近年多発し、社会問題化しているあおり運転。道路交通法改正に向けた動きもある中、個人でできる対策への関心も高まりつつある。
そこでこのほど、パナソニック株式会社 とオートモーティブ社により、「あおり運転とドライブレコーダーの使用状況に関する調査」が実施されたところ、あおり運転被害の実態やその原因が明らかになった。
長距離ドライブの途中で家族から聞きたくない言葉、トップは「まだ着かないの?」
なお本調査は、2019年10月31日(木) ~2019年11月6日(水)に、「3カ月に1回以上自動車を運転し、年末年始に自動車で帰省や長距離のお出かけをする予定のある、全国の20代~60代の男女2000人を対象にして実施された。
約8割があおり運転の被害経験ありと判明
あおり運転の被害有無については、約8割が「あおり運転を受けたと感じたことがある」と回答した。その被害の種類は「車間距離を詰める」が85.4%で最も高く、次いで「パッシング」「クラクションでの威嚇」「幅寄せ」と続いた。
被害を受けたきっかけとして思い当たるものは「周りの車の流れよりスピードが遅かった」が30.1%で最も高く、次いで「車線変更した/割り込みをした」「追い越し車線を走り続けた」となった一方、約4割は「特に思い当たらない」と回答した。
また、あおり運転をされた時にとった対策として、「道を譲った」が59.2%で最も高く、被害の主な対策となっている。
他方、「何もしなかった/できなかった」の回答も多く、実際に被害を受けた際の対処方法を事前に考えることも必要と考えられる。
あおり運転対策として心がけていることは、「なるべく車間距離をとる」「不審な車に近づかない」が5割台でトップ2。次いで、「無理な割り込みはしない」「ドライブレコーダー導入」となった。
■専門家からのコメント
株式会社モビリシティ代表/モータージャーナリスト
森口 将之氏
国内外の交通事情や都市計画、環境対策を取材し、幅広いメディアで最新モビリティ事情を紹介。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
あおり運転をされた時に有効なのは、「あわてず、その場で自分の運転を見直し、やり過ごす」ことです。
例えば後続車から車間距離を詰められた場合、もしかしたら自分の運転がゆっくりすぎていたのかもしれません。自ら対処できることは対処した上で、それでもしつこくあおられるようなら、サービスエリアなどの人のいる場所に逃げ込むといいでしょう。
また、ためらわずに通報することも大切です。その場合、ドアや窓は助けが来るまで決して開けないようにしましょう。
一方で、あおり運転をされた時、「何もしなかった/できなかった」の回答も多いですが、冷静に対処できるよう、対処方法を事前に考えることも必要と考えられます。
さらに、あおり運転はする方が悪いのはもちろんですが、被害者側にもあおられる原因をつくり出さない心がけが求められます。
道路というのは公共空間なので、集団でつくる流れを妨げることはマナー違反にもつながります。例えば、スマホに気をとられスタートで遅れたりせず、周囲のクルマに合わせた速度で走行することなどが肝心です。
適正な車間距離を保ち、周囲の流れを乱さないことが重要になります。また、実際の装着はもちろん、「ドライブレコーダー録画中」のようなステッカーを貼ることは有効と言えます。
自らの運転への自信は、女性に比べ男性が高い結果に
自らの運転に対する自信には、36%が「自信がある」と回答。男女で比較すると、女性に比べ、男性のほうが運転への自信は高い傾向がみられる。
運転中、イライラしてしまう頻度は男性のほうが高い傾向に
運転中にイライラしてしまう頻度は、「頻繁にある」が約13%、「たまにある」が約72%で、「ある」の合計は約85%となった。
男女で比較すると、男性のほうがイライラする頻度はやや高い傾向にあった。また、運転への自信がある人ほど、イライラしてしまう頻度が高い傾向があることが明らかに。
イライラは渋滞、周囲の車の運転技術に対して起こりがち。「帰省時」「一人での長距離運転」は要注意!
イライラするシチュエーションは、約6割が「渋滞にはまった」と回答し、次いで「時間に遅れそうだった」「周囲の車のスピードが遅かった」となった。時間やスピードに関するものが多く、十分に余裕を持つことが大事であると考えられる。
さらに、「周囲の車が突然車線変更した/割り込みされた」「前の車が何度もブレーキを踏んだ」など、周囲の車の運転技術に関する項目も多いことがわかった。
また、イライラするときの乗車状況は、「一人で乗車しているとき」が約8割で、帰省時、長距離を一人で運転している人はイライラしやすい傾向にあることがわかる。
イライラした際にとった主な行動は「気分転換」。イライラ頻度が高いほど「あおり運転予備軍(※1)」の傾向あり
イライラした際にとった行動として、「音楽や映像を楽しむ/楽しみたくなる」「飲み物や食べ物を食べた/食べたくなる」など、全体的に気分転換することによりイライラを軽減させる回答が多い傾向にあった。
イライラ頻度で比較すると、イライラすることが頻繁にある人ほど、「悪態をついたり大声をだした/したくなる」「イライラした相手の顔をみた/みたくなる」「急加速やスピードを出したりした/したくなる」「クラクションをならした/ならしたくなる」「停車時にイライラした相手に注意した/したくなる」「パッシングをした/したくなる」「ハイビームをした/したくなる」「幅寄せをした/したくなる」など、あおり運転に繋がりかねない項目も全体より高い傾向にあり、「あおり運転予備軍(※1)」であるといえる。
運転中イライラすることのある人のうち、28.1%が「あおり運転予備軍(※1)」と判明
運転中イライラすることのある人のうち、28.1%(全体の24%)がイライラした際、イライラを抑えることができずにあおるような行動をとる傾向にある「あおり運転予備軍(※1)」であるとわかった。
また、運転に自信のある人ほどその傾向は高く、運転への自信がある(非常にある、ややある)人は、34%以上が「あおり運転予備軍(※1)」であることが明らかに。
※1 「あおり運転予備軍」とは、運転中にイライラした際、「悪態をついたり大声をだした/したくなる」「イライラした相手の顔をみた/みたくなる」など相手をあおるような項目が高く、「急加速やスピードを出したりした/したくなる」「クラクションをならした/ならしたくなる」「停車時にイライラした相手に注意した/したくなる」「パッシングをした/したくなる」「ハイビームをした/したくなる」「幅寄せをした/したくなる」など、あおり運転に繋がりかねない行動をとる人のことを指している。
運転に自信のある人ほど、あおり運転をしていた可能性が高い傾向に
自らのあおり運転をしていた可能性について、「ある」「たまにある」「いわれてみればしてしまったかもしれない」の回答の合計が約 47%と約半数を占めた。
男女別でみると、特に40代以上の男性は6割超が「あおり運転をしていた可能性がある」と回答し、女性に比べ高い傾向がみられる。さらに、自らの運転に自信のある人ほどあおり運転をしていた可能性が高い傾向があることがわかった。
■専門家からのコメント
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 代表理事
安藤 俊介 氏
怒りと向き合う心理トレーニング・アンガーマネジメントの国内第一人者。2018 年から「新・あおり運転撲滅プロジェクト」を展開。
あおり運転、あるいはその予備軍的行動をする人というのは意外に多いものです。車という鉄の箱に守られ、正体を隠して行動できるという「匿名性」と「万能感」があおり運転を引き起こす理由としてあげられます。
特に、運転に自信のある人ほどあおり運転を引き起こす傾向が高いようです。あおり運転の問題はそれが犯罪につながりかねないということにあります。加害者も被害者も、「運が悪かった」「タチの悪いのに遭遇した」というレベルでしか捉えていない。
今後、道交法改正による厳罰化が報道されており、大きな抑止力となることが期待されますが、その前にドライバー自身が意識を変えていくことが重要ではないでしょうか。
では、自らがあおり運転を引き起こさないためにはどうすべきか。まず、時間に余裕をもつことが大切です。また、車内には、お気に入りの音楽や家族の写真など気を紛らわせることができるものを準備しておくといいでしょう。
また、イライラが高まったらまず、「6秒待つ」ことを心がけてください。「6秒」というのは怒りの感情の発生から理性が介入するまでの時間です。ドライブレコーダーを搭載して自身の行動を律するということも有効と考えます。
カーナビと連携するタイプなら、自分の運転行動をすぐ確認することができ、あおり運転の予防につながるかもしれません。
保有者は約4割。重視する機能は「GPS機能」「前方後方同時録画」
ドライブレコーダー保有者は43%、非保有者は57だった。保有ドライブレコーダーの機能については、「わからない」割合が各項目で2~4割程度はおり、自身が保有するドライブレコーダーの機能を把握できていない人も一定数いるようだ。
ドライブレコーダーの映像確認有無では、全体では「確認する」が約47%、「確認しない」が約53%で、「確認しない」がやや高い傾向に。あおり運転被害の経験有無でみていくと、経験ありは、経験なしに比べて約半数が確認していることがわかる。
今後ドライブレコーダーを購入する際に重視する機能については、「録画した場所や時間の記録を残す(GPS機能)」が57.3%で最も高く、次いで「前方と後方の同時録画」、「暗い場所でもハッキリ録れる高感度撮影」となった。
あおり運転の被害の種類で「車間距離を詰める」が 85.4%と最も高かったという調査結果からもわかる通り、「前方後方の同時録画」機能への需要は高まっていることが考えられる。
■専門家からのコメント
株式会社モビリシティ代表/モータージャーナリスト
森口 将之 氏
国内外の交通事情や都市計画、環境対策を取材し、幅広いメディアで最新モビリティ事情を紹介。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
あおり運転対策の必需品、ドライブレコーダー。これまでは車の前方を記録するためのものでしたが、最近はあおり運転対策として後方カメラ搭載タイプのニーズも高まっています。
あおり運転の多くは「車間距離を詰める」など自車の後方で起こっているので、その経緯も含めて記録しておけるという点で後方カメラのメリットは非常に大きいといえるでしょう。
また、警察では最近ドライブレコーダーの映像をあおり運転の証拠として採用し始めています。証拠として使う場合、被害に遭った時刻や場所がきちんと記録されている必要があります。
検証にあたっては、信号や周囲の状況なども重要です。こうした情報をもらさず記録するためにも、GPS機能や夜間でもくっきり撮影できる高感度カメラを搭載したドライブレコーダーを備えておくと良いでしょう。
カーナビと連携するタイプであれば、地図とセットで記録できるため、位置情報の確認などで、より確実性が高まります。撮った映像を大画面ですぐ検証できるのも大きなアドバンテージです。
またカーナビ専用端末の場合、ガラス面にカメラを設置するだけですむため、視界の邪魔にならず、車内インテリアを損なわないという利点もあります。
※パナソニック調べ
<調査概要>
■調査期間 : 2019年10月31日(木) ~ 2019年11月6日(水)
■調査方法 : Web調査
■調査対象 : 3カ月に1回以上自動車を運転し、年末年始に自動車で帰省や長距離のお出かけをする予定のある、
全国の20代~60代の男女2000人(男性:1153人、女性:847人)
■調査会社 : 株式会社ネオマーケティング
出典元:パナソニック株式会社
構成/こじへい
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みんなのコメント
常に前だけを見て制限速度以下で走っていれば安全運転、ということではありません。周囲の交通状況を確認し、交通ルールを守りながら、スムースな交通の流れこそアクシデントが少なく、良い走行環境であると思う。