静かで強力で滑らかなパワートレイン
今回試乗した新型メルセデス・ベンツCクラスは、C 200dのステーションワゴン。フロントに搭載される200psの4気筒ディーゼル・ターボエンジンは、とても静かだ。
【画像】モデルチェンジ メルセデス・ベンツCクラス 欧州の競合ステーションワゴンと比較 全134枚
寒い日の始動直後には、カラカラといかにもなノイズが響いてくるが、一度温まってしまえばボリュームは小さくなる。滑らかに回転し、車内へは殆どノイズが響いてこない。
低回転域からパワフルで、中回転域のトルクは印象的。最大トルクは、1800rpmで44.8kg-mを発揮する。胸のすくような加速も楽しめる。
トルクコンバーター式の9速ATは、とても自然に変速を繰り返し、スムーズなエンジンの印象を高めてくれる。小気味良く、タイミング良くギアを選び、気を揉むようなこともない。
Cクラスは、3代目から4代目への進化が目覚ましかった。一方でこの5代目は、4代目の大改良版といえるもの。大幅な手直しが施されているものの、先代と同じMLAプラットフォームを基礎としている。
サスペンションの構成も、4代目と大きな違いはない。フロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式を採用している。
乗り心地は悪くない。4代目は、もう少し改善の余地があると思わせるものだった。スポーティなドライブモードへ切り替えると、荒れた路面で明確に振動が伝わってくるが、不快に感じるほどの硬さはない。
驚くほど機敏なシャシーに不足な実用性
路面のいなし方は洗練されたものといえ、英国郊外の流れの速い幹線道を快適に移動できる。カーブが気持ちよく続くような区間では、ダイレクトで正確なステアリングを活かし、驚くほど機敏なシャシーを味わうことも許してくれる。
BMW 3シリーズ・ツーリングのような、肉厚な手応えのような感覚は薄い。しかし、メルセデスAMGが手掛ける高性能なCクラスにも通じる、積極性を感じることができる。
今回のCクラスの試乗では、同僚の大人3名も同乗することになった。その彼らも、静かで快適な走行フィーリングと、ゆとりのある車内空間には感心していた。
リアシート側の広さは、膝周りで21mm、肩周りで13mm、先代から拡大している。身長が180cmを超えるような体格の大人でも、長距離移動を不満なく過ごせると思う。
荷室容量は490Lあり、こちらも不足ない大きさ。リアシートを折りたためば、1510Lまで拡張することもできる。Dセグメントのステーションワゴンとして、実用性に抜かりはないといえる。
ドイツの競合モデルと比較すると、BMW 3シリーズ・ツーリングの荷室はリアシートを起こした状態で500L、折りたたんで1510Lある。アウディA4 アバントは495Lと1495Lだから、かなり拮抗している。
ディーゼルのワゴンは諦めがたい選択肢
最近はクロスオーバーやSUVへの試乗が多いこともあって、Cクラスのドア開口部の低さに、ハッとしてしまった。ドライビングポジションは、足を前方に投げ出し、シートへ深く身を委ねるスタイル。荷室への荷物の積み下ろしも、驚くほど容易に感じた。
シート自体の座り心地も良好で、調整域が広く、サポート性に優れる。車内で唯一感じた不満といえば、やや幅の広いセンターコンソールが、太ももに触れることくらいだった。
メルセデス・ベンツは純EV化などの技術分野へ、2026年までに600億ユーロ(約8兆1000億円)という巨額の投資を行うと発表した。恐らく新しいCクラスは、そんな投資目標の優先順位では、かなり下の方に位置しているはず。
それでも5代目は、4代目からの明らかな進化を実感することができる。これが、ディーゼルエンジンを選べる最後のCクラスになるかもしれない。だとしても、C 200dの訴求力が低下しているとはいえないと思う。
ディーゼルでステーションワゴンのCクラスは、完成度や能力が非常に高い。長距離を頻繁に走るようなユーザーにとっては、諦めがたい選択肢といえるだろう。
メルセデス・ベンツCクラス C 200d スポーツ・エステート(ステーションワゴン/英国仕様)のスペック
英国価格:4万2150ポンド(約674万円/試乗車)
全長:4751mm
全幅:1820mm
全高:1457mm
最高速度:241km/h
0-100km/h加速:7.4秒
燃費:21.3km/L
CO2排出量:124g/km
車両重量:1815kg
パワートレイン:直列4気筒1993ccターボチャージャー+ISG
使用燃料:軽油
最高出力:200ps/4200rpm
最大トルク:44.8kg-m/1800rpm
ギアボックス:9速オートマティック
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