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パッケージングとは? これが分かれば、あなたもクルマの本質を見極めることができる!

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パッケージングとは? これが分かれば、あなたもクルマの本質を見極めることができる!

こちらの記事は2017年3月に有料配信したメールマガジンを無料公開したものです。

クルマに関する記事で「パッケージング」、「パッケージ」といった表現をよく見かけるが、その意味するところは? 意外と正確に答えられる人は少ないと思う。クルマにとってきわめて重要なポイントなのだ。

自動運転レベル4の公共移動バスは2019年に始動@ドイツ・フリードリッヒスハーヘンとアーヘン

■乗り物の要はパッケージング
もっともよく考えてみると、クルマだけではなく船でも飛行機でも、戦車でも…複雑なメカニズムを持つ乗り物にとってパッケージングは、その乗り物の資質や性能を決定づける重要な要素だ。例えば、何万トンもの巨大な船を考えると、貨物船ではどれだけ広大な貨物スペースを確保できるかが問題で、そのためには船員の居住スペースやエンジン部は制約を受ける。

軍艦の場合は高速航行できるように巨大なエンジンを搭載するため、軍艦で最大のスペースを占めるのはエンジンと排気通路が占め、その他の必要なスペースをどのようにレイアウトするかがポイントになる。

全長9.9m、全幅8m、全高2.4m、車両重量55トンという現代の巨大な戦車も、実はエンジン/トランスミッションが最大の容積を占め、さらに武器、弾薬を最大限に搭載するため、乗員のスペースはコックピットというにピッタリの、極めて狭い空間しか残されず、操縦者はフォーミュラカーのF1と同様なシートポジションになっている。こうした巨大な乗り物でもパッケージングは緻密に行なわないと、狙い通りの性能や機能を確保できないのだ。

レーシングカーを考えると、現在のF1や世界耐久選手権(WEC)のプロトタイプ・レーシングカーでは、ドライバーの乗車姿勢はペダル位置が極めて高い位置にあり、ドライバーはバスタブの底に横たわったような、寝そべった状態に近い姿勢となっている。その原因は、空力性能を追求するためハイノーズ形状になっているので、下半身が入る部分の位置が高く、左右幅も体ギリギリの幅しかない状態だ。

このように船や戦車、クルマも本来の機能を追求するために、決められたサイズの中でmm単位のスペースやエンジン配置を検討しなくてはならないのだ。言い換えれば、パッケージングとは、エンジンやトランスミッション、サスペンション、荷物スペースといったコンポーネンツ(構成要素)と、ドライバーや乗員をどのように緻密にレイアウトするかということに尽きる。

■パッケージングがクルマの形態を決める
パッケージングの基本は、乗員をどのような位置にどのようなスペースを確保して配置するかということからスタートする。しかし、その前に主要なコンポーネンツ、クルマでいえば最も重量が重く、スペースを要するエンジン/トランスミッションを配置するかということも考えなくてはならない。これが、フロント・エンジン/後輪駆動、フロント横置きエンジン&トランスミッション/前輪駆動、エンジン&トランスミッションを乗員の背後に置くミッドシップなど、クルマの基本形式を考える必要があるが、これはそのクルマの目的に合わせて決定されていることを付け加えておこう。

F1やWECのプロトタイプ・レーシングカーなどは、加速時の駆動性能、旋回性能や空力性能などを考慮した結果、ミッドシップが選ばれているが、市販車の場合は、できるだけ乗員の居住スペースを確保するために、フロント横置きエンジン&トランスミッション/前輪駆動が選ばれるわけだ。

またプレミアムクラスのセダンやクーペは、ステアリング・フィーリングの上質感や運動性能を考慮して、現在でもフロント・縦置きエンジン/トランスミッションのFR形式を採用している例もある。この場合、エンジンをフロント・アクスルより前方に置くと居住スペースはより拡大できるが、その一方で前後の荷重配分が増大するため、運動性能を重視すると必ずしもベストとはいえない。

そのため、エンジンをフロント・アクスルより後方に配置し、トランスミッションは室内側のセンタートンネル内に配置する、いわゆるフロントミッドのパッケージングが採用されることが多い。もちろん、このフロントミッドシップ配置ではキャビン内の容積は減少するが、プレミアムカー・クラスはもともとボディサイズが大きいため、キャビン容積の減少をそれほど気にしなくても良いという事情もある。

■着座位置とパッケージング
典型的なファミリーカーであれば、エンジンやトランスミッションのスペースを最小限に抑え、フロントシート、リヤシートに十分な居住スペースを設け、さらにラゲッジスペースもより広く取りたいという狙いのため、現在ではフロントに横置きエンジン/トランスミッションをコンパクトにまとめて配置し、それより後方のスペースは、前後シート、ラゲッジスペースとして使用するFF方式が主流になっている。がしかし、この場合でも燃料タンク、スペアタイヤをどのようにレイアウトするかは課題になる。

もちろん、現在では燃料タンクはリヤシートの下側に置き、スペアタイヤはリヤのラゲッジスペースの床下に置いている。さらに軽量化とスペースを活かすために、スペアタイヤにテンパータイヤを、あるいはスペアタイヤなしでパンク修理剤キットだけにするのも常識化している。

ホンダのコンパクトカーは、パッケージングのブレークスルーとして超扁平形状の燃料タンクをフロントシートの床下に配置したセンタータンク・レイアウトにしている。この結果、リヤシートをより低い位置で折りたたむことができ、リヤのラゲッジスペースの拡大に役立っている。これはパッケージングを重視した上での裏技ともいえるテクニックといえる。

一方で、海外に輸出するグローバル・モデルの場合は、乗員も日本人より大柄で、シートサイズやシートの位置もそれを前提としなくてはならない。一般的にはアメリカ人の男性の体型の平均サイズの80~90%をカバーできるような乗員の体格を考慮してシートサイズやシート位置が決められている。

■小型車とスポーツカーのパッケージング
典型的なファミリーカー、B、Cセグメントのクルマは全長や全幅には制約があり、ボディサイズは小さく、キャビンのパッケージングはできるだけ広くするという背反要求を成立させる必要がある。

限られた全長で、前後シートのスペースとラゲッジスペースをより拡大するためには、どうするか。そのために重要になるのが着座ポジションだ。レーシングカーはもちろん、スポーツカーの乗員はできるだけ低い位置に着座し、下半身は前方に伸ばすドライビングポジションとなる。こうすることで、ボディのルーフ位置、つまり全高を低くすることができる。しかしこのドライバーの着座ポジションで、リヤシートを配置しようと考えると、リヤシートのスペースは極めて狭くなる。

ポルシェ911を例に見ると、リヤシートは小さな子供しか使用できない狭いスペースしか確保されていないが、これはクーペスタイルのスポーツカーとしては当然なのだ。

逆に小型のファミリーカーで、前後シートのスペースやラゲッジスペースを拡大するためには、着座姿勢を学校の椅子に座ったような姿勢、いわゆる「アップライト(直立)」な姿勢にすることが一般的だ。つまりシートの座面をスポーツカーより高い位置にレイアウトすると、乗員の足の膝は直角に近くなり、足とヒップポイントの距離が短縮され、それだけ膝まわりにスペースが生まれる。

ただし、着座姿勢をアップライトにすると上半身も直立に近くなるので、頭上のスペースをある程度確保するためにクルマの全高は高くならざるをえない。

この発想をさらに発展させると、3列シートのミニバンのように超アップライトで、まさに学校の椅子のような姿勢で座ることで3列目のシートを置くスペースを確保しているわけだ。

また着座姿勢に合わせて、ステアリングホイールの位置も変わってくる。スポーツカー的な着座姿勢の場合はステアリング・コラムの角度は小さくなり、着座姿勢がアップライトになるほどステアリング・コラムの角度は大きくなる。そして、ミニバンのようなクルマではさらにステアリング・コラムの角度が大きく、バスのようなステアリングホイール位置になっていく。

■キャビン・フォワード
1980年代後半からは、小型車やミニバンに採用され始めたのが、「キャビン・フォワード(キャブ・フォワードとも呼ぶ)」というパッケージング/デザイン手法だ。直訳すると「前進キャビン」で、これはAピラーの位置を従来の常識より前方に移動させることを意味している。

このキャビン・フォワードを採用すると、デザイン的にボンネットの長さが短くなり、キャビンの容積が拡大し、側面から見てより大きなキャビンに見える。そのためビッグ・キャビンとも呼ばれる。反対に、スポーツカーやプレミアムセダン、クーペへのパッケージングに求められる要件は、ロングノーズで、ルーフも低く、見た目はキャビン容積が小さいスモール・キャビンのパッケージング&デザインだが、スペース重視の小さなクルマはキャビン・フォワードにより、大きなキャビンとなるのだ。

ただし、キャビン・フォワードを採用してもエンジンの位置を今までよりさらに前方に移動させることは難しいので、エンジンルームとキャビンとの隔壁の位置は大きく前進させることはできず、その結果としてインスツルメントパネルが大型化する。キャビン・フォワードのメリットは、Aピラー位置がより前方に移動し、フロントシートの乗員とフロントガラスの距離が開くので、より前方の、視覚的なスペースが拡大されることだ。

欠点としては、Aピラー位置が前方に移動することでドライバーの視野の前方に位置し、斜め前方の視界がそれまでより悪化することだ。そのため、キャビン・フォワードを採用する場合はAピラーを細くするなどの配慮も必要になる。

このキャビン・フォワードは、軽自動車、コンパクトカー、ミニバンに多用される手法になっている。デザイン的にはキャビン・フォワードをさらに追求すると、ワンモーション・フォルムとなる。つまり視覚的にはボンネット、フロントガラス、ルーフ、リヤエンドが一体化し、エンジンルームがほとんどなく、側面から見たクルマは卵型に見える。

こうしたキャビン・スペース重視のパッケージングとデザインを両立させる手法のワンモーション・フォルムで記憶に残るのは、初代ホンダ・トゥデイ、ホンダ・フィット、初代ルノー・トゥインゴ、トヨタ・エスティマ、2代目以降のプリウスなどが挙げられる。

ワンモーション・フォルムはパッケージングの合理的、機能性を象徴するデザインともいえるが、その一方で従来からの伝統的なエンジンルームの存在感がある乗用車という価値観とは相反する側面もある。

エンジンやトランスミッションのレイアウトから、着座位置の決め方、キャビンの容積の大小などパッケージングは、クルマのコンセプトをダイレクトに反映しており、パッケージングを工夫することでさらにそのクルマの付加価値を高めることができるなど、パッケージングはクルマの設計、デザインでもっとも重要な視点であることは認識しておきたいものである。

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