今、最もスタイリッシュなヤングハリウッドたち──パトリック・シュワルツェネッガー、ドリュー・スターキーなどの魅力に迫る

『ホワイト・ロータス』で人気爆発中のパトリック・シュワルツェネッガーと、5月公開の注目作『クィア／QUEER』に出演するドリュー・スターキー。『ベイビーガール』でニコール・キッドマンを見事に調教したハリス・ディキンソン、『ANORA アノーラ』で一躍トップスターとなったマーク・エイデルシュテイン。今注目の若手俳優４人のファッションスタイルとフォルモグラフィーを紹介する。

パトリック・シュワルツェネッガー

『ホワイト・ロータス』出演は、親の七光りとは言わせないカリフォルニア州知事も務めた大物俳優アーノルド・シュワルツェネッガーとケネディ家令嬢でもあるジャーナリスト、マリア・シュライヴァーを両親に持つパトリック。10歳のとき『がんばれ！ベンチウォーマーズ』（’06）の小さな役で俳優デビューし、15歳で自身のブランド「Project360」をローンチ。さらに高校時代にはピザレストランを経営する新進気鋭の実業家兼モデルとして注目された。南カリフォルニア大学在学中に俳優業を再開し、『ミッドナイト・サン　タイヨウの歌』（’18）で初主演を飾った。親の七光りと言われることが多いが、暴力的なカリスマ青年を演じた『ダニエル』（’19）やヒーロー養成大学のエリートを演じるTVシリーズ『ジェン・ブイ』（’23～）といった作品で着実にキャリアアップ。モデルとしてもトム・フォードのアイウェア広告でジジ・ハディッドと共演し、2024年にはトミー・ヒルフィガーの秋キャンペーンやエンポリオ・アルマーニの広告に出演。そしてこの春には婚約者でモデルのアビー・チャンピオンとともにキム・カーダシアンの下着ブランドSKIMSの広告に登場した。

人気シリーズ『ホワイト・ロータス／諸事情だらけのリゾートホテル シーズン3』では、タイのリゾートを家族で訪れた裕福な実業家一家の長男サクソンを熱演。放映前のティザーから話題になった全裸シーンだけでなく、弟も加わった3Pというタブーを恐れない演技が、世界中でバズっている。

『ホワイト・ロータス／諸事情だらけのリゾートホテル』シーズン3全8話、U-NEXTで配信中

ドリュー・スターキー

映画『クィア／QUEER』でダニエル・クレイグの相手役に抜擢！才能豊かな若手俳優の発掘に定評のあるルカ・グァダニーノ監督に見出された最新スター。ノース・キャロライナ州生まれのドリュー・スターキーは、50年代にブロードウェイで活躍した祖父を持ち、叔父はインディアナポリスでオペラ劇場を運営しているという芸術的な環境で成長。映画好きの母親の影響もあって、野球やバスケットボールに夢中だった少年時代から地元の劇団にも所属していたという。大学の演劇クラスで教授に俳優になることを勧められ、卒業後は製作プロダクションを起こした友人を頼って、第2のハリウッドとなっているアトランタに移住した。同地で撮影が行われる作品のオーディションを片っ端から受け始めた彼は、『Mercy Street』（’17）でデビュー。その後も『アメリカン・アニマル』（’18）や『LOVE、サイモン 17歳の告白』（’18）、トム・ホランド主演のスリラー『悪魔はそこにいる』（’20）といった話題作に出演するもののほぼ脇役。しかしアメリカン・サイコを思わせる無謀な殺意に満ちた薬物依存者レイフ・キ ャメロン役を演じたNetflixシリーズ『アウターバンクス』で一躍、注目されることに！　ウィリアム・バロウズの小説を映画化した『クィア／QUEER』で衣装を担当したジョナサン・アンダーソンは、ドリューの独特な存在感に魅了されたようで、ロエベの2025年春夏キャンペーンに抜擢している。

『クィア／QUEER』でドリューが演じるのは、初老のクィア男性リー（ダニエル・クレイグ）を翻弄するミステリアスな元軍人ユージーン。300人の中から選ばれたというドリューは、掴みどころのないアンニュイなユージーンを見事に演じた。また、ユージーンというキャラクターに合ったメガネを見つけるために、ジョナサン・アンダーソンと40種類ものメガネを試したという。

『クイア』5月9日(金)新宿ピカデリー他にて全国ロードショー
配給:ギャガ
©2024 The Apartment S.r.l., FremantleMedia North America, Inc., Frenesy Film Company S.r.l.

ハリス・ディキンソン

『ベイビーガール』でニコール・キッドマンを見事に飼いならした!?2024年にはハンター・シェイファーらとプラダの秋冬キャンペーンで共演し、2025年春夏キャンペーンではプロタゴニスト（主人公）という役目を担っているハリス・ディキンソン。自身のセクシュアリティに葛藤する青年を熱演した映画デビュー作『ブルックリンの片隅で』（’17）で一躍、アートハウス界の新星に。ダニー・ボイル監督が製作したTVシリーズ『TRUST／トラスト　ゲティ家のスキャンダル』（’18）で誘拐された富豪の息子を演じたのに続き、フィリップ王子役の『マレフィセント２』（’19）やレイフ・ファインズ演じる貴族の息子を演じた『キングスマン：ファースト・エージェント』（’21）とノーブルな青年役が続いた。高身長で手足が長いモデル体型が生きた『逆転のトライアングル』（’22）では意外なコメディセンスも披露し、マッチョに肉体改造して挑んだ『アイアンクロー』（’23）では高い身体能力を発揮した。演じるキャラクターごとに異なる顔を見せるハリスの演技力は、クリエイティブな監督や俳優から高い評価を受けている。クリエイターとしても有望で、ミュージシャンの恋人ローズ・グレイのミュージックビデオを監督し、初監督した長編映画が公開待機中だ。

高圧的な調教師のように「ニコール・キッドマンに臆せず対等でいられる俳優」という基準で選ばれたハリスが『ベイビーガール』で演じるのは、IT企業トップの性的ファンタジーを実現するインターンのサミュエル。自信満々の男らしさと、少年らしい優しさという二面性を見事に表現し、犬を調教するようにニコールを扱う姿が話題となっている。

『ベイビーガール』TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国公開中。
配給：ハピネットファントム・スタジオ
© 2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

マーク・エイデルシュテイン

『ANORA アノーラ』でスターダムを手にしたロシアのティモシー・シャラメ柔らかくカールした黒髪と整った顔立ちが印象的なロシア人俳優のマーク・エイデルシュテイン。マークが演技に興味を持ったのは、演劇学校で言語コーチを務める元女優の母親の影響だという。悪戯のお仕置きとして演劇の台詞を練習させられ、それがきっかけとなり俳優を目指すことに。ティーンの頃からファッションに興味があり、高校時代にはゴーシャ・ラブチンスキーのファッションショーにモデルとして参加。貯めたお金で家出してモスクワ芸術劇場学校に入学し、在学中に青春ドラマ『Crush』(‘21)の小さな役で俳優デビュー。しかしマークの才能は埋もれることはなく、『The Land of Sasha』（’22）の主演の座を手に入れた。大学選択に悩み、真剣な恋愛にも及び腰な優柔不断な17歳少年の成長を描く本作は、ベルリン国際映画祭でプレミア上映され、マークも俳優としてブレイク。以来、「ロシアのティモシー・シャラメ」と呼ばれている。第二次大戦中の実話を描く『Pravednik』（’23）で赤軍将校に救われるユダヤ人少年を演じた後で芸術学校を卒業し、続いて出演したSF映画『One Hundred Years Ahead』（’24）で共演したユーリー・ボリソフの勧めで受けたテープオーディションで『ANORA アノーラ』出演のチャンスを掴んだ。バレンシアガの2025夏キャンペーン「The Screen Tests」にも登場している。

アドリブも多用したというイヴァン役

マークが『ANORA アノーラ』で演じたのは、ロシアの新興財閥の放蕩息子イヴァン。勉強にきたはずのアメリカでパーティ三昧の生活を送るうちに、クラブでストリッパーのアニー（アノーラ）と出会い、彼女に夢中になってしまうという展開だ。浮世離れしていて、自信たっぷりな反面、親が敷いたレールを踏み外すことを恐れてもいる大人になりきれないイヴァンの心情を見事に演じきった。

『ANORA アノーラ』全国公開中
配給：ビターズ・エンド ユニバーサル映画
©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved.　©Universal Pictures

文・山縣みどり
編集・遠藤加奈（GQ）