2021年2月13日午後11時7分ごろ、福島県沖の深さ約55kmを震源とする最大震度6強の地震が発生した。気象庁は10年前の東日本大震災のきっかけとなった、東北地方太平洋沖地震(最大震度7)の余震と考えられると発表した。
甚大な被害をもたらした東日本大震災が発生したのは2011年3月11日。日付だけでいえば『ベストカー』本誌発売日の翌日だ(『ベストカー』本誌は毎月10日・26日発売)。
え…車間距離を開ければ渋滞が減る!?? 高速道路の渋滞は誰が悪いのか
今一度、震災とその後についてお考えいただきたく、本企画を立ち上げた。
今回この企画では、「震災時にクルマはこうすべき」という結論は出さない。震災時、クルマは道路左側に停め、避難にクルマを使用しないというのが原則だ。だが、東日本大震災時、体の不自由な親をクルマに乗せ、津波から逃げきったという例もあった。よってここで紹介するのは、震災時に有利なクルマと普段の準備だ。
アドバイスをいただいたのは備え・防災アドバイザーである高荷智也氏。氏が考える震災後に有利なクルマと、無理のない程度に実践できる普段の備えを紹介する。この企画を機に、再び防災意識を強く持っていただければ幸いだ。
※本稿は2021年3月のものです
文/ベストカー編集部 写真/Adobe Stock、ベストカー編集部 ほか 協力/高荷智也
初出:『ベストカー』 2021年4月10日号
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■「震災に強いクルマ」は存在するのか? 備え・防災アドバイザー高荷智也氏に聞く
それではここからは具体的に震災時に有利なクルマなどについてソナエルワークス代表 高荷氏に伺っていく。
* * *
地震の揺れそのものにクルマで対応しようとすると、例えば走っていた道路が陥没した時に耐えるクルマは何なのかとか、そういう話になりかねませんので、基本的には地震そのものより避難に使うか、地震の後の生活に活用できるかという話になると思います。
震災後の荒れた道にSUVが強いというのはありますが、メチャクチャになった町の中とか、道なき道を逃げるという状況は実際には考えづらいので優先順位的にはあまり高くありません。
どちらかといえば地震の後、車中泊とかライフラインとかそういう点に着目すべきだと思います。
東日本大震災では、直接的な被害が小さかったエリアでも生活には大きな影響が出た
車中泊ならキャンピングカーもいいのですが、外部から水や電気などの供給がないと単なる小屋になってしまいます。
ですので、私は震災直後に強いクルマとしてプラグインハイブリッド(以下、PHEV)を挙げます。PHEVの利点は電力の回復か、ガソリンスタンドの営業再開のどちらかがあれば、クルマを動かせることです。
東日本大震災の時も電力が先に回復した地域と、道路が復旧してガソリンスタンドが先に供給を始めた地域がかなりバラバラでして、今後の災害でもどちらが先に復旧するかというのはわかりません。
なのでガソリンのみならず、外部からの充電で電気でも走れるというのは、他のクルマにはない強みだと思います。
津波に飲まれた街。手前にフロントからルーフまで原型をとどめていないクルマがある。一見強いように見えるが、濁流の前ではいとも簡単に車体が浮いて流されてしまう
次にクルマに積んでおいたほうがよいものの話です。水や食べ物など消耗品については最低3日、できれば7日分というのが家に備蓄しておく際の目安なんですが、家族4人分の水を3日分用意すると大体40kgくらいになってしまうんですね。
それを常にクルマに積んでおくのは難しいのではないでしょうか。
現実的なところでは1日分くらいの水と食料をクルマに積みっぱなしにしておいて、半年に1回くらいで入れ替えるというのがギリギリできるところかなという感じです。
もちろん積みっぱなしができるなら載せておいてもいいですが、それでも毎年10月くらいには水などは入れ替えていただきたいですね。(了)
悪路走破性の優先順位は高くないとしつつも、高荷氏はSUVのアウトランダーPHEVに魅力を感じるという。RAV4PHVもお薦めとのこと
■通れた道を可視化する ホンダ「通行実績情報マップ」
東日本大震災では交通インフラが破壊されたうえに正確な情報も入手しづらくなり、クルマが通れる道はどれなのかもわからなくなっていた。
そんな状況下で役立ったのが、ホンダの双方向通信型カーナビ「Hondaインターナビ」だ。プローブ情報と呼ばれる、ユーザーが実際に走行した実績を「通行実績情報マップ」としてネット上に公開。
避難・救援ルートを見つけ出すための支援ツールとして大きな役割を果たしたのだ。この通行実績情報マップは、2011年のグッドデザイン大賞にも選出されている。
ホンダ「通行実績情報マップ」
■載せて安心、車載防災キット
トヨタや日産、ホンダがオプションで用意する車載用の防災キット。高荷氏も「ひとつひとつアイテムを選ぶ必要がなくなるので便利」と評価する。
メーカーによって内容物が微妙に異なるが、トイレはいずれのメーカーのものにも入っている。大雪などで車内に閉じ込められた時にも役立ってくれること確実なので、ぜひ愛車に積んでおこう。
車載防災キット
■家電が使えるという安心 給電できるクルマ
地震では電気、水道、ガスといったライフラインもダメージを受ける。そのなかでは電気が一番早く復旧し、東日本大震災でも震災後1日で50%超、3日後時点で80%弱、1週間後には95%以上の電力が復旧している。
とはいえ震災で心理的に追い詰められている時、たとえ1日でも電気が使えないことは、多大なストレスになるはずだ。
そこでここでは電気復旧までの期間に活躍が期待できる、給電機能を持つクルマを紹介する。ここで紹介しているクルマを愛車とすれば、日頃の備えという点で他のクルマより少し有利になるはずだ。
* * *
強大なエネルギーを持つ自然災害の前に人間ができることはあまり多くなく、大震災時にクルマが使えるシーンというのは、かなり限定される。
しかし揺れが収まった後には有利となるクルマとそうならないクルマがハッキリするので、現在次期愛車を探している人は、そういったあたりも含めて検討してみるといいのではないだろうか。
そのほかお薦めしたいのが右ページでも紹介している防災キット。大型カー用品店でもオリジナルのものが販売されているので、購入して自分なりにアレンジを加えるといいだろう。日々の備えこそが、なによりも大事なのだ。
●レクサス UX300e(580万~635万円)
駆動用バッテリー容量54.4kWh。ラゲッジスペース内にあるAC100V・1500Wコンセントから、400W供給で一般家庭約2.5日分の電力が供給可能(満充電時から)。
レクサス UX300e(580万~635万円)
●トヨタ プリウスPHV(331万3000~439万2000円)
駆動用バッテリー容量8.8kWh。駆動用バッテリーのみだと、1時間あたり400W消費で7時間、エンジン併用だと1時間あたり400W消費で5日分程度の電力供給が可能。
トヨタ プリウスPHV(331万3000~439万2000円)
●トヨタ RAV4 PHV(469万~539万円)
駆動用バッテリー容量18.1kWh。駆動用バッテリーのみだと1時間あたり400W消費で20時間、エンジン併用だと1時間あたり400W消費で5日分程度の電力供給が可能。
トヨタ RAV4 PHV(469万~539万円)
●日産 リーフ(332万6400~499万8400円)
中継器を介し住宅に電力を供給するV2Hで、駆動用バッテリー容量40kWhの標準モデルなら2日から3日、60kWhのe+なら3日から4日分の電力供給が可能だ。
日産 リーフ(332万6400~499万8400円)
●ホンダ Honda e(451万~495万円)
駆動用バッテリー容量35.5kWh。ポータブル外部給電装置「パワーエクスポーター9000」を介した場合で、3日分程度の電力供給が可能だ。V2Hにも対応している。
ホンダ Honda e(451万~495万円)
●ホンダ クラリティPHEV(598万9500円)
駆動用バッテリー容量17.0kWh。ポータブル外部給電装置「パワーエクスポーター9000」を介した場合で、ガソリン満タンから6日分程度の電力供給が可能だ。
ホンダ クラリティPHEV(598万9500円)
●三菱 アウトランダーPHEV(436万4800~529万4300円)
駆動用バッテリーの容量は13.8kWh。V2Hの場合、駆動用バッテリーのみを使うと約1日分、エンジン併用の場合だと約10日分の電力供給が可能となっている。
三菱 アウトランダーPHEV(436万4800~529万4300円)
●三菱 エクリプスクロスPHEV(384万8900~447万7000円)
駆動用バッテリー容量など給電に関する部分はアウトランダーPHEVに準ずる。V2Hの場合、駆動用バッテリーのみで約1日分、エンジン併用だと約10日分の電力供給が可能。
三菱 エクリプスクロスPHEV(384万8900~447万7000円)
●その他 主な1500Wコンセントを持つクルマたち
・トヨタ ヤリスHV(メーカーOP)
・トヨタ カローラ系3モデルHV(メーカーOP)
・トヨタ シエンタHV(メーカーOP)
・トヨタ アルファード/ヴェルファイアHV
・トヨア ノアHV(G、X 。メーカーOP)
・トヨタ クラウンHV(メーカーOP)
・トヨタ カムリ(X以外にメーカーOP)
・トヨタ プリウス
・トヨタ MIRAI
・トヨタ ヤリスクロスHV(メーカーOP)
・トヨタ C-HR HV(メーカーOP)
・トヨタ ハリアーHV(メーカーOP)
・トヨタ RAV4 HV(メーカーOP)
・レクサス LS HV(メーカーOP)
・レクサス CT(メーカーOP)
・レクサス RX450h系(メーカーOP)
・レクサス NX300h
・ホンダ ステップワゴンe:HEV SPADA G EX ホンダセンシング(メーカーOP)
・ホンダ オデッセイe:HEVアブソルートEX
※電力供給可能日数は4人家族の一軒家で、1日の使用量を10kwhから12kwhとして計算
(車両解説/永田恵一)
【番外コラム】トラックドライバー 長野潤一 あの震災の衝撃
震災直後は関東地方も大混乱だったが、5日目に丸の内の大企業から東北の支店に備蓄物資を運ぶ仕事が入った。その後も何度か東北沿岸部の各地に支援物資を運んだが、そこには衝撃の光景が広がっていた。
仙台の荒浜は三陸道から海寄りの街が、ほぼなくなっていた。石巻では道路の真ん中に漁船があり、製紙工場の幅100m以上ある塀が、引き波ですべて海側に傾いていた。工員は日和山に逃れ九死に一生を得たという。
女川の中心部では3~4階建てのビルがまるでサイコロのように根こそぎ倒れ、他のビルの屋上には乗用車が載っていた。気仙沼の市街地に配達に行った時は、指定された住所付近の建物はすべてガレキと化していた。
雨がそぼ降るなか、ダンプカーのみが行きかい、僧侶が一人手を合わせ供養をしながら歩いていた。この世のものとは思えない光景だった。他の人を助けるために亡くなった方も多数いると聞く。謹んでお悔やみ申しあげたい。
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みんなのコメント
役立ったのは太陽光で充電出来るモバイルバッテリー
ついでにオール電化住宅の方はイワタニのガスコンロが一番役立ったと
家が倒壊するぐらいで無ければ何でも良いかと・・・・
で家が倒壊した時はハイエースやエブリィ、ハイゼットが一番役に立つね・・・