フランス・ポールリカールからバック・トゥ・バックの連戦にて、7月10~12日にポルトガルのヴィラレアル市街地で争われたFIA TCRワールドツアー第4戦は、クラッシュによるセーフティカー(SC)導入など波乱続発のなか、チャンピオン経験者が躍動。現役王者ヤン・エルラシェール(ジーリー・シアン・レーシング/ジーリー・プリフェイスTCR)と、元世界王者ノルベルト・ミケリス(BRCレーシング/ヒョンデ・エラントラN EV TCR)が勝利を攫っている。
この2026年もシーズン折り返しとなるストリート戦を迎え、前戦ポールリカールではタイトル争いも激化。選手権首位サンティゴ・ウルティア(ジーリー・シアン・レーシング/ジーリー・プリフェイスTCR)と、同2位ミケル・アズコナ(BRCレーシング/ヒョンデ・エラントラN EV TCR)のポイント差は20から6ポイントにまで縮まり、総勢16台のエントリーとなったヴィラレアル市街地では2022年以来となる“ジョーカーラップ”も復活した。
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今回もターン22に設置されたエクストラルートを通過すると、全長4.6kmのレイアウトにて1周あたり約2秒のタイムロスが生じ、全ドライバーは1レースにつき2回ジョーカーラップを走行しなければならない(最初の2周は消化不可)。そのうえで戦績に応じて搭載されるコンペンセーション・ウエイト(補償重量)は、アズコナが最大となる40kgを積み、以下エルラシェールが30kg、ミケリス20kg、そしてウルティアのウエイトは10kgに軽減された。
また前戦のクラッシュで負傷したラファエル・フルニエの欠場により、2024年のSTCCスカンジナビア・ツーリングカー選手権でタイトルを獲得したミカエル・カールソン(ALMモータースポーツ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がシリーズに復帰。さらにTCRヨーロッパやTCRスペインに参戦するヴィクトル・アンダーソン(SPコンペティション/クプラ・レオンVZ TCR)など、グリッドには北欧からの刺客が並んだ。
そんななか迎えた週末の走り出しは、ともに最新の独自BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)により戦力を削がれているはずの、ジーリー・プリフェイスTCRとヒョンデ・エラントラN EV TCRの2台のセダンモデルが先行し、ミケリスがFP1、エルラシェールがFP2で最速をマーク。続く予選では、戦略的な判断を見せたアズコナがライバルを出し抜き、高難易度のストリートでポールポジションを獲得してみせた。
「完璧なラップだった。トウ(スリップストリーム)のおかげでコンマ4秒近くタイムを縮めることができたし、それがなければポールポジションを争える位置にはいなかっただろう」と、チームの判断により宿敵エルラシェールの背後でトラックインしたアズコナ。
「Q1でノルビ(ミケリス)にトラブルが起き、ドライブシャフトが折れ、さらにサスペンションも破損してしまい、彼の後ろを走ることはできなかった。だからQ2に向けて別の戦略を考える必要があったんだ。そこで選んだのが、最大のライバルである彼(エルラシェール)を利用するという戦略で、それが我々にとって最善の選択肢だった」
「ピットで彼を待っていて、彼がコースに出てきたときに僕たちはその後ろにつくことにした。倒すべき相手(ライバル)の走りは、良いベンチマークになると分かっていたからね」
ただしアズコナにとってもQ1は難しいセッションとなり、チームがセッションの途中でセットアップの変更を行う賭けに出ていた。
「Q1ではポールを争えるだけのペースがなかったから、フロントエンドの性能をもう少し引き出そうとデフ(ディファレンシャル)のセットアップを調整した。デフとリヤサスペンションを微調整してパフォーマンス向上を図ったところ、改善が見られて良かったよ」と続けたアズコナ。
「追い越しが非常に難しいヴィラレアルでは、ポールポジションからのスタートが有利なのは確かだ。でも40kg(のウエイト)を搭載して3台のジーリーを背後に抑え続けるのは難しいだろう。彼らの方がレースペースが良く、タイヤの劣化も抑えられているからね。だから今は戦略を慎重に検討し、今夜はジョーカーラップの夢を見ることになりそうだ」
そんなポールシッターの予想は的中し、曇り空と比較的低い気温で迎えた日曜レース1はスタートでアズコナの出足が鈍ると、すぐさまエルラシェールが並び掛け、背後にマ・キンファ、ウルティアと早くも3台のトレインが完成してしまう。
続く4周目にはアウディがバリアに激突して最初のSCが介入し、6周目にレースが再開。周回数が2周追加されて計16周となり、ジョーカーラップの消化可能期間も10周目まで延長されたが、さらに11周目にはジミー・クレーレ(チーム・クレーレ・スポーツ/アウディRS3 LMS 2)とテッド・ビョーク(ジーリー・シアン・レーシング/ジーリー・プリフェイスTCR)が接触し、ジーリーがセーフティバリアにヒットして2度目のSCが導入される。
それぞれが2度目のジョーカーを消化するべく13周目にリスタートが切られるも、首位の座は揺るがず。そのままエルラシェールがアズコナとウルティアを従えてのトップチェッカーを受けた。
「アズコナがアクセルを少し強めに踏み込んでホイールスピンを起こしているのが見えた。これは仕掛けられるチャンスだと思い、焦らずに対応できたよ」とスタートを振り返った王者エルラシェール。「グリッドからの加速は少し挙動が乱れるような感じだったが、ダッシュは非常に上手くいった。急ぎ過ぎないよう慎重にコントロールし、実際、完璧に決めることができたね。レースの鍵はスタートとジョーカーラップだと分かっていたし、とくにジョーカーは厄介で、誰かの後ろを走って“ダーティエア”の影響を受けると、ペースを維持するのが非常に難しい。普段ならタイヤをいたわり、パンクを避け、縁石の乗り方に気を配るなどあらゆる点に注意を払うが、ここでは全開を強いられ、そうした配慮が通用しなかったよ」
続いてリバースグリッドのポールポジションからスタートしたミケリスは、ジェンソン・ブリックリー(ALMモータースポーツ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)とアウディのクレーレが2番手争いを繰り広げるなか逃げを打つ。
各車が最初のジョーカーラップを消化するなか、アズコナは5周終了時にマシントラブルのためピットイン。6周目にはバリア激突車両の回収でふたたびのSC発動となり、クレーレはギアボックストラブルにより同周回終了時にピットへ戻りリタイアとなってしまう。
リスタート後は延長された16周目のフィニッシュまでミケリスvsビョークの構図となり、15周目にはヒョンデとジーリーが軽く接触し、ファイナルラップ直前の周回では、3番手のオーレリアン・コンテ(SPコンペティション/クプラ・レオンVZ TCR)がビョークのリヤバンパーに迫ってくる。
ここで最後のジョーカーが残っていたビョークは表彰台争いから脱落し、首位を守り抜いたミケリスに続きコンテと復帰組ヴィクトル・アンダーソンの続くポディウムとなった。
「フリー走行の最初からマシンの感触は良かったが、技術的なトラブルに見舞われ予選は非常に難しい状況になった。週末のレースは決して楽なものではなかったね」と振り返ったハンガリー出身のミケリス。「Q1でドライブシャフトを交換する必要があっが、チームがわずか4分で作業を完了させてくれた。Q2では(タイヤを温存するために)非常にゆっくりとしたラップを走り、それがこの(レース2での)結果に繋がった」
「ジョーカーラップを消化できるようマージンを築こうと、フロントタイヤを酷使して懸命にプッシュしたが、ジョーカーを消化した直後にセーフティカーが入る最悪のタイミング。そのせいで後続との差が詰まってしまい、あの時点では彼らの方が僕よりもタイヤの状態が良かった。でも昨年と比べて調子が上がったことをうれしく思うし、この勢いを維持したい。中国で3回、韓国で1回と、それぞれ3レースずつの開催が控えており、シーズン折り返しとはいえまだ14レースも残っているからね!」
その言葉どおり、ここから海運も含めた長い長いサマーブレイクに突入するシリーズは、韓国のインジェ・スピーディウムにて10月2~4日に第5戦が再開される。
[オートスポーツweb 2026年07月13日]
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