■2024年新体制を発表した自工会、それぞれの想いは?
2023年11月22日に日本自動車工業会(以下自工会)は都内で4年ぶりとなるリアル記者会見を開催し、会長交代の人事を発表しました。
そこでは、現会長、新会長そして副会長達からどのような想いが語られたのでしょうか。
自工会は定例会見を開催。この会見で豊田章男会長は退任を発表。新会長にはいすゞ自動車会長兼CEOの片山正則氏が就任しました。
これまで自工会の歴代会長はトヨタ/日産/ホンダが輪番制で就任するのが慣例でしたが、3社以外のメーカーが担うのは、1967年の発足以来初のケースとなります。
豊田氏は「自動車産業が直近で解決していかなければいけない課題と向き合うには、『商用領域がペースメーカーとなるべき』と言う結論から、大型車の世界で豊富な経験を持ついすゞの片山氏にお願いした」と語りました。
新聞・経済誌はこの決定にどこか不満があるような報道をしているようですが、筆者(山本シンヤ)は、「なるべき人が就任した」と言うのが素直な感想になります。
実はその布石は今年の1月にありました。1月30日、豊田氏はトヨタの社長から会長に就任するに伴い、自工会会長の辞意を表明しました。
これは自工会の正・副会長は「各社の執行をつかさどるCEO」と言う紳士協定に則るモノです。ちなみにこのルールを提案したのは豊田氏でした
この発表から数日後、自工会は緊急理事ミーティングが開催されました。「驚く事に、全ての理事が面着で参加、ここで全理事一致して慰留をお願いした(片山氏)」。
ただ、残念ながらこの席で「私が会長を引き継ぎます」と言う手は1人も上がらなかったそうです。
振り返ると、豊田氏は2018年から保守的で硬直して何も動けない組織になっていた自工会に大きくメスを入れ、自らリーダーシップを取って改革をしてきました。
あの発信力、影響力、行動力は誰でもできる事ではないため、「その後釜を担うのは荷が重い」と感じてしまうのは当然の事です。
更に言ってしまうと、自動車業界は100年に1度の変革期、生き残りのためには「自社の事で精一杯」と言うのも理解できます。
ただ、「それでは元の自工会に戻ってしまう」、そんな危機感を一番持っていたのが片山氏だったと言います。
ある自工会関係者に聞くと、「これまで“みんな”で進めてきたつもりだったが、豊田氏を頼りすぎ、任せてしてしまった事を、今回の辞意表明で気づかされた」と教えてくれました。
豊田氏はそんな片山氏からの「今後は正副会長が一丸となり、“チーム”で課題に取り組んでいきます」と言う強い決意を聞き、1年間限定の会長続投を決めたそうです。
実は片山氏の決意はこれだけではありませんでした。3月10日にいすゞの社長から会長兼CEOに就任しましたが、CEO兼務は自工会に残るためと考えていいでしょう。つまり、言い出しっぺとしての“仁義”を貫いたわけです。
そんな片山新会長率いる自工会の新体制は、2024年1月からスタートします。
実は旧体制は5月まで任期はありますが「2024年問題を含め、解決すべき課題は新体制で進めたほうがいいと言う感覚から、1月からのスタートにさせていただきました(豊田氏)」。
片山新会長は「持続可能な自工会の運営をどうあるべきかを副会長を中心に話をすると、出てきた答えは『チーム運営』でした。課題は明確でやることもハッキリしています。それならば商用車メーカーでも会長職を務めることができると感じ、受けさせていただきました」と語っています。
そして、副会長は日本のフルラインナップそれぞれの代表として現副会長6名が継続します。
筆者は質疑の際に「各々決意を教えてください」とお願いすると、全員がその想いを各々の言葉で話してくれました。
日高祥博副会長(ヤマハ)
「チームで取り組んでいく体制が本当にできたと思っていますので、課題に対して実際に実行し、結果を出していきます。誰が主担当になるのかも決まっているので、情報共有をしながら全体で前に進んでいきます」
三部敏宏副会長(ホンダ)
「私自身はこの変革期を絶好のチャンスと捉えておりますので。自工会が主体となって、関連する色々な産業を含めて変革者となり、新しいモビリティ社会に向けた変革を進めていきたいと思っています」
鈴木俊宏副会長(スズキ)
「自工会が一丸となって日本の産業力、競争力を上げていけるように、そして地球環境等の課題解決に向けて取り組めるように、しっかりと片山新会長をサポートできるよう頑張っていきたいと思います」
内田誠副会長(日産)
「世界が変わり我々のビジネス環境が変わる中、業界を超えた協調領域を見ながら日本の競争力に繋げる。そのためには自工会も進化していかなきゃいけません。ここにいる全員で覚悟と勇気を持って取り組んでいきます」
佐藤恒治副会長(トヨタ)
「副会長同士の対話も非常にフランクかつ活発に行なわれており、土台ができたという状況にあると思っています。情熱をもった片山会長を支え、一丸となってこのチームでやっていきたいと思っております」
永塚誠一副会長
「自動車産業からモビリティ産業への変革に向けて他産業との連携を強化しながら、他の副会長や理事の皆さま方と共にチーム一丸となって取り組み、この難局を乗り越えていきたいと考えています」
※ ※ ※
このように、正副会長共に今まで以上にチームで取り組む決意を表明しています。
今後の自工会がどのように進んでいくのか。筆者は自動車産業に携わる550万人の1人として、時に優しく、時に厳しく見守っていきたいと思っています。
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