現行スバルWRX STIの最終進化形モデルともいえるtSタイプRA(Record Attempt=記録への挑戦)。スペックCをベースに徹底的にSTIが性能を磨き込んだモデルだが、歴代インプレッサSTIコンプリートカーのなかでは「S204」をベストに選んだ国沢光宏がチェック!(本稿は「ベストカー」2013年8月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:国沢光宏/写真:平野 学
研ぎ澄まされた「走りのDNA」に驚嘆! スバルWRX STI tS タイプRA試乗【10年前の再録記事プレイバック】
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■クイックなギアレシオに驚き!
国沢氏によれば、ワインディングでの走りはカート並みの走りを披露するという
いやいや驚いた!
ナニかと言えば11:1というステアリングギアレシオに、でございます。
なんと! WRカーと同じなんだとか。というかWRカーのギアレシオって、そんなにクイックだったのね!
さっそく走り出してみたら、いろいろな意味で、標準となっている13:1のギアレシオとまったく違う。
人間のセンサーは20%違うと誰でもハッキリわかるというけれど、今回のギアレシオの差ってかぎりなく20%に近い。
動き出した瞬間から「あらら?」と思うことだろう。ただ案外と違和感がない。ふつうに走れるのだった。
最初の印象は「ハンドルが重い」。そらそうだ。ハンドルを少し動かすだけで激しく舵角がつくのだから。軽かったらアブないでしょ。
NBRチャレンジパッケージのリアビューはSTIドライカーボンリアウイング(角度2段調整式)がド迫力!
続いて「おお! 確かにクイックだ!」。
本格的にタマげるのはワインディングロードに入ってから。イメージとしちゃカート! 初めてカートに乗った時を思い出してほしい。手首を動かしたくらいで曲がるクイックさに驚くと思う。
それと似ている。ハンドルの切れ角が圧倒的に小さく、クルマがヒラヒラ走ってくれるのだ。
ターマックラリーのようなワインディングロードをわずかな舵角で気持ちよく走っていると「これがWRカーの味か!」と単純なジジイは感銘を受ける。
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■国沢氏が歴代最高と推す『S204』を超える点も
ボディカラーはタンジェリンオレンジパールのほか、サテンホワイトパール、WRブルーの計3色
開発を担当した森さんに聞くと、「単にステアリングギア比を早くすると、落ち着きがなくなります。そこでリアを補強しています。高速域で落ち着きがなくなると、クルマ全体のイメージが悪くなりますから」。
確かにギアレシオを早くした「副作用」を感じないからタイしたもんです。高速コーナーなんかジワッとハンドルにチカラを入れるだけで曲がれちゃう。
サスペンションも大幅に進化した。標準と同じKYB製だというが、滑らかに動くうえ、微小入力でもキッチリと減衰力を出している。
「やればできるじゃないの!」と思ったほど。標準モデルより減衰力を高めていると言うことだが、むしろ乗り心地がよくなった。
このふたつの点は、私が歴代最高と推す『S204』(2006年登場)を超えてますね。
ただし、エンジンに関しちゃ手組みで320psを超えるS204に届いていない。このクルマを買ったらマフラーとコンピューターは交換したいと思う。
ステアリングホイールはノーマルWRX STIと違い、専用の高級本革巻を採用しているのがポイント
おっと、クルマの紹介をしていなかった。ここにきてSTIのコンプリートカーは難解になりつつある。『R』だの『S』だの『tS』だの入り乱れてしまったからだ。
大雑把に言えば『S』はエンジンや足回り、エクステリアなどすべてに手を加えた豪華タイプ。
『R』が走りに重点を置き簡素な装備にしたもの。
今回の新しく登場してきた『tSタイプRA』といえば、速さを追求した『RA』をさらに進化させたという。一番スポーティなインプレッサと言い換えてもよかろう。
車重を1450kgに軽量化。ボールベアリングターボでレスポンスの改善を狙う。
開発のキーワードを並べると「誰がどこで乗っても、みんな気持ちがいいと感じる走る」「日常ユースで楽しい強靱でしなやか」「ドライバーが意のままに操れる4輪の接地性」「固めるところを固め、いなすところはいなす」などなど。
このところ納得の行くSTIのコンプリートカーがなかったけれど、こいつは久々に面白い! と思ったら売れゆきも順調らしく、200台の「NBRチャレンジパッケージ」は完売。100台作る標準モデルも61台が売約済みとのこと。
ターボはボールベアリングツインスクロール方式を採用している
■スバル WRX STI tS タイプRA 主要諸元
・全長:4605mm
・全幅:1795mm
・全高:1465mm
・ホイールベース:2625mm
・エンジン:水平対向 4DOHCターボ
・総排気量:1994cc
・最高出力:308ps/6400rpm
・最大トルク:43.8kgm/3200rpm
・トランスミッション:6MT
・サスペンション:F)ストラット R)ダブルウィッシュボーン
・タイヤ:245/40R18
・価格:441万円
※300台限定
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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