話題騒然のBYDラッコを国沢光宏親方が徹底チェック! 注目は、子どもを守る安全性へのこだわりやEVならではの骨格構造がもたらすメリット、そしてライバル車を彷彿とさせる室内空間の作り込みだ。一般的な試乗レポートでは見えてこないメカニズムの工夫と隠された真価に迫る!
文:国沢光宏/写真:中里慎一郎
【画像ギャラリー】N-BOXを研究し尽くしたとウワサの内装がコレ!! ラッコの試乗走行ショットも大公開!(35枚)
ついに判明ラッコのメカニズム! 軽の常識を覆す圧巻の安全性
久しぶりに話題騒然のクルマなのでジックリ紹介したい。7月28日に発表/発売となったBYDラッコながら、クルマ好きが気になる詳細なメカニズム(最近はアーキテクチャーなどと言う)についちゃ”ほぼ”解らなかった。加えて試乗レポートも皆さん走りや仕上げのクオリティ評価などに重点を置くと思う。一人ぐらい違う方向からラッコをチェックしてみたい。
まずは幼児や子供を乗せた時の安全性である。両側電動スライドドアやリアのパワーウインドウに首や指を挟まれてケガをするケースって少なくない。早速試してみたら電動スライドドアのセンサー優秀。足や腕だけでなく、小指を挟んでみたがキッチリ止まり、少し戻った。前後のパワーウインドゥも超優秀。窓ガラスが動くときの摩擦抵抗が小さいんだと思う。敏感なセンサーを使っている。
続いてシートベルト。御存知の通り日本の軽自動車の衝突基準って欧州やアメリカの水準より少し低い。さらに日本の基準だとリアシートの安全基準無し。ラッコといえばリアシートにプリテン付きを採用している。衝突した瞬間、緩みを巻き取りシートベルトを身体に密着させるための機能なのだけれど、コスト高になるため日本勢は安価なELRで済ますケース多い。
ボディ構造も衝突に対し物理的に有利。前面衝突時に最も重要なのが「潰れ代」。軽自動車のボンネットを覗けば解る通り、硬い構造物多い。エンジンについていえば、前面衝突で前から押されたら圧縮されないため潰れ代にならない。電気自動車はモーターの上にインバーターが載るものの、いずれも絶対的なサイズがコンパクトだからエンジン車より圧倒的に有利。
見えないトコロへのこだわり、最新AI制御のADAS
ラッコの場合、インバーターまで電池パックと一体化して床下に持って行った。ボンネット開けると低い位置にコンパクトなモーターがあるだけ。絶対的なクラッシャブルゾーンはAセグやBセグに匹敵するほど。物理的に有利なためおそらく衝突試験では良い成績を残すことだろう。ちなみにユーロNキャップの評価を見ると全般的にBYD優秀。アウディやメルセデスと並ぶ。
自動ブレーキに代表されるADASはいかに? 試乗会じゃ試せなかったが、これまでBYDのADASって日本車の平均レベルだった。中国車といえばハンズフリー走行すら可能なADASで知られるけれど、日本仕様のシーライオン7といえば普通。聞けばボッシュのプログラム式を使っているそうな。今や中国のADASはAI制御になっており、旧世代のプログラム式は無い。
そんなことから日本仕様を設定するにあたりボッシュのシステムを導入したようだ。当然ながらボッシュが主導権を持つシステムのため、改良速度遅い。N-BOXもボッシュを使っていたけれど、路面に敷かれた鉄板で急ブレーキ掛かるというユーザーからの苦情に対し改良をリクエストしたのに、対応が遅くいかんともしがたかったという。現行モデルはモービルアイに変更している。
日本の開発速度でも「遅い!」と評価されるようだと、日本の3倍と言われる中国じゃ「使い物にならん!」。ラッコは今や世界をリードする中国水準のADASを採用している。CMOSカメラの性能からしてボッシュより圧倒的に優れているという。「じっくり評価して欲しいです」と自信タップリだった。ラッコ、見えないトコロのスペックや性能の方が興味深い。
その他、安全性では最上級グレードのみながら、空気圧センサーと子供などの車内放置防止センサーが付く。軽自動車のユーザーは空気圧チェックを忘れがち。インパネに空気圧が表示されていれば(基準値より200hPa以上低いとコーション出る)誰だって気づく。子どもの放置防止センサーもコンパクトな軽自動車は重要性低いだろうが、付いているにこしたこと無し。
下まわりに見えた「コンパクトカー級」の基本骨格がスゴイ!
続いて下回りのチェックなど。フロントサス、アーム類は鋼板プレスで、コストダウン技術が随所に取り入れられている日本の軽乗用車を参考にしたんだと思う。太さや構造も不安なし。ボルトやナットの頭が赤いので「もう錆出てるの?」と思いザラザラ度を確認しようとしたら「ぬるっ」。錆の色した防錆グリスでした。主要ボルト&ナットは精密な締め付けトルク可能な青いコート剤仕上げ。
リアを見るとダンパー太い! 車重と必要な性能から設定しているんだと思う。ここだけ見ても軽自動車というよりコンパクトカー基準だと解る。リアサスはトーションビームで、アングル鋼材を使っている。リアディスクブレーキがちょっと嬉しい。床下もチェックしたがキッチリした硬いアンダーガードでフルに覆っており、使われているナット&ボルトは防錆グリス塗布済み。
タイヤはサイルン。10年くらい前だと安売りタイヤの代表格だったものの(何回かテストしました)、ここにきて電気自動車用タイヤはなかなかの評価を得ている。今や電気自動車用タイヤといえばコンチネンタルかミシュランか中国勢だと思う。当然ながら車重のある電気自動車用なので減りが早いと言うこともないかと。指定空気圧は標準的な250hPaでした。
ほぼN-BOX!? これは、かなり研究してきてるぞ……
続いてインテリア。比較車にN-BOXを持って行ったのだが、驚いたことにリアシートとラゲッジスペース周りはN-BOXとそっくり! 正確に表現すると「同じ」。リアシートの収納方法や、フロントシート後ろ側の折りたたみテーブル、ラゲッジスペースの使い勝手を含め「パクり」である。BYDのお家芸だったことを思い出す。コンビニフックが追加されるなど改良されてます(笑)。
長い前置きになった。試乗といきましょう。エンジン車と同じようなセレクトレバーでDレンジを選んで走り出す。いろんな意味で普通に乗れますね。アクセルに対する加速感は適当。それでいて登り坂を全く苦にせずグイグイ走る。1200kgの車重は感じない。ブレーキといえば、意外なことにペダル回生を行っておらず。ペダル踏んだ分は100%油圧のため、普通のブレーキフィールだった。
乗り心地はバネ上が重くレーザー溶接を多用したボディ剛性高いため、軽自動車レベルじゃない。誰でも「乗り心地いいね」だと思う。ステアリングフィールもコスト重視の小さいモーター使う日本勢と違い、コンパクトカーレベル。基本設計や使われている部品は、大雑把に言えば軽自動車でなくコンパクトカー。軽自動車として考えたら重いが、コンパクトカーだと普通です。
同業者でも重箱のスミをつつくレベルの駄目出ししか出来ないと思う。ましてや軽自動車の平均的なユーザーなら良いクルマにしか感じないだろう。付け足しておけばラッコは12Vの補機バッテリーもLFP。走行用電池の一部に組み込んである。LFPなので生涯交換の必要なし。電気自動車やハイブリッド車に意外と多い12Vバッテリーがオシャカになっての走行不能は無い。
色眼鏡抜きでラッコをみるべし! 噂や懸念にズバリ回答!
最後に私のWebでラッコの記事を書いた時の反応の中からいくつか。
・「FFしかないので雪道では乗れない」。
その通りなので、降雪地域に済んでいるなら無理してラッコを買うこともない。
・「電気自動車は寒冷地が苦手」。
これもその通り。特にBYDは燃えないLFP(リン酸鉄リチウム電池)なので日本車に使われている三元系より低温側は苦手。気温マイナスになる頻度高い地域だと急速充電性能は落ちる。
その換わり電池寿命は圧倒的に長い。だからこそ電池保証は8年/16万kmと長く、1万8千円出して延長保証すれば10年/20万kmに伸びる。おそらく60万kmくらいまで70%にならないだろう。
・「中国共産党の意図によって遠隔から傍受されたりサイバー攻撃を仕掛けられたり、車両の機能停止や誤作動を引き起こされたりするリスクが懸念される」。
私の場合、抜かれて困る情報など無し。そもそも個人情報なんかネットに繋いでいる時点でバレバレ。中国製の家電だって多い。車両が突如暴走するという件も、一回しか通用しない。むしろバックチャンネル仕込んであるのが露呈したらBYDのビジネスが崩壊する。武器としてのコスパは決定的に悪いです。
・「日本から逃げ出せば保証もヘチマもない」。
全面肯定である。こればかりは予想できないですから。不安なら間もなく年内にも出てくるスズキの電気軽乗用車を考えたらいいと思う。
ラッコ、同業の皆さんホメまくると思う。となると私の記事を含め、中国嫌いの皆さんから叩かれまくることだろう。シーライオン7を買った時だって「いくら貰ったんだ?」とか「ハニートラップだな」と書かれた。
50人くらいの同業者に高い評価の記事を書かせるとなれば、すんごい予算とたくさんの魅力的なハニー(笑)を仕込んだということ。中国車嫌いの皆さんはいろんな場所で頑張らなくちゃなりませんね(笑)。
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