann(ジェームズ・マン)
ジェム・マーシュとフランク・コスティンという創業者の名前を由来にするマーコス。1950年代後半の、革新的なエンジニアリング風土が生んだブランドで、マーシュのモータースポーツへの愛で育まれた。
シャシーは合板を用い、デ・ハビランド製の飛行機のように接着剤で結合。ジャッキー・スチュワートやデレック・ベルなど伝説のドライバーが駆り、奇妙なスタイリングのGTは当初成功を収めた。
だがジュニア・フォーミュラの登場とともに、腕の立つドライバーはGTレースから離れていった。そこでマーコスは、公道向けのスポーツカーを制作。設計は、デニスとピーターの、アダムス兄弟が担当した。
全高は1100mmにも届かず、長いボンネットに切り落とされたテール。1964年のロンドン・レーシングカー・ショーに姿を見せたマーコスGTは、遥かに安価な値段ながら、フェラーリ250GTブレッドバンのようなスタイリングをまとっていた。
当初はボルボ製の1800ccエンジンに、ド・ディオンアクスルを採用。1966年になるとマーコスGTは、ウェーバー製シングルキャブを載せた、フォード製クロスフローの1600ccエンジンへと進化する。今回のクルマもその1台。
「ツイン・ウェーバーキャブにしてみましたが、純正のエアクリーナーを付ける場所が確保できず、調子も良くありませんでした。今はシングルキャブに戻してあります」 と話すのは、所有者のリチャード・ファルコナー。
クルマを購入した15年前は、ばらばらの状態だったらしい。「その時は1500ccのクルマを組み立てていて、インテリアの部品が必要だったんです。マーコス・ヘリテージのロリー・マクマスから、倉庫に保管されている車両を紹介してもらいました」
まるでロードゴーイング・レーサー
「ボディは3分割になっていて、リビルトすることにしました。修復する中で、わたしが50年ほど前に乗っていたクルマだと気づいたんです。そこで1500ccは仕上げてから販売し、この1600GTを手元に残しました」
運転席は筆者にピッタリ。幅の広いセンターコンソール上部に、短いシフトノブが伸びている。大きく傾斜するボンネットを、湾曲したガラス越しに見下ろせる。
シートはフロアに固定され、ペダルの位置を前後に調整できる。ステアリングホイールの付け根のダッシュボードに、独立したノブが付いている。
1600GTを発進させれば、ロードゴーイング・レーサーのように感じる。着座位置が低く、ドライバーの横で路面が後ろに過ぎていく。
最高出力は85psでも、車重は750kgだから加速は鋭い。当時のFRP製スポーツカーとは異なり、粗野な振動やノイズとは無縁だ。
剛性に優れる合板製シャシーはコーナリング時に効果を発揮。フラットに姿勢を保ち、旧式なリジッドアスクルにも関わらず反応に優れ、攻め込んでも挙動の予想が付きやすい。
小径なステアリングホイールで操る、トライアンフ・ヘラルド譲りのステアリングラックは、間髪入れずに反応。フロントがディスク、リアがドラム式のブレーキは、必要充分といったところ。
オーナーのファルコナーは身長185cm以上だが、運転席には快適に座れる。1973年に建築家の試験に合格して以来、マーコスに乗っているという。「当初は3.0Lを買い、1800に入れ替えましたが、結婚と同時に売却しました」
「ベバスト製のルーフは、長距離ドライブでの通気性に大きな違いを生みます。窓を開くと、かなりうるさいんです」
マーコス1600GT
最高速度:175km/h
0-96km/h加速:10.0秒
燃費:7.7km/L
乾燥重量:740kg
パワートレイン:直列4気筒1599cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:85ps/5000rpm
最大トルク:14.4kg-m/3600rpm
ギアボックス:4速マニュアル
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