ウッドパネルの装飾 アメ車から日本車へ
1980年代を中心に、クルマの側面をウッドパネルで装飾したワゴンが流行しました。そのスタイルがいま、改めて注目されているようです。
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2020年1月に開催されたカスタムカーの祭典「東京オートサロン」では、ホンダ「N-VAN」の側面に帯状の木調装飾を施した「N-VAN MALIBU」が、「東京国際カスタムカーコンテスト2020」のKカー・コンパクトカー部門で最優秀賞を獲得しました。手掛けたのは、ドレスアップパーツなどを製造するDAMD(神奈川県大和市)です。同社はこの装飾について、「レトロな雰囲気も出ますし、このクルマで自然のなかへ足を運んでもらいたい、というコンセプトにも合う」と話します。
ほかにも近年、「東京オートサロン」などのショーでは、ウッドパネルを施したスズキ「ジムニー」やトヨタ「ハイエース」といったカスタムカーの出展が見られます。2018年にはフォルクスワーゲンジャパンが、「ザ・ビートル」の側面にウッドパネルを取り付けたモデルを出展し、その好評を受ける形で同パネルを純正アクセサリーとしても発売しています。
もともと、このような側面にウッドパネルを使ったクルマは、1960年代から70年代のアメリカ車、とりわけステーションワゴンなどで多かったものです。なお、ウッドパネルといっても多くはデカール(シールの一種)ですが、なかには本物の木の板を貼り付けているモデルもあります。
そして日本では1970年代後半から80年代にかけ、ホンダ「シビック」のワゴンモデルである「シビック カントリー」、三菱「ギャランΣ(シグマ)エステートバン」、日産「サニー カリフォルニア」や「セドリック/グロリア」のワゴンなど、ステーションワゴンを中心に標準あるいはオプション仕様として、側面にウッドパネルを施したモデルが多く登場しました。
サーファーに人気だったウッドパネルのクルマ なぜ廃れた?
1980年代当時から日産「セドリック/グロリア」ワゴンを多く取り扱ってきたという中古車ディーラーのジャッツ(神奈川県茅ケ崎市)は、次のように話します。
「このようなクルマは、日本ではサーファーを中心に人気を博したといえるでしょう。というのも、当時はロングボードも積み込めるようなクルマといえば、ステーションワゴンだったのです。ウッドパネルを使ったアメリカのステーションワゴンのスタイルを日本のメーカーが取り入れ、それがサーファー文化と紐づいたのだと思います」(ジャッツ)
その傾向は1990年代まで続き、いわゆる「RVブーム」のさなかに発売した「ラシーン」にも、ウッドパネルを純正オプションとして用意していました。しかし、やがて廃れていきます。
ジャッツはその背景として、「だんだんと流線形のクルマが増え、クルマの形にウッドパネルが合わなくなってきたこともありますが、日産に関して言えば、スタイリングよりもメカにこだわるようになったというか、こうしたワゴンにハイスペックなものを打ち出すようになってきたことも大きいでしょう」と話します。
こうして一度、廃れた木調装飾が、なぜいま注目されているのでしょうか。
カスタムの目的が変化 中古車にも注目集まる
前出の「N-VAN MALIBU」を制作したDAMDは、カスタムカー界隈にてアウトドア向けモデルの受け入れられる傾向が強まっており、クラシカルな木調装飾が、そのイメージを醸し出すうえで使われるケースがあると話します。
「この傾向は、2018年にスズキが発売した新型『ジムニー』が火をつけたということもありますが、それ以上に、クルマをカスタムする目的が変わってきているのです。昔はカスタムカーといえば『走りの追求』というイメージがありましたが、いまは『ライフスタイルの提案』が重視されています」(DAMD)
また、「いまのクルマは全体的に無機質な感じがしますが、木調装飾はやわらかいイメージを醸し出すことができます」(DAMD)とも。「N-VAN MALIBU」は特に、女性からの注目度が高かったそうです。
カスタムの世界だけでなく、1980年代から90年代当時のウッドパネルが使われたクルマそのものも、人気が再燃しているようです。
前出のジャッツによると、いま湘南などでは1980年代に次ぐサーフィンブームとも呼べる状況で、昔のスタイルが顧みられているといいます。「もちろんサーファーばかりではありませんが、当社が扱う当時の『セドリック/グロリア』ワゴンの中古車を、20代前半の若い人が購入するケースが増えています。スタイリングを気に入ってのことだそうです」と話します。
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