シティカーでもある小さなSUV
text:Kris Culmer(クリス・カルマー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
スズキ・イグニスは、シティカーでもある小さなSUVだ。全長は3700mmしかなく、全幅は1690mmと細身。欧州では、コンパクトカーの中でも小柄な部類に入る。
タイヤが四隅で踏ん張ったスタンスで、悪路にも備える。スズキは、英国ではクラス唯一のSUVだと主張するが、フェイスリフトでその個性を強めたという。
フロントグリルとバンパーはデザインが新しくなり、ボディには新色を追加。試乗車は、英国の田園風景にもよく似合う、タフ・カーキという色だった。
デザイン以上にスズキを忙しくしたのは、機械的な改良。乗り心地を改めるため、テールゲートやルーフ、フロア、サスペンション・マウント回りに補強材を追加。ノイズを減らす目的で、新しい防音材も採用した。車重は895kgと軽いまま。
英国版ではエンジンも一新。デュアルジェットと呼ばれる、スズキ製の1.2L 4気筒ユニットはK12Dのコード番号を得ている。欧州でも、イグニスはマイルド・ハイブリッドのみが売られることとなった。
システムが採用する電圧は12V。リチウムイオン・バッテリーの容量が0.12kWhに増やされ、燃費効率を向上させている。
進化したエンジンと大きなバッテリー、パワフルになったスターター・ジェネレーター(ISG)により、最も効率に優れる仕様の場合、WLTP値の燃費は19.7km/L。CO2の排出量は114g/kmとなる。
5速MTからCVTに切り替えると、カタログ上の燃費は18.2km/Lへ落ちる。あるいは、前輪駆動から四輪駆動へ切り替えると、18.4km/Lへと落ちる。
初期モデルより乗り心地は改善
イグニスに搭載される四輪駆動は、パーマネント式。ビスカスカップリングを介して、必要に応じてリアタイヤへ伝えるトルク割合を変化させる。
普通に運転している限り、トルク割合の変化には気付かない。スズキによれば、コーナリング性能を向上させ、冬場での扱いやすさが高まるとしている。寒い地域に住む人にとっては、有用だろう。また四輪駆動でも、車重は1tを超えない。
マイナーチェンジを受けた2020年版イグニスを運転して、最初に気づくのは乗り心地の改善。2018年の初めにも、後部座席の乗り心地を良くするアップデートを受けていたが、さらに今回の変更で良くなっている。
低速域ではアスファルトの乱れを拾い、まだ乗り心地が素晴らしいとはいえない。しかし、初期のイグニスより間違いなく快適になっている。
高速道路での風切り音やロードノイズといった、洗練度も良くなった。ただし、毎日110km/hの速度で通勤するような場合は、違うクルマを選んだ方が良いかもしれない。
マイルド・ハイブリッド化により、最高出力は90psから83psへと落ちている。ただし、明確に気付くほどのパワーダウンでもない。そもそも、速いクルマではなかった。
0-100km/hの加速に要する時間は12.8秒で、従来どおり。高速道路の上り坂で、減速に悩むことはないだろう。ただしMTの方が、高速道路は走りやすいと思う。
優れた燃費に実用性重視のインテリア
今回の試乗では、高速道路や一般道などを交えて、1360kmほどの距離を走行した。得られた燃費は、18.3km/Lと充分に納得できるもの。ISGのアシストで、0.2Lのガソリン消費をアイドリング時に減らせたようだ。
筆者のこれまでの経験では、燃費は更に伸びる。前輪駆動モデルで気を使って運転すれば、23.0km/Lくらいは出せるだろう。
イグニスは、ハンドリングを楽しむタイプのクルマではない。それでも、郊外の道を運転すれば、クルマと穏やかな対話を楽しむことができる。シリアスなやり取りではないが、ドライバーにちゃんと応えてくれる。
インテリアは新しさに欠け、実用性重視。傷の付きにくい硬質なプラスティックを用いているが、スタイリッシュな車内のシティカーを探している人の目には、魅力的に映らないとは思う。
センターコンソールのパネルは、ガタツキが大きい。それでも、堅牢ではあるはず。エアコン用のコントローラーは大きく扱いやすい。ヒルディセント・コントロールや車線維持支援システム、衝突被害軽減ブレーキのスイッチ類も同様だ。
タッチモニター式のインフォテイメント・システムも、基本的には従来どおり。反応が鈍く、扱いやすいわけでもない。ステアリングホイール上に、ステレオの操作ボタンがあるのはありがたい。
気候変化の大きい地域では有力な選択肢
運転姿勢は、かなりアップライト。シートはランバーサポートの効きも良く、ステアリングホイールは上下に動かせる。多くの人が、丁度いい姿勢を見つけられるだろう。
ボディ高があるから、インテリアは開放的に感じられる。リアシートの足元は、それほど広いわけではない。
今回の試乗ではオフロード走行の機会はなかったが、AUTOCARでは以前、四輪駆動のイグニスの優れた走破性を確かめている。
英国での価格は、四輪駆動で一番上のトリムグレードでも1万7499ポンド(237万円)と、リーズナブル。フィアット・パンダの方が安価だが、内容は少々時代遅れにも感じてしまう。
スズキ・イグニスは、ジムニーに置き換わるクルマではない。しかし、雪が降るような気候変化の大きい地域でコンパクトモデルが必要なら、この小さなSUVは有力な選択肢となるだろう。
スズキ・イグニス 1.2ブースタージェット・ハイブリッド 4WD SZ5(英国仕様)のスペック
価格:1万7499ポンド(237万円)
全長:3700mm
全幅:1690mm
全高:1605mm
最高速度:165km/h
0-100km/h加速:12.8秒
燃費:18.4km/L
CO2排出量:123g/km
乾燥重量:940kg
パワートレイン:直列4気筒1197cc自然吸気+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:83ps/6000rpm
最大トルク:10.9kg-m/2800rpm
ギアボックス:5速マニュアル
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みんなのコメント
なんでこんな事するんだろね。