驚異的な動力性能が優れた操縦性と融合
イタリアのカロッツェリア、ベルトーネ在籍時代のマルチェロ・ガンディーニ氏がデザインを手掛けたランボルギーニ・カウンタックは、息を呑むほど素晴らしいクルマだ。尖ったカタチだけではない。
【画像】ランボルギーニ・カウンタック オリジナルとHVの2代目 最新のアヴェンタドールも 全81枚
「素晴らしい設計が施されています。驚異的な動力性能が、優れたハンドリングとグリップ力、ブレーキ性能などと融合。驚くほど見事なパッケージングです」。と、当時の自動車誌は褒め称えている。
特長といえるのが、V型12気筒エンジンをミドシップし、そのフロント側にトランスミッションが位置するレイアウト。ギアで減速されると後方へ折り返し、エンジンのオイルサンプを貫通するドライブシャフトを介してリアデフへ伝達。タイヤを駆動した。
車両中央に集約されたドライブトレインによって、エンジン後方のテール部分には想像以上に大きい荷室を設けることができていた。フロントのボンネット内や、シートの後方にもちょっとした鞄をしまえる空間がある。
ほぼ垂直に跳ね上がるシザーズドアは、駐車場で見事なショータイムを演出するだけでなく、悪くない乗降性も叶えている。しかし、燃料タンクが内蔵されるサイドシルは幅が広く、格好良く乗り降りするには何度か練習が必要だろう。
経営難の16年間に約2000台を生産
当初のアイデアではルーフ中央がえぐられ、高い位置に付いたペリスコープ(潜望鏡)ミラーの視界を得ていた。だがLP400では一般的なミラーとなり、車高の低いLP400Sではルーフもフラットに。頭上空間を広くするため、1980年以降はルーフが高くなった。
またコンセプトカーから量産モデル化するに当たり、ボディサイドにはNACAダクトを、サイドガラス後方には大きなエアインテークが追加されている。不足ない冷却性能も得ていた。
1978年のLP400Sでは、幅の広いタイヤとホイール、ホイールアーチのエクステンショナーとリアウイングが標準装備された。これらはオプションとして「S」以外でも選択できたが、後方視界を制限し、空気抵抗を増大させるアイテムでもあった。
大きなリアタイヤも抵抗を加算。見た目の迫力は増すものの、最高速度は16km/h程度低くなってしまう。
経営が難しい状態にあったランボルギーニは、カウンタックを16年も生産した。その間に6度も倒産し経営者が変わっているが、スーパーカーのアップグレードは何度も繰り返されている。
生産数の正確な記録はないようだが、1484台から2042台の間といわれる。少なくとも右ハンドル車が238台生産され、オラチオ・パガーニ氏がスタイリングに手を加えた25thアニバーサリーが最も多くラインオフしたことは間違いない。
エンジンが4バルブ化され、カウンタックでは最も運転しやすいといわれるクアトロバルボーレが、その次に生産数は多い。初期のナローボディは希少で、オリジナルのデザインという理由からコレクターの注目度は高い。
問題になるスペースフレームやボディの錆
カウンタックは複雑にスチールパイプが組まれたチューブラー・スペースフレームを基礎骨格とし、FRP製のフロアとバルクヘッド、インナーフェンダーが接着されている。ルーフはスチール製で、フレームに溶接されている。
さらにアルミニウム製のボディパネルを取り付け、コンポジット素材のフェンダーやサイドシルを接着。塗装ブースへ運ばれた。そのため、フレームなど見えない部分の腐食が問題になりがちだ。
マルチェロ・ガンディーニ氏の傑作といえるランボルギーニは、デザインとパフォーマンスで新たな基準を設定し、スーパーカー・ブームを加速させた立役者といえる。老若男女問わず、多くの注目を集めるアイコンであることは間違いない。
オーナーの意見を聞いてみる
イタリア車のコレクターであるジャイ・シャルマ氏が1年かけて探し出したのが、黒いカウンタック 5000クワトロバルボーレだ。「世界中を探して、LP400Sや5000Sのオークションにも参加しました。最終的に落札したのが、右ハンドル車のこれです」
「英国のカレラスポーツ社に依頼し、エンジンのヘッド周りとサスペンションをメンテナンスしてもらいました。クラッチ交換とキャブレター調整も一緒に。インテリアはすべてオリジナで、アルパイン社製のステレオも現役です」
「小さい頃から憧れていたクルマで、やっと手に入れました。25歳の時にランボルギーニ・エスパーダも購入していますが、もっと早くオーナーになりたかったと思います」
「フェラーリ308でサーキットを走ることもありますが、カウンタックの操縦性の良さには感動しました。運転していて幸せを感じます」
「注目度は信じられないくらい高いです。これほどのクルマは他にないでしょう。デザインのオリジナルは51年も前ですが、今でも未来から来たクルマのように見えますよね」
英国で掘り出し物を発見
ランボルギーニ・カウンタック 25thアニバーサリー
登録:1990年 走行:6384km 価格:応談
レッドのボディに、レッドのパイピングが入ったタンのインテリアという、いかにもな配色のカウンタック。最終年式の1台で、新車購入時からのワンオーナー車だった。走行距離も驚くほど短い。
マニアが欲しがる、4ピースのランボルギーニ・レザーラゲッジセットが付いている。フロントの荷室とエンジンルームはもう少し手を掛けたいところだが、それ以外の状態は完璧といえそうだ。
ランボルギーニ・カウンタック 25thアニバーサリー
登録:1988年 走行:8742km 価格:応談
ブラックのレザー内装に、オプションだった大きなリアウイングがそびえる、25thアニバーサリー。走行距離は1万kmにも満たず、新車状態に近いといっていい。
2022年3月にエンジンのメンテナンスを受けている。前後のハッチを支えるガスストラットは新品に交換済み。アメリカ・ジョージア州で新車時から殆どの期間を過ごしているそうだ。
中古車購入時の注意点などは後編にて。
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