まるでスーパーカーのショールームのような空間
ともにイタリアで生まれた美しい跳ね馬と闘牛を収める厩舎としてのガレージ。単に雨風をしのぐだけでなく、静かに佇む彼らの勇姿を眺められるショールームの機能が欲しいと思うのは当然かもしれない。
H邸の場合、余計なモノは一切、天井や壁に隠された。例えば、天井には照明はもちろん、エアコンや換気扇、それらの配線や配管が埋め込まれている。閉めたときに残るレールすらも嫌って、オーバースライダーではなく、シャッターが選ばれたほどだ。
視界をさえぎる柱や壁もない。背景が白と黒のモノトーンで統一され、そこにただ主役の2台のスーパーカーがスッと浮かび上がる。そんな極めてすっきりとした"厩舎"だ。ショールームのようなガレージの奥にある趣味部屋にも壁がない。唯一、床のタイルをガレージ部分のダークグレーとは異なり白くすることで、ここがガレージとは違うのだと分かる。
この一体感によって、ここにいると、まるで跳ね馬や闘牛の息づかいが聞こえてくるようだ。よく見ると、天井から吊るされている計6枚の枠のないガラスの引き戸で、趣味部屋を囲うようになっている。ガラス戸を閉めて、ここに籠もって仕事をしても、ふと視線を移せば、野暮な窓枠や柱にさえぎられることなく、2台の愛車を隅々まで愛でることができる。 H邸の訪問者もまた、さながら美しい庭のように、このショールームを眺めながら歩を進めることになる。玄関のドアを開ければ、右手に大きなガラスで隔たれた、ガレージが広がるからだ。美しいガレージを右手に玄関ホールの奥にある白いらせん階段を上れば、施主のいるリビングダイニングにたどり着く。
モノトーンでまとめられた2階の空間もガレージ同様、柱のない極めてシンプルでモダンなデザイン。南側にある大きなガラス戸の先にはテラスがあり、外の風景をあえて見せない白い壁がそびえる。
住宅街に建つゆえ、窓の向こうは周囲の住宅の2階部分が見えるだけ。それならばプライバシーを守りつつ、空から光や風をたっぷりと得ようということだ。のびやかな眺望を楽しみたくなったら、愛犬を伴って屋上へ上がればいい。
柱や壁のないガレージや、広々としたリビングダイニング、眺望を楽しめる屋上を可能にしたのは重量鉄骨造。
エクステリアも内装同様、この先何十年も愛着が持てるよう、一切の装飾を排してタイムレスなデザインにまとめている。跳ね馬や闘牛が健やかな日々を送れるガレージハウスは、同時に人間がいつまでも心地よく暮らせる家でもあるのだ。 ■所在地:兵庫県西宮市■主要用途:専用住宅■構造:鉄骨造■敷地面積:118.20 平方メートル■建築面積:192.54 平方メートル■延床面積:70.88 平方メートル■設計・監理:松本敏治(一級建築士事務所・スタジオインデックス)■TEL:06-6857-7574
※カーセンサーEDGE 2021年7月号(2021年5月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています 文/籠島康弘、写真/一級建築士事務所・スタジオインデックス
一級建築士事務所・スタジオインデックス【EDGE HOUSE】他のガレージハウスを見てみるカーセンサーEDGE.netはこちら
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みんなのコメント
ふと視線を上げてカーテンを上げると、その先に雨ざらしの愛車の軽が部屋の明かりにぼんやり照らされている。
ここはボロの社宅。
午前3時すぎ、もうすぐ雨も上がるだろう、
さあ、息抜きもしたし、夜明け前には仕事を終わらせよう・・・・・
金持ちの金持ちによる金持ちのための家ね。