2018年のFIA F2選手権はアブダビで最終ラウンドを迎えた。今年このシリーズに挑戦してきた日本人ドライバーふたりにとってはこのレースを最後に一旦ヨーロッパを離れることになるが、ともに集大成を見せるというよりも2018年シーズンを象徴するような不完全燃焼のレースになってしまった。
牧野任祐はマシンの仕上がりが良く、予選でブレーキペダルが長くなるトラブルに見舞われながらも9番グリッドを確保。オプションタイヤのスーパーソフトがF1同様に激しいデグラデーションで数周しか保たない状況を踏まえ、レース1ではプライムタイヤのミディアムでスタートする戦略を選んだ。
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大半がオプションでスタートすることを選び牧野はプライム勢のトップにいたため、モンツァのレース1優勝の再来なるかと期待が高まった。
しかし、レース後に牧野は「これは結構イケるかと思ったんですけど、そんなに甘くはありませんでしたね」と語る。
その理由として、3番グリッドでストールしたニコラス・ラティフィのマシンに後続が激しく追突し、セーフティカー導入されたことが上げられる。
タイヤ交換義務が解禁となる6周目の終わりまでセーフティカー先導が続けばオプション勢はセーフティカー先導中にタイヤ交換を済ませてしまい、プライム勢はピットストップ1回分の不利を背負うことになってしまう。そのリスクを考えてロシアンタイムは牧野のタイヤを一旦オプションに交換させ、他車と同様のタイミングで再びプライムに履き替える無難な戦略に切り替えた。
しかしセーフティカーは6周目でピットに戻り7周目からレース再開となったため、オプション勢はピットインできないまま走り続けることになり、リスクを承知でプライムのまま走り続けたルカ・ギオットだけがモンツァの牧野のように圧倒的有利な立場に立つことになった。
「セーフティカーが入っていなかったら面白かったと思いますよ。またモンツァのようなことが起きるチャンスがあったと思うし普通に表彰台のチャンスがあったと思います。ギオットはプライムのまま走って3位でフィニッシュしていますからね」
「彼はそこで残る選択をしたのが成功で、僕らはタイヤ交換して一番後ろになってしまったんで。プライムで走る周回数が短くなったぶん、前半ちょっとセーブしすぎたかなというのもありますけど、マネージメントはちゃんとできたしそれは良かったと思います。最後は周りがタレて来ていて、ボコラッチ、ロランディ、ティクタム、ジャック(・エイトキン)を抜いて行きましたからね」(牧野)
ロングランのペースは良かった牧野だが、セーフティカー中のタイヤ交換でポジションを後方に落としてしまい、周囲のタイヤがタレたレース後半に次々と抜いて行ったが9位まで挽回するのがやっとだった。
そしてレース2では1周目に前方で起きたスピンに巻き込まれサスペンションを壊してリタイア。希望が見えたはずの牧野の最後のラウンドは呆気なく終わってしまった。
■予選のあまりの遅さに首を捻る福住仁嶺
一方の福住仁嶺はフリー走行で4番手に付けていたが、予選では19番手と低迷。その遅さの原因が全く分からないと福住は首を捻った。今シーズンずっと続いている問題は、結局最後まで解明できなかった。チームメイトとしてスポットで初めてFIA F2を経験することになったダニエル・ティクタムにも後れを取ったが、ドライバーの腕ではなくマシンに問題があることは明らかだった。
「どうやったらここまで予選で遅く走れるのか不思議ですよ。自分としては気持ち良く走れているし、限界まで攻めている感があるんです。ミスもないし悪くないラップかなと思って帰ってきてタイムシートを見ると『ハァ!?』っていう感じで全然タイムが出ていなくて、あぁまたこれかって感じです」
後方グリッドが災いしてレース1では止まっていたラティフィのマシンに接触し右側の前後サスペンションを壊して1コーナーでストップ。
レース2はタイヤを労りながら後半に勝負を賭けたが、レース運営システムの問題でDRSが全車使用不可となり、オーバーテイクが難しくなった。
「僕としてもフルにプッシュしたらタイヤがすぐになくなるのが分かっていたんで最初はかなりマネージメントして後半に勝負を賭けようと思っていたんですけど、レース途中から(全体として)DRSが使用不可になってしまったんで、オーバーテイクが難しくなってしまったのが痛かったですね」
「後半のペースは悪くなかったんで、DRSを使ってジャック(・エイトキン)をもっとすぐに抜けていたらレース展開はもっと違ったと思うんですけどね。抜いてから最終ラップに全開でプッシュしたらタイムは悪くなかったですから」
結局12位でレース2を終え、福住のツラい1年も終わった。
■ヨーロッパでの経験を活かし、新しい舞台で戦うことを決意する牧野と福住
「(感覚に反して)遅かった理由は分からないし、僕ももう考えたくないし(苦笑)。これのことを考えていたら来年に響きそうだし。今回学んだことは学んだことで生かして、忘れるべきことはさっさときっぱり忘れて来年に集中したい」
上位チームと同じカテゴリーとは言えないほど劣悪なチーム環境での1年を強いられた福住は、来季に向けてしっかりとした仕切り直しが必要だろう。FIA F2という舞台で実力を試すチャンスすら与えられないままヨーロッパを後にするのは残念だ。
牧野も1年目でピレリタイヤを懸命に学び、後半戦はめきめきと力を伸ばしてきた。モンツァの優勝がその証だが、それ以外のレースではソチの1周目のもらい事故や今回のセーフティカー導入など本来の力が結果に結びつかない場面が多く、結果だけで判断するのはフェアとは言えない。
「前半戦は初めてのことだらけで苦戦しましたけど、後半戦は右肩上がりで良くなって1回優勝もしたし、手応えを掴んできている状況の中だったので、もう1年この体制で走れれば面白かったと思うし、正直ちょっと残念ですね」
それでもふたりはヨーロッパで学び成長したことを生かし、新たな舞台で戦う。そしてF1という夢を諦めることなく戦い続け、再びこの地に舞い戻ってくることを誓った。
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