クルマの装備は、派手に登場したわりにはすぐに廃れたもの、地味ながらも長く生き残っているものなどさまざま。いずれにせよ、いつの時代も「それいる!?」という装備が存在していることはたしか。そこで今回は、「それいる!?」的な装備を考えてみたい。
文/室井 圭、写真/トヨタ、日産、写真AC、FavCars.com
これって本当に必要? ガチで大事な装備と存在意義を問いたいクルマ装備7選
公道では無用の長物「180km/h表示を超えたスピードメーター」
2007年に登場したGT-Rは、国内の主要サーキット限定ではあるがリミッターが解除できるシステムを搭載。国土交通省の認可を得てのことだったが、公道ではNG
ひと昔前までは国産車のスピードメーターは180km/hまでしかないというのが常識だった。180km/hオーバーのスピードメーターが装着された輸入車を見ると「かっこいい!!」と、憧れの念を抱いた人も多いのではないだろうか?
そしてここ最近、180km/hを超える数値が表示されているスピードメーターが増えてきている。とはいえ、いまだ普通車で180km/h、軽自動車では140km/hでエンジンへの燃料の供給がカットされる速度リミッターは搭載されているため、実際にはリミッターをカットしないかぎりそれ以上の速度を出すことはできない。
ということは、180km/h以上のスピードメーターって張り子の虎みたいなもんじゃないか!? むしろ、180km/h表示のメーターに慣れた人にとっては目盛りが細かくて見づらいという声も。
そもそも速度リミッター自体が安全を配慮したメーカーの自主規制によるもので、法的根拠はない。速度リミッターの装着が道路運送車両法で義務づけられているのは大型トラックのみだ。
とはいえ、公道しか走らないというドライバーがあえてリミッターカットをしようなんてことは思わないはず。そもそも180km/hすら出したことがないという人がほとんどだろう。もちろん、日本の公道ではドイツのアウトバーンのような速度無制限の区間はないため、出したら法的にアウト!
いろいろなことを考慮すると、やはりサーキットを走るような特殊な人以外は、180km/h表示を超えたスピードメーターは必要ないのでは?
グローバルカーの場合は、海外向けと国内向けでメーターを付け替えるとコストがかかるため、海外仕様ままにするというコストカットの意味合いもあるというが……。とにかくその存在意義が乗り手にとっては微妙な装備だ。
寝不足ドライバーの敵だった!? 「速度警告音」
1987(昭和62)年5月に登場した6代目カローラが先陣を切ってキンコン非装備車に。それ続くように、他メーカーもキンコン非装備車へと移行した
こちらもスピードがらみの装備。普通車は100km/h以上、軽自動車は80km/h以上を超すと「キンコン、キンコン」と鉄琴を多対多なチャイム音が鳴り出す速度警告音。その音からキンコンと呼ばれることもあった。これはすでに1987年以降のクルマには装着されなくなったが、その存在には賛否両論あった装備だった。
この装備は日本車だけに装備されていたもので、速度リミッターとは異なり、装着が義務付けられていた。さらに、車検の検査項目にも含まれていたのだ。
エアバッグなどの安全技術が不十分だった時代は、今以上にスピード超過は重大事故につながるリスクが高かった。そのため、音でスピード超過を知らせるという実にアナログな方法がとられていたのだ。
廃止となったのは1986年。その理由は、速度警告音装備が非関税障壁になるという海外メーカーからの圧力という説が有力。
もうひとつの理由がキンコンを聞き続けると睡魔に襲われる危険があるためらしい。実際、キンコンが引き起こした眠気によってどのくらいの事故が発生したかは定かではないが、一定の周期で音が鳴る定周期音には睡眠誘導効果があることが研究でも明らかになっている。
ドライバーの命を守るために付けられた装備が居眠り運転を誘発するという逆効果な装備だったとは……。なかったほうが安全だったトホホ装備だったのだ。
より強固なセキュリティ対策が必要とは…「スマートキー」
盗難被害が相次ぐなかで救世主と思われたスマートキーだったが、逆に、面倒臭い対策をしなくてはならないことに……
近年、加速度的に普及しているのがスマートキー。メーカーによって名称が若干異なるが、しくみは同じで、持っているだけでボタンを押したり、ノブの部分を触ればドアの施錠と解錠ができ、エンジンもボタンひとつで可能という装備だ。
スマートキーは電池切れの問題もちょい厄介だ。内蔵電池の寿命は1~2年と言われていて、意外と短い! これはけっこう面倒。
そんなことは注意すればいいだけのことだが、スマートキーから出ている電波をコピーしてエンドンをかけてしまうリレーアタック(電波傍受)による盗難被害に遭う恐れがあるということは超厄介。ニュースなどでも取り上げられ問題となっているので、スマートキーを愛用している皆さんはかなり気になっていると思う。
ネットなどでは、スマートキーを電波が遮断できるケースに入れる、リレーアタック防止装置を設置するなどなどリレーアタックを防ぐさまざまな方法が紹介されている。また、スマートキーの電波遮断ポーチも売れているという。
ここまで対策しなくては枕を高くして眠れないということか? そんなに神経質になる必要があるなら、スマートキーのひと世代前のキーレスエントリーでもいいかなと筆者(スマートキー未使用)は感じてしまうのだが……。
ただし、キーレスでもロックする瞬間の電波を盗んでアンロックコードを解析して解錠するという盗難被害はある。じゃあいっそのこと普通のキーでいいんじゃない!? と思うものの、ピッキング被害のリスクはあるのでそれはそれで不安だ。
とにかく、スマートキーの存在意義は防犯というよりは利便性にあるということか……。
運転姿勢を安定させる重要装備「フットレスト」
フットレストは足休め以上の存在意義が。運転操作を安定させるうえで重要な役割を果たしているのだ
運転する時、使用しない左足を置くための場所がフットレスト。皆さんはきっちりとフットレストに足を置いて運転しているだろうか? もしかしたら、名前の通り、「足休めの場」とは思っていないだろうか? 実は、フットレストは正しい運転姿勢を保つうえで非常に重要や役割を担っているということで、想像以上に存在意義の大きい装備なのだ。
フットレストに左足を置くことで、カーブなどの体が動きやすいシチュエーションであっても左足をフットレストにのせて踏ん張ることで体を安定させることができるのだ。また、フットレストに左足を置いた状態で座ることで正しいドライビングポジションを維持しやすくなると言われている。
今まで、フットレストを無視していた人も、しっかりフットレストに左足をのせて運転する習慣をつけてほしい。
燃料費節約より環境保護「アイドリングストップ機構」
環境保護が世界的なミッションとされているだけに近い将来はアイドリングストップ機構は全車表重装備が義務付けになるかも!?
アイドリングストップ機構が搭載されたクルマの場合、アイドリングストップ専用のスターターシステムを搭載する、バッテリーを大型化する必要があるため生産コストがかかる。だから車両価格がアップしてしまう。
もちろん、燃料代の節約にはなるものの、車両価格や維持費など、諸々を計算すると元をとれるほどの節約にはならないという試算も。つまり、この機能の存在意義は環境保護にあり、燃料代の節約はおまけのようなものなのだ。
そんなこともあってか、2010年代以降はアイドリングストップ機構装着車が増加したものの、まだ非装着車も多く、さらに装着車に乗っていてもキャンセルしてしまう人も多いというのが実情だ。
環境保護が叫ばれるなかではあるが、お財布に厳しいクルマを所有しようという人は少ないといったところか。しかし、今後はクルマに乗る人は環境保護に損得勘定は持ち込まず、環境保護に関わる費用を負担しなくてはならない時代となっていくことは覚悟しなくてはならないだろう。
高級車ですよアピールが最大の存在意義だった!? 「ボンネットマスコット」
バブル期に登場したシーマ。高級車にもかかわらず売れに売れた!! フロントにはボンネットマスコットが燦然と輝いていた
高級車の証だった立体的な自動車メーカーのロゴやシンボルをボンネットの先端中央部に取り付けられるアクセサリー、ボンネットマスコット。そういえば最近、お目にかかる機会が激減したような。日本車でも70年代から90年代にかけてはボンネットマスコットを誇らしげに装着するクルマ(高級車)は販売されていた。
もちろん今でも海外メーカーの高級車で採用する車種もあるものの、その数は超激減。ボンネットマスコットを採用しない流れは世界的なものとなっている。
道路運送車両の保安基準等の改定で「自動車の外部には、衝突時又は接触時に歩行者等に傷害を与えるおそれのある形状、寸法、方向又は硬さを有するいかなる突起を有してはならない」という規定が追加に。つまり、ボンネットマスコットは法に抵触する存在になってしまったのだ。結果、2009年1月1日以降の登録車にボンネットマスコットが装着されることはなくなった。
ということで、国産車でボンネットマスコットを採用するクルマは皆無に。そもそも飾り以外の機能を持たないアイテムだっただけに、ボンネットマスコットの消滅を惜しむ声はさほど大きくはないような(ボンネットマスコット付きのクルマなんて高値の華だった筆者の私見だが)……。
肩はほぐれないけど、心はほぐれる!?「バイブレーション機能(マッサージ機能)」
レクサスLS エクスクルーシブグレード限定のレクサス初装備となるフロントリフレッシュシート(マッサージ機能)。親指サイズ空気袋が座面と背もたれに装備され、指圧されているような心地良さが味わえるらしい。これは期待大か!?
これは廃れてはいないものの、さほど普及もしていない装備。実際、「ホントにいる!?」と思う人はかなり多いはずだ。豪快に、これでもかっ!! というほどゴロゴロと揉み玉が動きまくる銭湯などに設置されているマッサージチェアに座って「あー肩こりがよくなったわー」と大満足したことはあるだろうか?
それを考えると、コリにコッた肩や背中をクルマのシートに内蔵された何かがブルブルと何かが振動したり、動いたりして体をまさぐってくれてもあまり効果はないのでは? と、ちょっと疑問に思ってしまうというのが正直なところ。
ただし、コリをほぐすのではなく、リラクゼーション目的であればそれなりの効果はあると思う。ということで、マッサージいらずになるほど肩コリをやわらげられる!! という期待感は抱かなければそれなりに存在意義はあるのかも。
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