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【カーデザイン四半世紀】エンリコ・フミアは「新しいDSを待っている!」…インタビュー

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【カーデザイン四半世紀】エンリコ・フミアは「新しいDSを待っている!」…インタビュー

いよいよジャパンモビリティーショー2025が開幕する。レスポンスの前身のオートアスキーは1999年の第33回東京モーターショーを機会に誕生して以来、26年間16回目のモーターショー(モビリティショー)というカウントとなる。そこでこの四半世紀のカーデザインの変化とこれからの展望についてイタリアのレジェントカーデザイナー、エンリコ・フミア氏に語ってもらった。

エンリコ・フミア氏はアルファロメオ『164』、『GTV / スパイダー』(以上ニンファリーナ在籍時)、ランチア『Y』(イプシロン。フィアット在籍時)を手がけ、いずれもカーデザインの歴史でエポックメイキングな存在となっている。2023年より使われているレスポンスのロゴをデザインしたのもこのレジェンドカーデザイナー、エンリコ・フミア氏だ。

【画像全24枚】

◆他と違う存在になるべき
まずはこれを言わねばなりません。『レスポンス』25周年おめでとうございます! 25年という長い間、同じ自動車メディアが続くことは素晴らしいことです。これからも、『レスポンス』らしいオリジナリティを追求しつつ正確な情報を発信していってください。

自動車の世界においてもメディアの役割は大きいと思います。ありふれた記事ではなく、しっかりと地に足がついた記事をお願いします。批判することは批判して、独創的でオリジナリティのある記事をこれからも作って行ってください。他と違う存在になるべきだと考えています。

◆Rの先の矢印
---:ありがとうございます。フミアさんにデザインしていただいた『レスポンス』のロゴができてすでに20年以上になります。とてもユニークで印象的ですが、どのようなコンセプトでデザインされましたか?

ロゴのデザインを依頼されたとき、まず考えたのはオンライン専用のマガジンだということです。そして、インターネットの普及によって、ますます情報の伝達が早くなっていくであろうと予測しました。情報の伝達の速度は、当時でも早くなりつつありましたが、今ほどではありませんでした。

Rに矢印を付けたのは、「レスポンスの素早さ」、「情報の伝達の素早さ」がこれからのインターネットの時代、「どの方向にも幅広く、素早く広がっていくこと」をイメージしました。

自由にデザインさせてもらえたことに感謝しています。

◆デザインの停滞、使い回しの四半世紀
---:当時のカーデザインの現場と現在とではどのような違いがあると思われますか?

当時と現在を比べたとき、現在のデザインには新しさを感じません。進化よりも「停滞」を感じています。古いデザインの使いまわしであり、昔のデジャブを複雑な方法で繰り返している印象です。明確なビジョンが決まっていないままデザインを使いまわしているように感じます。

そして同時にデザインの中に「機能性」が失われていますね。30年前、車は全般的にいまより小さかった。しかし、広々とした室内があり荷物スペースも十分あり、後部座席へのアクセスも容易でした。

今のクルマは見ていて不快になることが増えました。特段いいと思うものもない代わりに、つまらないものもありません。スタートラインに立てていない車も少なくないと思います。

◆日本車しか運転しない理由
---:フミアさんはイタリアで日本車に乗っていると聞きました。なぜ日本車なのでしょうか?

今イタリアで乗っているのはスズキ『スウェイス』(トヨタ『カローラツーリング』ベースのOEM車)です。日本車は世界でもっとも信頼性が高いクルマだと私は思っているので、日本車しか運転しないんですよ。妻(日本人)はトヨタ『ヤリス』に乗っています。2車とも本当に素晴らしい良いクルマですね。あと、日本独自の規格で作られる軽自動車も、スタイリングはさておき機能性に優れた設計でとても素晴らしいと感じます。

ただ、スウェイスに関していうと操作系のデザインに少し問題がありますね。スイッチの文字がグレーで見えにくいのが難点です。

◆セフィーロの丸目に衝撃
---:現役時代、フミアさんがデザインの分野で影響を受けた日本車はありますか?

初代日産『セフィーロ』(1988年発売)ですね。とくにヘッドライトのデザインに衝撃を受けました。当時、私はアルファロメオの「916」プロジェクト、のちのGTV / スパイダーを開発中で、ヘッドライトのデザインに取り組んでいました。丸目4灯のデザインを実現したいと画策していたのですが、実用化に関してエンジニアから難色を示されていたのです。

そんな時に、イタリアのデザイン雑誌に掲載された、セフィーロの片側3灯丸目6灯のヘッドライトを見て、非常に大きな衝撃を受けました。デザインも斬新でしたが、916のヘッドライトの直径が90mmであるのに対して、セフィーロは65mm。小さなサイズであのようなデザインが実現したことはすごいことです。技術的に実用化されたことも非常に挑戦的だと思いました。

◆ブランド・アイデンティティはもはや存在しない
---:驚くことに、フィアットが核となって自動車業界の大きな再編がおきました。イタリア人でフィアットと関係が深かったフミアさんとしては感慨深いと思います。ステランティスの最大株主はアニエッリ家(14.4%)、次がプジョー家(7.2%)というラテン系資本が中心で、イタリア、フランス、アメリカ、ドイツ、イギリスそれぞれのルーツを持つ14ブランドからなる自動車会社です。これらブランドのカーデザインマネジメントの現状について、どう評価しますか? 

ステランティスはブランドの銀河系です。ブランド固有の特徴はなく、共通するプラットフォームやエンジンを「太陽」として、すべての車種が回っています。過去に製品の違いを生み出していたブランド・アイデンティティはもはや存在しないと感じます。

私は何年も前から、ブランドはほとんど死んでしまったと言ってきました。今のカーデザインにブランドの特異性が存在すると消費者に信じさせることに何の意味があるのでしょうか。マーケティング部隊が考えているのとは異なり、顧客はそんなに素朴ではありません。顧客はすぐに、ブランドの遺産など存在せず、詐欺師が広告で夢を見せているんだと気づくでしょう。

今日、品質、製品の長所と短所はどのブランドでも同じです。フィアット、アルファロメオ、マセラティ、ランチア、ジープ、ダッジ、オペル、プジョー、シトロエンなどに違いがあると信じられるのは、何も知らない人です。

◆シナジーを言い訳にしないで
ここ数年、ヨーロッパのブランドは、アメリカの旧3大ブランド(フォードモーター、GM、クライスラー)と同じように管理されてきました。つまり、多くのブランドをひとつの傘下に置き、ブランドの違いは美的なものでしかなく、その違いもそれほど大きなものではありません。

グループ化のシナジーもある反面、プラットフォーム共有などで制約もあって、製品がブランドごとにまったく異なる外観を得ることは不可能だと考える人もいます。ですが、これは部分的にしか正しくない。デザインについては、あくまでも意志と創造力の問題だと考えます。

このことは、フィアット『プント』と同じベースで私がデザインした、ランチアY(1995年)が証明していると思います。あるいは、ランチア『テーマ』、フィアット『クロマ』、ジウジアーロがデザインしたサーブ『9000』は、同じ「T4」プラットフォームでデザインされています。同一のプラットフォームを使用しているとは一見しただけでは誰も気がつかないでしょう。3車種はフロントガラスと4枚のドアも共通です。そして私が手がけたアルファロメオ164も同じT4プラットフォームを使っています。

まとめると、現在のカーデザイン、特にスタイリングは本質を完全に失っています。各ブランドはもはや本質的な違いを競い合うことはなく、ラベルの違う同じワインです。テレビや携帯電話と同じデザイン思想に従っていると考えます。

◆中国車の登場はスタイルの展望を変える
---:欧米日韓のメーカーとの合弁での生産が主流だった中国市場が、一気に中国資本メーカーによるオリジナル開発車両が主流の市場に様変わりしました。欧州からも多くの人材を引き寄せてスタイリッシュなクルマがたくさん生まれています。フミアさんからみて、中国車のデザインをどう評価しますか? 中国車に共通するアイデンティティは生まれてきていると思いますか?

私はすでに拙著『AUTOritratto』(1995年刊)の中で次のように書いています。「日本車は韓国人に、そしておそらく近いうちに中国人に方向転換を迫られるだろう」と。その後もそう言い続けてきました。同じことが欧州ブランドにも当てはまり、その結果、スタイルの多様性はますます失われています。現在のジャガーは、昔の魅力的なジャガーとは何の関係もありません。

私の予想通り、最新の中国車の登場はスタイルの展望を変えつつあります。まだ本当の目新しさはないですが、おそらく電気自動車にグリーンなイメージを与えることを意図したのでしょう、カーデザインはよりクリーンで、ほとんどミニマルなデザインになってきています。

◆古い「風」を吹かす欧州メーカー
中国メーカーには『永続させるべき伝統』がないため、自分たちの個性を自由にデザインできると感じています。ホンダ、日産、トヨタがアキュラ、インフィニティ、レクサスの各ブランドをアメリカ市場向けだけに作り、後にEUや日本市場に導入したのと同じような状況です。つまり、彼らは顧客に好奇心を抱かせるために、新しい新鮮な「風」としてブランドを導入したのです。

その動きは、古い「風」がまだ有益であると人々に信じ込ませようとする欧州メーカーとは、正反対ですね。例を挙げると「DS」です。PSAグループはステランティスになる前から、伝説的なシトロエン『DS』の後継として、新たにDSブランドを立ち上げました。

実際には、革命的だったオリジナルDSに匹敵するものは何もない。今日のDSは取るに足らないものです。つまり、真に革新的なクルマを作ることを恐れている。何をどのように作ればいいのかわからないのでしょう。

◆テスラEVはまったく平凡
---:テスラの誕生は今世紀の大きなトピックの一つだと思います。フミアさんはテスラのカーデザインをどのように評価していますか? 

私にとっては、テスラはEVの“パイオニア”ブランドとして登場したということが唯一のメリットです。スタイル的にはまったく平凡なのが残念ですね。インテリアのコンソールは気が散る“テレビ”だけで、他のタッチスクリーンと同じように運転中の操作は危険です。本当に革新的なものは何もないと感じます。

残念ながら、私はまだEVデザインに対する正しい合理的アプローチを見たことがありません。テスラに限らずEVのスタイルは従来の自動車のままです。

EVの登場はカーデザインを変える、あるいはほとんどを変えられる絶好の機会でした。なのにまだ「エンジン車に代わる乗り物」という存在感しかありません。違いは穴あきグリルがないことだけ。私はまだ「新しいDS」を待っています。モデルやブランドとしてではなく、製品やスタイルの革新として。

文:レスポンス 加藤久美子
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みんなのコメント

2件
  • tma********
    丸目4灯で思い出すのは、当時3代目ホンダインテグラが丸目4灯で出たが、
    全くの不人気で即マイナーチェンジして横長ヘッドライトに変更したのに、
    アルファロメオGTV/スパイダーは丸目4灯で絶賛されていたことですね。
  • fxnhe501
    一字間違えると哀しくてジェラシーになってしまうフミア氏の言葉には頷くところが非常に多い。レスポンスの関係者も耳が痛いだろう。情報という名のゴミで埋もれた電子メディアの有り様に、この祝辞は痛烈なブラックジョークとして響く。

    現在のDSはDarracq-Simcaの略だと解釈している。太いメッキモールで武装したDS9の外観には、往年のダラック・フライング・フィフティーンに始まり、戦後のフォード・ヴァンドーム、クライスラー180、タルボ・タゴーラと引き継がれたフランス中型車の系譜が息づいている。その一部であるフォードの開発によるシムカ・ヴァデットはその一部が中国に渡り、第一汽車が乗用車を自社開発する礎となった。紅旗のルーツはシムカなのである。

    中国政府はシトロエンの国産化にも挑戦した。最初はDSが候補に上がったが、実際にはCXを生産した。あの難しい車がかつての中国ではとてもポピュラーだったのである。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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