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ヘッドレストモニターはなぜ「賛否両論」が絶えないのか? 「タブレットで十分」は本当? 4800億円市場予測を考える

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ヘッドレストモニターはなぜ「賛否両論」が絶えないのか? 「タブレットで十分」は本当? 4800億円市場予測を考える

役割と普及の現状

 ヘッドレストモニターとは、運転席や助手席のヘッドレスト部分に設置するディスプレイのことだ。主に後部座席の乗員が、長時間のドライブや渋滞中に映像やゲームを楽しむために使われる。特にファミリー層を中心に一定の人気があり、最近ではDVDプレーヤー内蔵型やHDMI端子搭載型など、機能も多様化している。

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 ヘッドレストモニターは車内の快適性や娯楽性を高める装備として注目されているが、その必要性については利用者の間で意見が大きく分かれる。ファミリー層からは導入に賛成する声が多い一方、コスト、安全性、設置の手間などを理由に導入をためらう層も少なくない。

 では、なぜヘッドレストモニターの導入をめぐって賛否が分かれるのか。その理由を、メリットとデメリットの両面から掘り下げていく。


工賃1万円で叶う後席快適空間

 ヘッドレストモニターを支持する層の多くは、車内での快適性や娯楽性の向上を重視している。特に小さな子どもがいる家庭では、長時間のドライブ中に子どもが退屈せずに過ごせる点が大きなメリットとされている。DVDやYouTubeなどの動画を視聴できるため、子どものぐずりを防ぎ、運転手や同乗者のストレスも軽減できる。

 HDMI端子やUSBスロットを使えば、スマートフォンやタブレット、ゲーム機と接続し、多様なコンテンツを楽しむことも可能だ。10インチ以上の大画面で高画質なモデルも増えており、後部座席で複数人が同時に映像を楽しめるようになってきた。実際、

「家族での長距離ドライブが快適になった」
「渋滞中も子どもが静かに過ごせるようになった」

といった利用者の声も多い。こうした利便性の高さが、今後の市場拡大を後押しすると見られている。

 さらに、ヘッドレストモニターは後付けが比較的簡単で、車種を問わず導入できる点も支持される理由のひとつだ。自分で取り付けることもできるが、カー用品店などに依頼すれば、工賃1万円程度で設置が可能だ。この手軽さも、ファミリー層やレジャー利用者のニーズに合っている。

配線と価格が生む導入障壁

 一方で、ヘッドレストモニターの必要性に疑問を持つ声も多い。なかでも最も多いのが、

「タブレット端末で十分代用できる」

という意見だ。家庭でのタブレット普及率は年々上昇しており、2024年時点で日本の世帯普及率は約36%に達している。世帯主の年齢や家族構成によって差はあるが、40代世帯主では51.6%、子どもがいる世帯では5割を超える傾向がある。

 タブレット用のヘッドレストホルダーを使えば、安価かつ簡単に同様の映像視聴環境が整う。そのため、車内専用のモニターをわざわざ購入する必要はないと考える人もいる。

 ヘッドレストモニターの設置には配線の手間もかかる。給電や映像入力のためにシート裏へケーブルを通す必要があり、見た目を気にする利用者からは敬遠されやすい。価格も1台あたり2万~5万円と安くはないため、コストパフォーマンスを重視する層からは導入をためらわれがちだ。

 安全面への懸念もある。本来、ヘッドレストは追突時に頭部を守り、むち打ちを防ぐための装備である。しかし、モニター埋め込み型を選ぶと、その保護機能が損なわれる恐れがある。さらに、保安基準上、ヘッドレストに鋭利な突起物があると車検に通らないケースもある。取り付けには注意が必要だ。

 このように、コスト、安全性、設置の手間に加え、タブレットなど代替手段の存在が、ヘッドレストモニターの普及を妨げる要因となっている。デジタル機器の普及が進むなか、専用モニターの必要性を再考する動きは今後さらに強まりそうだ。

アフター需要の急拡大

 Verified Market Reports社のレポートによれば、世界のヘッドレストモニター市場は2024年に15億ドル規模に達し、2033年には32億ドル(約4800億円)まで拡大する見通しだ。2026年から2033年にかけての年平均成長率は

「9.2%」

と予測されている。なかでもアジア太平洋地域が成長をけん引している。

 需要はOEM(純正)とアフターマーケットの双方にあり、とくにアフターマーケットでは既存車両への後付けニーズが増加傾向にある。主要メーカーは、ディスプレイの画質向上や消費電力の削減、個別ニーズに応じたコンテンツ提供など、技術革新を進めている。

 ヘッドレストモニターに代表されるリアシートエンターテインメントの必要性や選択肢は、家族構成やライフスタイル、デジタル機器への習熟度によって分かれる。長距離移動の多いファミリー層にとっては、純正品や専用品の安定した装着性や、配線のない車内のすっきりとした印象、安全性の高さなどが評価されている。

 一方で、スマートフォンやタブレットの個人保有が一般化するなか、初期費用を抑え、車内に用途を限定しない柔軟な使い方を求める層も増えている。このようなユーザーにとっては、安価なタブレットホルダーと手持ちデバイスの活用が合理的な選択肢となる。

 そのため、何を車内エンターテインメントに求めるかによって最適な形は異なる。子どもの操作性や視聴環境、インテリアとの一体感を重視するなら、高機能なヘッドレストモニターが有力となる。対して、コストパフォーマンスや設置の手軽さ、多用途性を重視する場合には、タブレットホルダーなどの代替策が現実的である。

 今後も車内の過ごし方は多様化し、それぞれのライフスタイルに合わせた選択が一層求められていく。(木村義孝(フリーライター))

文:Merkmal 木村義孝(フリーライター)
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