現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > アルファ・ロメオ 8C 2900B「バレーナ」(2) アルゼンチンでレースデビュー 戦時中はV12だった?

ここから本文です

アルファ・ロメオ 8C 2900B「バレーナ」(2) アルゼンチンでレースデビュー 戦時中はV12だった?

掲載
アルファ・ロメオ 8C 2900B「バレーナ」(2) アルゼンチンでレースデビュー 戦時中はV12だった?

1951年も競争力の高かったアルファ 8C 2900

基本設計は10年以上前だったが、アルファ・ロメオ 8C 2900B コルサ・スペリメンターレの競争力は1951年でも高かった。ステアリングホイールを握ったアマチュアのカルロス・ペレス・デ・ヴィラ氏は、狭いサーキットでは扱いにくいと感じたようだが。

【画像】スタイリングはコロンボ 8C 2900B「バレーナ」 戦前の8Cと6C 21世紀の8Cと4Cも 全117枚

彼はアルゼンチン北東部、ロサリオの市街地コースで開かれたレースで3位に入賞。その東の海岸線、コスタネーラの高速コースでは、直列8気筒スーパーチャージャー・エンジンと流線型ボディの威力が発揮され、最速ラップを残している。

同年に開かれたブエノスアイレス・グランプリにも、「バレーナ」は出場。フェラーリやジャガーといったマシンと渡り合ったものの、ペレス・デ・ヴィラは10周目にリタイアしている。

資料を遡ると、バレーナはクラッシュしていたらしい。その後は数10年間、ブエノスアイレスでバラされた状態のまま保管されていた。1980年代に、情報を聞きつけたアメリカのクラシックカー・ハンターが彼の自宅を訪れ、部品の一部を確認している。

発見されたコロンボのサイン入り図面

仲介人による取引交渉を経て、アルファ・ロメオ・コレクターでF1へも深く関与した、ヴィットリオ・ザノン氏が購入。「バレーナ」は、イタリアへの帰郷を果たした。

レストア作業に先立ち、アルファ・ロメオの歴史家、ルイジ・フージ氏はジョアッキーノ・コロンボ氏のサインが入った図面を捜索。アルゼンチンでは、レースを戦っていた頃の写真も発見された。

オリジナルのボディは、大部分が失われていなかった。当時から残っていた部分をすべて保存しつつ、ザノンは、トリノのコーチビルダーへ新しいボディ製作を依頼。レストアされたシャシーへ架装された。

1989年に、バレーナの復元作業は終了。同年9月に開かれたオランダ・アルファ・ロメオ・クラブのイベントでお披露目されると、大きな話題を集めている。だが病を患っていたザノンは、オランダのクラシックカー・ディーラーを通じ、売却を決める。

ペブルビーチ・コンクール・デレガンスへ出展

英国人のクリス・マン氏が購入するものの、ほどなくしてモナコのレ・グランデ・マルケス・オークションに出品。オランダにラウマン自動車博物館を開設した、エバート・ラウマン氏が最終的に買い取っている。

彼は、クラシックカーを走らせることをこよなく愛してきた。コルサ・スペリメンターレも、もちろん頻繁に公道へ出ている。1996年と2001年、2002年のクラシックカー・イベント、ミッレ・ミリア・レトロスペクティブへの出場も果たしている。

3年後には、アメリカのペブルビーチ・コンクール・デレガンスへ出展。アルファ・ロメオ歴史博物館とも交流があった彼は、そこで担当者の共感を得て、8C 2900B ル・マン・ベルリネッタ、シャシー番号412033の貸出しへ繋がった。

2台の個性的なアルファ・ロメオが、1つの場所に揃ったのは70年ぶり。デザイナーのジョヴァンニ・アンデルローニ氏によるトゥーリング社製ボディと、コロンボが手掛けたボディを、しみじみと見比べることが可能になったといえる。

戦時中はV12エンジンでテストされていた?

オランダでアルファ・ロメオを専門とする職人、ラウル・サン・ジョルジ氏は、ラウマンのコレクションにも深く関与してきた。1台限りのバレーナは、当初悩みのタネだったという。見た目が酷くレストアを提案するものの、なかなか関心は示されなかったとか。

しかし、同僚のディノ・コニョラート氏もラウマンへ打診。最終的には本格的なレストアが始まった。博物館の倉庫に、オリジナル・ボディの大部分は保管されていた。本来付いていたフロントグリルまで発見できたという。

ディノの息子、パウロ・コニョラート氏は、コロンボが描いた1/25サイズの図面を入手。アルファ・ロメオのアーカイブで発見された、リア周りのスケッチも参考にしながら、再現用の図面製作を進めた。

「かつての図面を確認すると、リア側には2つのマフラー用の穴が描かれています。一方、オリジナルのインナーボディでは、片方の穴は溶接で塞がれていました。もしかすると、戦時中はV12エンジンでテストされていたのかもしれません」

「コロンボのV12ユニット、S10エンジンは3基が保管されており、バレーナにも理想的な仕様といえました。しかし、多額の予算を正当化するのには至らなかったのでしょう」。パウロが推測する。

この続きは、アルファ・ロメオ 8C 2900B「バレーナ」(3)にて。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

スクラップとして消えていく希少・奇妙なクラシックカー 40選(前編) ジャンクヤード探訪
スクラップとして消えていく希少・奇妙なクラシックカー 40選(前編) ジャンクヤード探訪
AUTOCAR JAPAN
スクラップとして消えていく希少・奇妙なクラシックカー 40選(後編) ジャンクヤード探訪記
スクラップとして消えていく希少・奇妙なクラシックカー 40選(後編) ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
1968年の名車を発売 ボアハム・フォード・エスコート Mk1(1) 限定24台の68エディション
1968年の名車を発売 ボアハム・フォード・エスコート Mk1(1) 限定24台の68エディション
AUTOCAR JAPAN
【1960年代に捧げるオマージュ】イタリアAM社『リナ』公開 5.0L V8をマニュアルで操る
【1960年代に捧げるオマージュ】イタリアAM社『リナ』公開 5.0L V8をマニュアルで操る
AUTOCAR JAPAN
BMW初のミッドシップ・スーパーカーをオークションで発見 45年前のモデルなのに走行距離2万キロ台 極上の「M1」とは
BMW初のミッドシップ・スーパーカーをオークションで発見 45年前のモデルなのに走行距離2万キロ台 極上の「M1」とは
VAGUE
テストコースで夢見心地 ボアハム・フォード・エスコート Mk1(2) ノスタルジックな危うさ
テストコースで夢見心地 ボアハム・フォード・エスコート Mk1(2) ノスタルジックな危うさ
AUTOCAR JAPAN
シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(1) エンジン&シャシー共有の小さなお宝
シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(1) エンジン&シャシー共有の小さなお宝
AUTOCAR JAPAN
生産台数は29台の希少なポルシェ「959シュポルト」の相場は約7億8300万円から!
生産台数は29台の希少なポルシェ「959シュポルト」の相場は約7億8300万円から!
Auto Messe Web
【スーパーカー超王が斬る】価格は1億2890万円!アストン マーティン・ヴァルハラはデザインもエンジニアリングも世界最高峰
【スーパーカー超王が斬る】価格は1億2890万円!アストン マーティン・ヴァルハラはデザインもエンジニアリングも世界最高峰
AUTOCAR JAPAN
ロールス・ロイス・ファントムの100年を振り返るアートワークとエピソード
ロールス・ロイス・ファントムの100年を振り返るアートワークとエピソード
AUTOCAR JAPAN
【団長安田も大興奮】ポップカラー+ディーゼル+MT!限定車『ルノー・カングー・クルール・ディーゼル』発表
【団長安田も大興奮】ポップカラー+ディーゼル+MT!限定車『ルノー・カングー・クルール・ディーゼル』発表
AUTOCAR JAPAN
メルセデス・ベンツ 次期型『GLB』は2026年発売へ 7人乗りSUV、オフロード志向のデザインも
メルセデス・ベンツ 次期型『GLB』は2026年発売へ 7人乗りSUV、オフロード志向のデザインも
AUTOCAR JAPAN
【フィアット、ジープ、アルファ・ロメオなど】ステランティス6ブランド価格改定 10~30万円前後の値下げ
【フィアット、ジープ、アルファ・ロメオなど】ステランティス6ブランド価格改定 10~30万円前後の値下げ
AUTOCAR JAPAN
「人が買える値段のクルマを出す」 革新的な格安EV、米スレート・オートの野心
「人が買える値段のクルマを出す」 革新的な格安EV、米スレート・オートの野心
AUTOCAR JAPAN
VW新型『Tロック』8月発表へ プリウスに似た「フルハイブリッド」システム初採用
VW新型『Tロック』8月発表へ プリウスに似た「フルハイブリッド」システム初採用
AUTOCAR JAPAN
MotoGPフランスGPの開催サーキットはル・マン24時間でお馴染み……でもフルコースじゃないのはなぜ?
MotoGPフランスGPの開催サーキットはル・マン24時間でお馴染み……でもフルコースじゃないのはなぜ?
motorsport.com 日本版
【根強いSUV人気】BMW X7、2代目も絶賛開発中⁉︎ 2027年発売か EVモデルも導入
【根強いSUV人気】BMW X7、2代目も絶賛開発中⁉︎ 2027年発売か EVモデルも導入
AUTOCAR JAPAN
【マニュアル・トランスミッション搭載⁉︎】新型フィアット500ハイブリッド、初公開
【マニュアル・トランスミッション搭載⁉︎】新型フィアット500ハイブリッド、初公開
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

81 . 8万円 170 . 3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

38 . 8万円 138 . 0万円

中古車を検索
トヨタ コルサの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

81 . 8万円 170 . 3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

38 . 8万円 138 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村